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『古事記ディサイファード』第一巻021【Level 3】京都(9)
【解答 5】(6)
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「時空を超えた意識……マスタープランがあるとしか思えない……。でなきゃ、あり得ないはずだわ、こんなこと」
「俺たち日本人にとっては何気ない当たり前な日常の背景として空気のように存在している神社群が……実はとんでもないオーパーツだってことだ」
「オーパーツ?」
「Out-of-place artifacts ……略してoopartsって言うんだよ」
「どういう意味?」
「あり得ないはずなのに、現にあるモノってこと」
「それにしてもこうして眺めてみると壮大だわ。ナスカの地上絵みたいね」
麗桜は縦横に走る線ですっかりにぎやかになった地図を見おろして呟いた。
神山を中心とした巨大な二等辺三角形が集中して出来ている。そして全体として見ると、貴船神社を最も強調しているように思われるのだ。地図の上に描き出されたパズルのような図形。このパズルは完成されたものなのだろうか、それとも新たな謎を啓示しているのだろうか……。
「あ……、そうだ、もう一つ……六角堂で大きな二等辺三角形が出来るのを忘れていた」
時空は再びペンと定規を持ち直して立ち上がると再び線を引き始めた。
翠黛山
北緯35度07分09秒
東経135度48分51秒
半国高山
北緯35度06分47秒
東経135度41分47秒
六角堂 - 翠黛山 13582m
六角堂 - 半国高山 13523m
翠黛山 - 半国高山 10757m
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「えっ?
この二つの山は自然の山でしょう? これはさすがに偶然じゃないの?」
「俺も最初は偶然だと思った」
「違うの?」
「単に三角形が沢山出来ているだけのように見える。ぼうっと眺めていても偶然でしかなく、なんの意味もないように思われる。でも、何か意味があるはずだと思ったんだ」
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時空はプリンタのトレーからリストを取り上げて麗桜に手渡した。
「二等辺三角形の底角や頂角の大きさ、辺の長さを分析するとはっきりとしたメッセージが読みとれる」
「メッセージ?」
「この数値だよ。
二等辺三角形〈神山-小倉山-天智天皇陵〉の底角は48度。
つまり、その底角の和は96。
垂直二等分線〈貴船神社-神山〉の距離は4.8キロメートルで9.6キロの半分。
方位角は192度で96の倍。
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二等辺三角形〈六角堂-半国高山-翠黛山〉の底角は66度。頂角は48度。
底辺〈翠黛山-半国高山〉の方位角は266度。
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二等辺三角形〈神山-寂光院-六角〉の頂角は132度、
つまり66の倍。
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二等辺三角形〈神山-金閣寺榊雲-貴船神社〉の等辺は4.8キロ、底辺の長さは9.6キロ。
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二等辺三角形〈神山-金閣寺榊雲-下鴨神社〉の底角は66度。頂角は48度。つまり六角堂-半国高山-翠黛山〉の相似形」
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「ええっ……まさか……!」
「そうなんだ。ここまで分析すると、でたらめでも偶然でもなく、計画的に、ある意図を持って作られた図形であることがはっきりしてくる。しかも、角度と距離の両方で整合する数字が書き切れないほど出てくる。
信じがたいことだが、これは明らかに現代の我々のメートル法と同じ測距システム、同じ原理の方位角システムで設計されている。
そして、どうやら96、66という数字を共通のモチーフとして使っているらしい」
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「96、66……」
「夢に出てきたあの点の羅列だよ。
数字に置き換えるとこうなる。
96
66
66
66
66
66
66
66
66
96
これが……あの夢が俺たちに伝えたかったことなんだ。
間違いない」
(つづく)
※ 最初から順を追って読まないと内容が理解できないと思います。途中から入られた方は『古事記デイサイファード』第一巻001からお読みいただくことをお薦めいたします。
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