おふくろの味、故郷の味、お弁当の記憶
ことしもあとわずかになりましたね。ほんの数年前は、帰省を我慢して過ごしていましたが、ようやく移動もできるようになり、ことしも明日故郷に移動する予定です。
帰省する日程が近づいてくると、故郷の家族とのやりとりも頻繁になります。帰ってきたらどこにいきたい、なにか見たいものはあるか、離れた土地から帰る身に、みんなの気遣いを嬉しく感じます。
🏠リクエストする実家の味は
そんな中でも特に嬉しいのが、母親がいつも訊いてくれる「帰ってきたらなにが食べたい?」というひとこと。懐かしい味の並ぶ食卓は、帰省する側からしても格別です。
そんなふうに心の中では嬉しいと思いつつ、照れくささからなのか、「なんでもええよ」と答えがちですが、それでもなんどか訊かれるうちに、顔を出すのが本音。
だしまき玉子、白和え、大根とお揚げさんの炒めたやつ、ぬた、きずしなど、いわゆる京都風のおばんざいに、コロッケやカレー、ハンバーグなどの洋食メニューも思い浮かびます。コロッケなんていつでもどこでも食べられるのにと思う反面、子どもの頃から食べていた、実家の味はひと味違ったりするのも事実です。
そして、必ずリクエストするのがこれ。
牛肉のしぐれ煮です。
🍱お弁当のエース
このメニュー、自分にとっては好物というだけでなく、なんともいえない懐かしさを覚えるひと皿です。というのも、学生の頃、母がつくってくれるお弁当に入っていたおかずの中でも、特に嬉しかったひと品。いわゆるお弁当のエースですね。
帰省するときに思い浮かぶ、食べたい実家のおうちごはんの中でも、お弁当といういわゆる青春時代の記憶ともリンクするメニューはそういくつもあるわけではありません。
そんなわけで、このメニューには特別な懐かしさがあります。自分にとっては、いわゆるおふくろの味の代表なのです。
🥩自分でもつくります
そんなしぐれ煮、帰省するときに必ずリクエストするといいつつ、それは年に2度か3度のお話。ふだん、自分でもあの味を思い出しながら、つくることがよくあります。
まずはたっぷりしょうがを用意。
千切りにしていきます。
🥩材料(2皿分)
・牛肉…200グラム
・しょうが…20グラム
・醤油…1/2カップ
・みりん…1カップ
・砂糖…大さじ2
調味料はシンプルに、醤油、みりん、砂糖の純和風。
牛肉としょうが、調味料をお鍋に合わせます。お水は入れずに、コクのある味を目指します。
そのまま火をつけて、一気に沸かします。
お肉がくっつかないように、お箸でささっと手早くほぐしつつ、さらに加熱。
一気に沸騰させて火を通します。
あっという間にできあがり。
🍚おかずからおつまみに
いったん冷まして、味が染みたら食べどきです。
たっぷりのしょうがは、香りも味も食感もいいアクセントに。おふくろの味、再現完成しました。
甘辛い味付けはごはんに合うこと間違いなし。子どもの頃はこれさえあれば、ごはんがもりもり食べられる最高のおかずだったなぁと思い出します。
そんなしぐれ煮も、いつしかおとなになったいまの自分にとっては、最高のおつまみ。ビールに合わせてよし、日本酒にも合わせてよしの万能選手。晩酌のおともにしつつ、故郷の記憶をたどるのです。
🍱やっぱお弁当
といいつつ、しぐれ煮をつくると、やっぱりこれ。
お弁当のおかずとしても大活躍。なんといっても、おふくろの味、あの頃のエースです。
しぐれ煮を入れたお弁当は、その周りのおかずもなんとなく、子どもの頃を思い出すメニューで固めがちです。
玉子焼きにじゃがいもの煮っころがし。そして梅干し。ナポリタンぽくケチャップ味をからめたスパゲティも入れてみました。
💡おふくろの味の真実
自分でつくるしぐれ煮も、それなりに母の味に近づいたと思っていたある日、思わぬことを知りました。
え、あんた、お砂糖入れてるんかいな。甘すぎひんか。わたしはみりんと醬油だけで味付けてるで。
そうなの。そうなんですか。
思いがけない真実。お砂糖なしであのコクのある甘みが出せるなんて、驚きでした。おふくろの味の秘訣を身につけるには、まだまだ修行が足りないのかもしれませんね。
聞けば、そもそも母にこのレシピを教えてくれたのは、実の姉だったとのこと。姉から母へ、母から自分に。おふくろの味は、継承されてまた次の世代の中で、親しまれていくのでしょう。あらためて、大切にしたいレシピだと思いました。
おふくろの味、みなさんにとっては、どんなメニューですか。きっと、素敵な想い出に寄り添うひと品があって、そこにはおとなになっても忘れられないエピソードがあるんじゃないかと思います。