コナミ(パワプロ) VS サイゲームス(ウマ娘) 特許裁判はどうなった? ~コナミの百戦錬磨の戦い方~
去年、ゲーム業界の特許に激震がおきました。
コナミ(パワプロ) VS サイゲームス(ウマ娘)の裁判です。
その後は、あんまり音沙汰がないのですが、、、
今は、静かに戦争が続いています、、、
こういう特許裁判が起きると、特許って、やっぱ重要だなと思うところです。
コナミは、過去にも特許裁判を行っているので、戦い方が上手いなと思いますね。
どこが上手いかって?
→特許の権利化プロセスですね!
特許は、出願すると特許庁に係属することになりますが、ここに係属している限り、その出願明細書を元に色んな権利を何個も生む出すことが出来ます!
大型空母からミサイルをどんどん発射する感じですかね。
これを分割出願戦略というのですが、この分割出願戦略は業界人であれば、当然、ある程度スキルを持っていれば知っている手法です。
しかし、これを本気でこのレベルの根性とテクニックで行っているのが凄いんです。
元は、1つの出願から、このような樹形図になっています!
最初の1発目の出願日は、2013/5/31です!約10年漬け込んだ、特許戦争ということになりすね!
特許は、出願日から20年間武器になるというのを、完璧に使いこなしていますね。
18回分割出願するのは凄いですね!
しかも、まだ、最後の分割の特許出願は、係属中で更に増える可能性すらあります。
最初の出願はフルにお金が掛かるとして約100万、分割は約50万くらいですかね。100万+50万×18=1000万円掛けているというこですね。
40億円という裁判に対して、1000万円掛けても上手く行けばお釣りはたくさん来ますね。
本気の戦いというのは、お金は掛かりますが、その分、リターンも大きくなるということですね。
大きな観点は分割の件数が凄いという点なのですが、また、細部の審査の進め方が良く読むと凄く面白いんですよ!
分割の第7世代(樹形図の下から2番目)の案件ですが、これ、一番最初の特許出願の請求項と同じ請求項にして、拒絶理由通知が来ても何も反論せずに拒絶査定を得ています!
これ、何でこんなことをしたと思います?
もちろん、私も当事者ではないので想像の範囲になります。
これは、審査官から妙な先行技術(引例文献)を出されて、現在、裁判で使っている特許の無効理由になるような証拠を出されたくないから、こういうことをしたんだと思います。
特許は、特許査定を得たものでも改めて無効理由となる先行技術が見つかれば、無効になってしまうルールがあります。
その対策のためにこんなことをしたのです。
これにはまだ続きがあり、
分割の第8世代の最新の分割出願の経過状況をみると、
手続補正書(請求項の修正)を2024/5/27に行っており、請求項を以下のように凄く細かく限定しています!
長すぎて、途中で改ページの線とp.2が入っています!
要は、ここまで限定したら、
「絶対無効理由がない&他社製品を侵害できている」
という見込みが裁判の議論の中で分かったから、とどめを刺しにきたんだろうなと、業界人的には想像しました!
※上記は、想像なので、ほんとうかどうかは分かりませんので。最後の裁判の判決(当事者間の終戦締結)がでるまでは実際はわかりません。最後まで見届けましょう。
私が知財部員だったら、その意気込みでこういう補正を仕掛けますね!
この裁判のストーリーを、最初から特許の泥臭い実務というものを理解して進めているのが素晴らしいです。
知財部員が優秀なのもそうですが、それを理解して活動を承認してくれた経営層もあってのことです。予算もしっかり取って、知財の活動を認めているのが分かります。特許は将来の投資なので、コナミの知財・経営層は素晴らしい投資家であったという証拠ですね。
世の中の経営層と呼ばれる方は、こういう特許を活かして事業を有利に進める戦略がありますので、特許をより深く理解して頂きたいと思います。
そのために、日ごろから特許といった知的財産権に関心を持ち、社内の知財部員の方と協力して頂けたらと思います!
追記:2024年9月
ゲーム業界で、次の大型裁判が勃発しました!
ポケモン(任天堂)VS パルワールド(ポケットペア)
こちらの情報も追って行きましょう!
こういうのをしっかり勉強することで、自分自身が担当する商品は、特許侵害に巻き込まれないようにしましょう。
★パルワールドの件を故意侵害について解説
★パルワールドの件を共同不法行為について解説
追記:2024年10月
今年は、更にセガとメメントモリの裁判が勃発しました!
特許業界、盛り上がってますね。
執筆/得地