が、気になった。~水曜日~
今日も今日とて 彼女は本を読んでいた。
表情の起伏もなくただ静かに読み進めるその姿に、ちょっぴり残念さを感じたことに気付いて、俺は自分に苦笑する。
いつの間にか、すっかり期待していたようだ。
ページをめくる音が、閑散とした廊下に静かに響く。
少しだけ物足りないような気持ちでエレベーターの到着を待つ。
その時間が耐えられなくて、 気取られぬようにちらりちらりと 目線を送る。
目に入ったのは 手にしていた本。
その本には、紙のカバーが施されていた。
表紙の面と裏表紙の面。真ん中で 柄が二つに分かれていて、 片側が大粒の黒いドットで 片側が ギザギザとした サメの歯のような柄。
既製品とは一味違う雰囲気のカバー。
下地の色は両方とも 茶封筒の色をしていて、下部の約三センチには 白いラインが引かれていた。
そして、アクセントに 貼られているハリネズミとりんごのシールが、なかなかに おしゃれだ。
乗り込んだエレベーターの扉が閉まる中、手作りなのかなと思えるブックカバーが気になった。