VTuber事業(hololive)を手掛けるカバー株式会社から想像する事業・特許戦略
最近は、Vtuberの配信や音楽に触れることも多くなったと思います。
例えば、星街すいせいさんの「ビビデバ」や宝鐘マリンさんの「III」とか聴いたことありませんか?
※私はよく聴きます!
※Vtuberというものが分からない人は、以下のリンクで、確認して頂けたらと思います。
リンクを飛んで頂ければ分かるように、Vtuberと呼ばれるアニメ絵のキャラ(アバター)を芸能事務所のようなタレントとして扱い、管理する事業をカバー社は行っています。
gBizINFOで知的財産権(特許、意匠、商標)の出願件数を簡易に調べると、以下の通りになります。
意外に特許出願件数(48件)が多いことに気付きます。
これは、同じくVtuber事業(にじさんじ)を手掛けるANYCOLOR株式会社は、以下に示すように特許の出願件数が0件になります。
商標の件数が多いのは共通していますが、特許の件数で大きく違いが出ています。
一般の芸能事務所と同じビジネスモデルであれば、ロゴ(キャラクタ画像)やネーミングの知的財産権の保護ということで商標が増えるのは理解できます。
しかし、ここで、カバー株式会社は特許出願件数も増やす戦略に出ています。
それは何故か?
気になりませんか。
そこでカバー社の情報を集めると、ホロアースと呼ばれるメタバースサービスの開発を行っています。
社長の谷郷さんもこの開発には力を入れる発言をしています。
更にゲーム事業にも力を入れるということを考えています。
今までカバー社はhololiveメンバーの強力なインフルエンサー力で、企業とのコラボタイアップ(ゲームとかでコラボするとガチャキャラとかになる)で稼いだりしましたが、自社でサービスを生むことで、コラボで稼がず自前のサービスで稼ぐことまで手掛けようとしています。
垂直統合型の大企業ビジネスモデルへとステップアップしようとしているのです。
自前のサービスの売り上げに寄与できれば、利益率は格段に上がることでしょう。
私は、この利益率改善も重要だと思いますが、もう1つ重要な狙いがあると思っています。
それは、、、
「所属Vtuberの離脱防止・有力なVtuberの囲い込み」だと思います。
それは、Yutuber事務所(UUUM等)も通った道で、タレントマネジメント会社の深刻な課題です。
各クリエイター(vtuberの中の人)のフォロワーが少ない初期は、マネジメント料を支払ってでも事務所に所属するメリットが大きいでしょうが、フォロワーが増えて個人で力(ファンを引き付ける力)を身に着けた後は、マネジメント料を支払うことによる利益率低下、やりたくない仕事を事務所の指示でやらなければならない等のデメリットが目立つようになります。
そこで、自前のメタバースプラットフォーム・ゲームサービスを題材にした配信をありきで人気のインフルエンサーにさせ、契約解除に伴いそのサービスを利用した配信を不可能にすれば、事務所の離脱を防ぐ効果がある程度望めると思います。
同じように、他の事務所で契約しているVtuberも、カバー社と契約しないとその人気サービスが使えないなると事務所移動や新人が最初の選ぶ契約先としてカバー社を選ぶ率が上がります。
そこを見据えての自前のサービス開発に踏み出したのだと思います。
自前のサービスを開発し、特許で保護することで、真似したサービスを他社で作れないようになるので、カバー社は特許出願件数が増えているということになります。
もちろん、この囲い戦略が良い結果をもたらすかは未知数です。
ただし、これが当たったときに、Vtuber会社は、同じようなビジネスモデルをしたいが、特許があるせいで出来なくなります。
そのために、競合の誰かがこういうビジネスモデルを想像し、行動に移し始めた場合、自社でも他社牽制のために特許出願をすることが将来の道を閉ざさないためにも重要な思考だと思います。
※ANYCOLORさん等、Vtuber事務所で特許出願活動に出遅れた方、何か悩みがあればご相談の連絡ください!
事業に役立つ良い特許を生むには、事業課題(収益性、タレント離脱)を特定し、その解決手段(自前のプラットフォームサービス)を想像することが大事になります。
執筆/得地