が、気になった。~金曜日~

意外な事に、 そこに彼女はいなかった。
もしかして、 昨日 あんな事があったから 気まずくなったのか?
 いやいや、うぬぼれてはいかん。彼女にだって都合というものがある。
 もしかしたら休んでいるのかもしれないし。
 空っぽの 図書コーナーを目にした時、俺の頭は一瞬にして様々な事を考えた。

そしてエレベーター前に立つ。
 たった四日。
ほんの四日間、いつもと違う光景があり、 そしてそれがなくなった。
それだけの事なのに、それが悲しい。

……。

 ん⁉
何だそれは? どういう事だ⁉ 
寂しいのか?  悲しいのか、俺⁉
いや、まさかだろ。だって、人が本を読んでいるのを珍しがって眺めてただけだぞ。その後ろを通り過ぎてただけだぞ。
そして、 本にまつわる小物が 目に入って、気になってただけだぞ。
 寂しくなる要素かどこにある⁉

思考がぐるぐると渦を巻く。
俺は混乱し始めて、忙しなく目を泳がせた。
その時 、彼女の濡れた瞳が不意に脳裏に蘇る。
あの驚いた目、 気まずそうな顔。
 そうだ、顔を合わせたのなんて、ほんの一瞬だったじゃないか。
ずっと混乱が止まらない、動揺も。
 もしかして、 もしかして俺は……。
俺は彼女が好きなのか?

 ともすれば、とんでもないことが起こりそうな。
 自分の気持ちが、気になった。