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春から大学生になる コウジは、 アルバイトを探していた。 3月、 自宅の郵便ポストに入っていた、 「◇◇水族館/今春OPEN! 新規スタッフ募集!!」 というチラシの文字が コウジの目に留まり、 「これでいいかな」 と思って、 コウジは 面接を受けに行った。 タイミングを同じくしてか 結構人数がいる。 アルバイトの面接は はじめてだったので、 コウジは少し神妙にしていた。 が、 ひとり、 色白ではあるが 髪がロングの 今風の女の子の姿が、 コウジの目に留まった
男は、 以前に足を運んだ、 Hという街の 教会を訪れた。 その場所に、 4年前に話をしたことがある 若い掃除婦の姿を探したが、 見つけることはできなかった。 街はそこそこの 人通りであったが、 この教会には あまり人気を感じなかった。 「また今度にしよう」 そう思い始めていた時に 奥から人の影が現れた。 出てきたのは、 なんと4年前に 街でパンを分けてくれた かの老年の女性である。 老女は、 こう話を切り出した。 「久しぶりね。 なんか、あなたが やってくる気は
男は市場で 買い物をしていた。 すると、 どこかで見たことがある 若い女性の姿が目に付いた。 男は、 何かに引かれるように 女性に話しかけた。 「あのー、、 いつかどこかの教会で お会いしたことはありませんか」 その若い女性は いくぶん おどろいたようだったが、 こう返した。 「いえ、、 あなたにお目にかかったことは ないと思いますが」 それを聞いた男は、 残念そうに言った。 「そうですか」 若い女性は、こうも付け加えた。 「ただ、、 私の双子の妹が教会にい
街はすさんでいた。 男は パンが配給される列に並び、 2つのパンが支給された。 「ふぅー、、」 とため息をつき 自家へ戻ろうとした次の瞬間、 道を通りかかった とある少年に腕を強く掴まれ、 抱えていたパンを2つとも 持っていかれてしまった。 「・・・ おい!」 男はそう言って パンを取り返そうとしたが、 逃げる少年を追いかけるだけの 余力が彼には残っていなかった。 しばらく茫然としていた。 頭上に目をやると、 空はうす曇りの状態である。 「そこのあなた」 男が視
少年は、 やけに静まった町を歩いていた。 「人が全然いない」 静かなところは嫌いではないが、 ここまでの静寂があると 不安の感が強くなる。 すると、 背後からいきなり 声をかけられた。 「やあ、少年」 振り返ると、 自分よりも小さい 黒い影のようなものが目の前に現れた。 「君は幽霊というものを信じるかね」 少年はびっくりした。 しかし、いくぶん真面目な少年はこう返す。 「あなたは幽霊なのですか」 「まあそんなところだ。 それより、ちょっと話を聞いてくれないか
ジュンペイ 「こんにちは、よろしく」 ジュンペイは隣にいた少年に 挨拶をした。 タカシ 「こちらこそ」 ジュンペイは、 随分とかっこいい少年がいるなあ と思って少し驚いた。 ジュンペイの学校には こんなに目鼻立ちのはっきりした、 しかも背の高い男の子は いない気がした。 小学5年生の時、 2人はとある学習塾で席が隣同士になった。 住んでいる場所も割と近く、 帰りの電車も同じ駅で降りた。 2人とも授業中は わりとおとなしくしていた。 クラスには勉強ができる子が多く、
うさぎは 自分の足がはやいことを かめに自慢してきました。 かめは悔しくて 「そこまで言うなら 駆け競べをしようじゃないか」 とうさぎに勝負を挑みました。 2匹は丘の頂上まで 競走することになりました。 うさぎは足がはやく、 あっと言う間に かめの姿が見えなくなってしまいました。 うさぎは 「ちょっと先を行きすぎたかな。 かめが来るまで待とう」 と思い、 その場で昼寝をし始めました。 かめは ゆっくりですが、 丘の上を目指して進んでいきました。 途中、 うさぎの姿
タカシは 他校の生徒といざこざを起こし、 謹慎処分中であった。 そこに、 自分とは違う中学校へ進んだ ジュンペイがやってきた。 J「よー、元気かい」 T「ちょっと腹が立って やっちゃったんだ。 ところで、なんの用だよ」 J「この本は学校の読書感想文で 仕方なく読んだ本なんだけど、 面白いから読んでみてよ」 タカシとジュンペイは 久しぶりの再会だった。 家はそう遠くないものの、 学区が異なり中学校も違うので なかなか会うこともない。 J「じゃあね、また」 T「おう
ケンジ 「やっぱりおれたちは、 他の人達よりも幼いのかな」 アキラ 「いや違うっしょ。 一足先を行っているだけだよ」 大学4年の秋、 他の学生が就職活動を無事に終えている中、 2人は東京のビル群に囲まれた 小さな公園でくすぶっていた。 アキラは音楽や動画に興味があった。 機械を使って ちょっとした作成も行っていたが、 あくまで趣味の域を出ないと感じてはいた。 ケンジは企業の仕事に関心が湧かず、 「こういう詩を書きたい」などと言って 現実を見ることから逃