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真夏の温泉ワーケーション⑧【快適な安宿たち 】

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 4連休最終日はまた宿を移す。こちらも駅近く、朝食バイキング付きのセルフスタイルの宿だった。外観からはかつては一般的な旅館だった形跡が残る。館内にも現在は使用していない宴会場があった。20年以上前に業態転換したようだ。

 仲居や調理人を雇うのにもコストがかかる。経営を圧迫するのはやはり人件費。数々の温泉地を見てきたが、最初に傾くのは大きいホテルや旅館から。個人経営で、部屋数が少なく手入れが行き届いている宿ほど息が長い。
 こちらの宿は随分早くから見切りをつけ、今のスタイルに切り替えたようだ。1階には外来客も受け付けている食堂があり、おつまみや麺類、定食や丼物も充実していた(ここでは食べなかったが、)。

 私が予約したプランは5千円台の「部屋おまかせ」という格安プラン。
じゃらんや楽天トラベルを多用するが、このタイプのプランを選んで損をすることはほとんどない。今回も案内された部屋は角部屋で、二間続きの一人には贅沢過ぎる部屋だった。

 推測の域を出ないが、宿側も安いプランで集客したからと言って、空室があれば良い方の部屋に通すのかもしれない。
 旅館からすると厄介なのは団体客。私も何度も経験しているが、一人静かに過ごしたい夜が隣客のどんちゃん騒ぎで台無しに。部屋は宴会場と化し、食べ物飲み物の残骸をそのままに出てゆく。

 その点一人客は静かなものだ。私は退出の際、必ずゴミは全て片付け、机や布団も到着時と同じレイアウトに戻し、目立つゴミは掃除をしてから帰る。一人客だし、どうせ空いているなら良い部屋へ、という配慮があるのかもしれない。(あくまで想像)
 以前にも訳ありプランで予約したはずのある旅館。エレベーター横で騒音のする部屋を~、のはずが、キャンセルが出たとのことで普通の部屋に案内されたこともあった。


 共同浴場通いがメインになるため、館内の湯には期待はしていなかった。大浴場には露天風呂と大小のそれぞれ内湯、それにサウナがあった。温泉に来てサウナとはちょっと邪道な気もするが、、すぐにその理由を知る。
 
 露天と内湯(大)は市営管理の混合源泉、消毒液臭を感じる。意外だったのは小さい内湯、これは33度温泉神社から引湯された源泉がかけ流しだ。これは予想外の収穫。
 若干湯の線は細く2人しか入れないサイズだが、湯量に見合う造りをしている点は高評価。軽く湯に浸かるとヌルヌル感あり、アルカリ性をしっかり主張する良い源泉だった。温湯を楽しむためにサウナを後付けしたのだろう。
 だがこの歓喜も束の間、直後に奈落の底に突き落とされる。

 
 サウナから出てきた中年男性。汗まみれの状態でかけ湯もせずに源泉浴槽にダイブ。しかも、ファーストクラスのフルフラットに寝そべる様に頭まで浸かっている。信じ難い愚行に開いた口が塞がらない。
 この源泉がいかに希少なものか分かっていないのだろう。・・・いや、それは関係ない。水風呂だろうと源泉だろうと絶対にやってはいけない行為だ。
 若者なら注意もするが呆れて物も言えず、また湯元元湯へと歩いていった。
 

 毎日2~3回通った湯元元湯。番台さんにも途中から顔を覚えられた。ある時、財布を開けると小銭がない。そんな時も、「あとでいいよ」と仰せ。
夕方部屋に戻り昼と夜分を纏めて精算した。

 宿から宿への引っ越しの際、チェックアウトの10時からインの15時まで、ボストンバッグを持ち歩くのがかなり面倒だった(PC2台が入っている、とにかく重い)。そんな時は湯元元湯へ。ここには鍵付きロッカーがある。
 朝風呂から上がり番台さんにお願い。
「夕方また来るので荷物を置かせてくれませんか?」。
あっさりとOKしてくれた。
 チェックインを済ませまた元湯へ。荷物を回収し部屋へ戻った。
 

 20時に閉館となるこの浴場、ほぼ毎日最終までいた。19時半になるとモップとクレンザーを持った清掃員が2人脱衣所に現れる(一人は番台さん)。その後30分ほど同浴し、20時ちょうどになると湯を抜き始める。

 湯元元湯も毎日環水清掃されていた。温泉の善し悪しを判別する際に、やはり湯の「成分」に目が行きがちだ。だが私はそれと同等に「清掃」にも注視している。
 いくら良い源泉が出ていても、それを何日も張ったままでは当然鮮度は落ちる。特にアルカリ性の泉質や特殊成分を含む泉質(二酸化炭素や放射能泉など)は、劣化と共にその個性は失われてしまう。

 2人が湯船をブラシで擦る姿を見ると、尚源泉の有難さが身に染みる。
番台さんに話を聞くと、元湯源泉は電源を落とすと湯が止まるそうだが、源泉神社から引湯している33度の湯は24時間365日、休まることなく出続けているそうだ。形容しがたい愛おしさを感受する。


 明日が磐梯熱海最終日。都内大学病院での検査と2度目のワクチン接種のため、一旦戻らねば。東京では、感染者数が大変なことになっているようだ。こっちにいれば、半径2m以内に人が入って来ることはない。う~ん。


                          令和3年7月27日

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