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#小説
が、気になった。~月曜日~
俺が勤めている会社には 、図書コーナーがある 。
社員から 読まなくなった本を 集めて、 カラーボックス を並べて 本棚を作り、テーブルと椅子 を備え付けた 非常に簡素なものである 。 こじんまりとしたスペース なのだが、 俺が入社して 三年 、一度も利用してる人を見たことがない。
社員食堂の 真ん前にあるので 、昼食を食べ終わった 社員が 利用してるのを目撃しても
が、気になった。~火曜日~
今日もまた彼女は本を読んでいた 。
例によって 本に目を落としているため こちらには全く気が付いてないが。
エレベーターを待つ間 、どうしたって見えてしまう彼女の 顔は険しかった。
ものすごく眉間に皺が寄っていて、 口元が 思いっきり 引き結ばれている。 一体 どんな本を読んでいるのだろうか。そこまで 鬼気迫っていると、 気になってたまらない。
表情だけで人の興味をそそるとは、 素晴らしい才能を
が、気になった。~水曜日~
今日も今日とて 彼女は本を読んでいた。
表情の起伏もなくただ静かに読み進めるその姿に、ちょっぴり残念さを感じたことに気付いて、俺は自分に苦笑する。
いつの間にか、すっかり期待していたようだ。
ページをめくる音が、閑散とした廊下に静かに響く。
少しだけ物足りないような気持ちでエレベーターの到着を待つ。
その時間が耐えられなくて、 気取られぬようにちらりちらりと 目線を送る。
目に入ったのは
が、気になった。~木曜日~
当たり前のように彼女は本を読んで いた。
通りすがりに見た彼女の姿に驚いて思わず二度見してしまう。
彼女は 、その瞳から涙を一筋流していた。
その時彼女が顔を上げ、思わず足が止まった俺と目が合った。
初めて あわせた顔は驚きに満ちていて、 濡れた瞳 にドキリとした。
彼女は慌てて涙を拭って、 気まずそうに笑うと会釈する。
俺もまた会釈を返して、 足早に その場を立ち去った。
まさか 懸