スコットランド最北のシティ インヴァネスへ 鉄道の旅 2
スコットランド最後の訪問地インヴァネスへ、移動は鉄道と決めた経緯 -
この日、グリーノック(Greenock)を午前中にチェックアウトしてまずは再びグラスゴー(Glasgow)へと向かった。ロックローモンドの旅はとても充実していて、幸運なことにお天気にも恵まれたので、名残惜しさはあったものの、旅にありがちな去り際の寂しさはあまりなく、グリーノックの駅へと向かう足取りは軽かった。それはやはり念願だったスコットランド縦断の、鉄道の旅が控えていたからかもしれない。
前回までのスコットランドの旅(エディンバラ、グラスゴー、ロックローモンド)の記事をまとめたマガジン -
グラスゴーは相変わらず人であふれており、その騒めきに私はまたある種の心地よさも感じながら、インヴァネスへ向かう列車に乗り込んだ。
肝心のお天気だが、雨ではないものの厚い雲に覆われたグレーな空模様、イギリス定番のお天気である。それでも、私はこのスコットランド縦断の旅に心躍っていた。まるで遠足の前夜の幼稚園児のように。
列車は曇り空と緑の森林地帯の合間を縫うようにひたすら走る。どこまで行っても緑、緑、緑…晴れていればイギリス定番のブルーとグリーンの組み合わせがさぞかし美しい田園風景だっただろう。
確か、スターリング(Stirling)辺りだったと思う - 途中、珍しくゴツゴツした岩場が表面化した山々の谷間を通過する箇所があった。その時の天気と言ったら曇りは曇りでも特に暗く、日中にもかかわらずまるで不穏な気配を感じさせるかのような悪魔的な暗さで、まるで地獄の谷を通っているような、不思議な光景だったことを覚えている。
おそらくこれはスコットランド人、もといイギリス人にはその土地柄、珍しい風景ではなかっただろう。日本でさえ雨の日は少なからずあるし、イギリスほどではないにしても、私たち日本人も雨には慣れている。それでも、あのまるで “地獄の谷” と形容してしまいそうになるほどの車窓からの風景に、私はこれこそがスコットランドなのかもしれない、とその瞬間、心底腑に落ちた気がした。おそらく、これが異国の地、異文化を体感するということなのだと。
あの時ばかりは、ロックローモンドへの路線バスの旅 でも綴ったようにスマホを持つことをやめ、静かに、けれど未知への溢れそうになる好奇心を胸に、窓の外をただただ眺めていた。
(カーブリッジ(Carrbridge)付近。文中で記載した "地獄の谷" と形容した雰囲気とは異なるが、インヴァネスから車で30分ほどの自然あふれる村である)
あの時の車窓からの風景を共有できないことが、ひどくもどかしい。地味だけれど、やはり日本のそれとは違うスコットランドの北の大地の風光明媚な光景に、私はまた旅の醍醐味を見出してしまって、そして旅の魅力に取り憑かれたヴィクティム(犠牲者)になる自分を諦めるしかなかった(続く)。
※ 挿入されている写真及び画像、動画コンテンツはすべて筆者によるものです。
(Greenock - Inverness 29 Jun 2019)