晩秋の上州を、格安宿で巡る④【隠れていた超名湯】
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片品温泉「旅館うめや」の源泉の素晴らしさに驚嘆した私は、居てもたってもいられず湯上り後にまた女将さんの元へ向かった。
豪放磊落と言った感じの個性的な女将さんがフロントにいた。
私 「驚きました。こんなに素晴らしい源泉に出会えるとは」
女将 「そうだろ。皆入った人は驚くよ」
失礼を顧みず、こんな質問も投げてみた。
私 「何故こんな素晴らしい湯が、余り有名にならないのでしょう。」
女将 「まあ、縁がないのかもね」
ph9.0の単純硫黄泉。美容液さながらのとろみのある源泉。
片品村の温泉は単純温泉しかない印象で、それも自家源泉を持つ宿はなかったと認識していた。
浴室には私も有資格者である温泉ソムリエの家元「遠間和広」氏の、湯に関するコメントが貼り出してあった。
素晴らしい「美人の湯」です
pH9の高いアルカリ性、そして、硫化水素イオン(硫黄)の「ダブル美肌効果」でお肌ツルツルに!
適応症に「慢性婦人病」があるので、女性には特にうれしい温泉ですね
切り傷にも効果が高いので、活動的な男性にもおすすめ!
効果が高いのに刺激が強すぎず、しっとりと体を優しく包む優しい温泉・・・
心も体もゆっくり癒してくださいね
こんな素晴らしい温泉が源泉かけ流しで提供されていることに感謝!感謝!
温泉ソムリエ家元 遠間和広
女将 「片品はスキーと合宿のイメージがあるからかもね」
確かにその通りだ。
片品と言えばスキーと合宿、そして尾瀬のハイキング帰りにサッと湯に浸かるところ。団体向きの温泉施設は、正直そんなに良質な源泉があるとは想像しにくい。現に他の民宿では循環湯だったり、沸かし湯のところもあるようだ。
浴槽の撮影許可をいただき、スマホを構えて浴場へ。しかし湯気で曇ってしまいほとんど何も映らなかった。
私 「こちらにはまた来ると思います。ちなみに湯元はどこですか??」
女将 「実はうちも引き湯で買ってるんだよ」
私 「どちらからですか?」
女将 「ここを右に出て、酒屋を左、橋を渡ってまた左」
「みよしの旅館ていうのがある。そこが元湯だよ」
私 「そこは、日帰りはやってますか?」
女将 「わからん。前はやってたみたい。うちより熱いよ。」
私 「とりあえず行ってみます!ありがとうございます。」
宿を出て、案内の通り車を走らせる。
とても旅館があるとは思えない狭路を進むと、あったあった「みよしの旅館」。
旅館の向かい側に体育館とグラウンドがあり、旅館規模もかなり大きい。やはり合宿利用を想定した造りのようだ。ここに来ても尚、本当にホンモノの源泉があるのかと邪推してしまう外観だ。
入口付近にご主人と女将さんがいた、何やら玄関口の掃除中のよう。この時14時半、湯は張られているはずだ。
私 「あの、日帰り入れますか」
館主 「大丈夫ですよ、ちょっと待ってて」
館内に上がり暫く待つと、女将さんがフロント対応してくれた。
女将 「では500円になります」
私 「先ほど「うめや」にいたのですが、こちらが湯元と聞き参りました」
女将 「間違いなく当館が湯元ですよ」
私 「浴室、撮影してもよろしいでしょうか?」
女将 「まあ、古いですけどね」
浴槽の扉をオープン。こちらも内湯が一つ、湯気がモクモクと立ち込め視界が悪い。床にはジョイント式の人工芝が敷かれていた。
これは恐らく、転倒防止のための配慮だ。トロトロのアルカリ性、流石にスリッピーだ。
湯船に浸かると確かに旅館うめやよりも少々熱い。湯元から近く配湯量も多い証拠か。源泉のパワーがあるからだろう、岩場に析出物が堆積しており緑礬色に変色している。
肌の表層の角質を落とすアルカリ泉質、内側からは硫黄成分がじわじわと効いてきた。この日既に立ち寄り3湯目、すぐに頭皮から汗が流れ落ちてきた。
圧巻の超良質泉。散々回りつくしてきた群馬の湯において、駄湯が多いと決めつけていた片品温泉街。通りから外れた裏路地に、県内屈指の名湯があった。
湯巡りを始めて以来、温泉に関する書籍を見つければ購入し、新刊が出ればマメに目を通してきたつもりだ。
だがこの源泉、たまたま見落としていたのかその存在は完全にノーマークだった。
湯上り後、館主に声をかけた。フロント奥に見える料金表が気になった。
私 「素晴らしい湯でした」
館主 「ありがとうございます」
私 「あの料金表は、2食付きの値段ですか??」
私が指さした料金表。1泊6,000円~6,500円(平日)とある。
館主 「そうですよ、全て2食付きです」
私 「安いですね。次は泊りで参りますね」
館主 「お待ちしております」
源泉は超良質。6,500円で2食付きはかなりリーズナブルだ。さて部屋と食事はいかがなものか、これは近いうちに突撃せねば。
一つ気を付けねばならないのは、合宿中の若者と同日に宿泊しないことだ。隣室でどんちゃん騒ぎでは安穏安眠とはならないだろう。
このような隠れた名湯があると思うと、まだまだ病に伏す訳にはいかない。再訪を誓い沼田方面へと戻る。
本日の投宿も1泊四千円台。さて良宿に出会えるか。
令和3年11月9日
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