来年に向けたワインづくりが始まっています
4月8日、十勝まきばの家ワイナリーのぶどう栽培畑では、畑作業が本格化しています。冬を過ごしたぶどうの木「清見」を覆っていた養生シートを剥がす作業と誘引(枝をワイヤーに結ぶ作業)が行われていました。「清見」は寒さに弱いため、木々周辺の耕した土を被せて越冬させる清耕栽培を行いますが、ここでは畑の雑草をそのまま残す草生栽培を採用し、冬季間をシートで覆う越冬方法を行っています。草生栽培は雑菌が付きにくく、また地面を覆う雑草のおかげで春の雪解け水による畑の土の流失を防げるなど、メリットも多くあるようです。
作業中のFar夢 楽縁の前田さんに話を伺いました。
収穫が終わったぶどうの木は、翌年のために不要な枝やつるをきれいに取り除き、次回収穫に適した枝を残して新芽が成長しやすい部分を予測して養生します。
枝を誘引する方向や実なりを予想した作業は、プロの技術と経験が必要とされます。
「今冬は大雪の影響でうまく雪に覆われたおかげもあり、冬枯れせずに順調な生育が期待できます。畑作業が本格化し始めるこの時期は、作業への身体づくりと気合が入りますね。育成には先々を見据える難しさもあるけれど、翌年に期待できる楽しい作業ですよ」と話してくれました。生活に支障をきたす積雪もぶどう畑では自然の恵みとなったようです。
また、豊かな自然は、野生動物の食害という厳しい現実も持ち合わせています。電気柵で畑への侵入を防ぐ対策をしても秋から春先にかけて、野うさぎが若い木を食してしまいます。他にもエゾ鹿が新芽を食べるため、春から夏にかけて被害が出るそうです。冬季間は畑作業がお休みと思いがちですが、一年を通じて労する仕事だと実感させられました。電気柵のほかにも木一本ずつにカバーを付けるなどして、食害対策を施していますが、せっかく準備した新しくも若々しいぶどうの枝や新芽が、野生生物の被害に悩まされる事実もありました。
単年度の畑収穫物とは違い、果樹栽培は何年とかけて木を育成することが重要で、食害に遭うと木自体が枯れてしまうことがあります。これから芽吹きの季節を迎え、手間ひまかけて育てられたぶどうの木が、極力被害に遭わないように祈るばかりです。
ぶどうの栽培から醸造、販売をすべて自社で行っていることの苦悩と大変さ、これらを「楽しみ」と言い切るスタッフの方々には、頭の下がる思いでした。