さすらいの秋旅 弾丸三県湯巡りへ④【激渋!只見沿線共同浴場群】
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西山温泉を出た後は、定石通り只見線を縫うように奥会津へと進む。
福島県会津若松駅から新潟県小出駅を繋ぐ只見線。
絶景の秘境路線は多くのファンを魅了し続け、度々好きなローカル線ランキングなどで上位に登場する。
新緑や紅葉の渓谷美の中を通る2両編成は、鉄道ファンでなくても一度は目に収めたいところだろう。一日数本しか走らないこの只見線、出会えるか出会えないかは花占いだ(鉄道ファンならば時間を合わせるのだろうが、、)。
かつて湯巡りで訪れた6年ほど前、偶然併走に成功した際は年甲斐なく車内で狂喜乱舞。青森の西海岸にて五能線と併走した瞬間に匹敵する感動だった。
残念ながら10年以上前の豪雨災害の爪痕はまだ残っており、両翼の中央部にあたる会津川口~只見駅間は復旧しておらず、バスの振り替え運行となっている。2022年の全線再開が待たれる。
この沿線に魅了されるのは鉄道ファンだけではない。
全国を回りつくした温泉マニアからも極めて人気の高いゾーン。特に、鄙び系共同浴場を趣向とする者にとっては欣快だ。総じて成分が濃厚で、褐色を纏った個性派源泉は泉質もハイレベル。
最初に向かったのは「湯倉温泉共同浴場」。
只見川に架かる鉄橋を渡り、対岸に着くと小さい湯小屋が姿を現した。数年前にリフォームされた湯小屋は綺麗で、協力金300円を募金箱に投金する無人スタイルだ。
車を停め玄関に近づくと、「町民以外立ち入り禁止」と張紙が。。
近くに管理人がいる雰囲気もない。中には誰もいる気配はなかったが、ここは湯族としてルールを遵奉する。
年々悪化の一途を辿る入浴者のマナーの低下。これは日本人の誇りの零落を意味する(大袈裟か)。残念ながら、ここはノーダイブ。
数年前の記憶だが、この一帯の共同浴場の中ではここが最も激熱だった。橙色の源泉には細かい鉄屑の様な湯華が舞い、数分浸かっただけでもKO寸前に追い込まれるほど強力だった。
駐車場からは湯小屋の横からチョロチョロと只見川へ落ちる源泉が見えた。岸壁は湯の成分で橙色に変色し、うろこ状の段々畑を成していた。そのパワーは現在も衰えてはいないだろう。
この日は湯倉温泉を西端とし、東へと戻って行く。
会津川口から二岐に分かれる路を南下していくと「玉梨八町温泉」に出る。
旅館と商店がそれぞれ1軒、そして街の中心を流れる野尻川を挟んで両岸に「玉梨」と「八町」共同浴場がある。共に無人募金箱スタイルだ。
少し離れると近年リニューアルされた公衆浴場「せせらぎ荘」が。こちらは食堂ありの大きな施設で、週末ともなると家族連れで賑う。
最初にアタックしたのは「八町共同浴場」。
プレハブ小屋のような痺れる外観。中には誰もいなかった。男女別の湯船は極めて小さく、2人同時に入ると狭く感じるほどだ。
こちらの源泉も濃厚。二酸化炭素を含む46度の湯がとんでもない勢いでかけ流しだ。放出された湯の勢いが波を起こし、細かい気泡が全身に付着する。
ガス成分は熱を持つと成分が飛んでしまうため、泡付きが見られる湯は40度以下の温湯であることが多い。熱くてもなお気泡が付くのは、湯の鮮度が高い証だ。
続いて川を渡り「玉梨共同浴場」へ向かう。こちらは湯倉温泉同様「町民以外入浴禁止」と掲示があり本日2度目の湯逸。
源泉は「八町」温泉とほぼ同じで、少し温めの「亀の湯」源泉がブレンドされている。脱衣所こそ男女で分かれているが湯船は1つ。混浴だ。
そういえば昔、ここで地元のお婆さん二人きりになったことがある。その肝が据わった入りっぷりに私の方が恥ずかしくなるほどだった。
「せせらぎ荘」は相変わらずの人気ぶりで、駐車場も混み合っていた。
別名「サイダー温泉」と言われる湯は、5年ほど前のリニューアルに際し新たに掘削された「大黒湯源泉」。とある著名温泉専門家からも「東日本一の泡付き」と紹介されるほど。
こちらの源泉は38度台と温く、炭酸ガスが滞留するには好条件の温湯だ。
男女別で4人程が入れる小さい大黒湯浴槽があり(大浴槽は八町源泉)、ここに入るために順番待ちが発生することも。
10分程大浴槽にいると、遂にチャンス到来。
本旅初の温湯源泉、ダイブした瞬間に一気に気泡が付いた。
まるで自分が発泡機になったかと錯覚するほど、その泡付きは凄まじい。この湯をあてた方は、前世でどんな徳を積んだのだろうか。
過去に大分県の「長湯温泉」、「七里田温泉」でも出色の泡付きを経験したが、大黒湯源泉はそれ以上とも思われる素晴らしいものだった。
本来の予定では、この後早戸温泉「つるの湯」に寄るつもりだったが、「せせらぎ荘」で予定時間を大幅にオーバーしてしまい、宿に収まることにした。
今旅2泊目。素泊まり5千円台の宿は、これまた私の期待を大きく上回る良宿であった。
令和3年10月18日
<湯倉温泉>
<玉梨八町共同浴場>
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