【2021年追想】新大陸発見!見落としていた初訪の名湯10選
長年湯巡りをしていると、なかなか新規で良湯に出会うことは少なくなります。立ち寄る施設も宿も決まりきってきます。そんな中で、今年巡り合った初訪の名湯10選をご紹介致します。
全ての湯。これまで何度も近くまで行き素通りしていたものばかり。灯台下暗し。日々勉強ですね。
既にご存知の方には釈迦に説法もいいところですが、そこはご愛敬。
①大湯温泉 荒瀬共同浴場(秋田)
八幡平で数日間の湯治をし、古遠部温泉(青森最南端)に向かう途中にふらりと寄りました。存在自体は勿論知っていましたが、何故か大湯はいつも素通りしていました。
受付がありますが誰もおらず、券売機でチケットを購入し番台に投券します。日本有数の足元湧出泉として知られていますが、湯船の下から湧いているわけではないようです。湧出口から引き湯で下から出しています。
終始独泉で、長時間加水されていなかったのか凄まじい熱さでした。湯はサッパリ系でわずかに石膏臭がありました。
大湯温泉には他に3つの共同浴場があります。この時は時間に余裕がなかったので、次訪の際はコンプリートしたいです。
日帰り:200円
②東山温泉 くつろぎの宿 新滝(福島)
福島県東山温泉は、典型的なバブル期開発温泉街であり廃墟群のイメージがありました。中々腰が重く初訪となりました。
新滝はモダンで立派な造りで、仲居さんの出迎えがあるなど私には無縁の存在でした。ですが当時じゃらんの割引で格安プランが出ており宿泊に漕ぎつけます。
【千年の湯】自噴岩盤の岩風呂は、足元湧出泉です。その他の浴場は循環等ありますが、こちらの湯は別格でした。石膏が凝固した白い析出物が見られ、見事な芳香漂う湯。鮮度抜群の良泉でした。
当時はキャンペーン価格とじゃらんのポイント充当で格安で宿泊しました。
素泊り:5800円~
③宮下温泉 ふるさと荘(福島)
会津若松から新潟県方面へと向かう道中、こちらに宿泊しました。只見線沿いは温泉マニアからも評価が高く、良質な源泉を募金箱スタイルの共同浴場でいただけます。
こちらのふるさと荘は、昨年11月に既に廃業していた宿。現オーナーがリノベーションし、再オープンから3か月後に宿泊となりました。
宿のすぐ横に湯小屋があり、湯船までの引湯距離は数メートル。鮮度の良い濃厚な褐色源泉をいただけます。嘗てテレサ・テンが宿泊した宿でもあり、館内には永遠と彼女の曲が流れています。ヒーリングボイスが心地良く安眠できます。
いつまでも残ってほしい宿の一つです。アジアの歌姫に思いを馳せてーー
素泊り:5,000円~ 日帰り:500円
④横向温泉 中の湯旅館(福島)
横向温泉には滝川屋とマウント磐梯とこちらの宿の3件があります。中の湯以外は訪湯済みでしたが、最もボロい本館へと突入しました。
かつては温湯だったそうです。現在は地震の影響で湯が止まってしまい、その後高温になるなど自然災害の影響を受けています。川沿いの露天風呂は35度程度の温湯で、いつまでも入っていられます。
腐鉄臭漂う温湯は長湯が可能で、露天で地元のマダムに囲まれ質問攻めにあうなどの貴重体験が出来ました。
居間に女将さんらしき方がいるのですが、横になってテレビを見ていて出てきません。300円を入口に置いて入館します。
素泊り:3,860円~ 日帰り:300円
⑤片品温泉 旅館みよしの(群馬)
ある意味こちらの宿が今年一番の衝撃でした。
片品エリアは良く行っておりましたが、スキー合宿や登山客の宿場のイメージが強かったです。こんなにも素晴らしい源泉が出ているとは予想外でした。
硫黄分を含んだアルカリ性の超美肌泉質。湯元からも近く、鮮度も素晴らしいです。滑りやすいためジョイント式の人工芝が浴室に敷かれています。
香りも良く、岩場も翡翠色に変色していました。一泊6,000円で2食付きで宿泊可能です。必湯の一軒です。
まさか片品エリアにこれほどまでの良泉があるとは、、いままで何をやっていたのか、汗顔の至りです。
1泊2食付:6,000円~ 日帰り:500円
⑥松の湯 松渓館(群馬)
こちらも予約困難宿として知られています。今年7月、数年越しで予約が取れました。良質なアルカリ性の美人泉、35度前後の温湯とありついつい長湯。気付くと1~2時間あっという間に過ぎています。
1日1組しか客を取らないという女将さん。理由を聞くと「疲れちゃうから」、と。
私なら満室稼働させ売上最大化を図るところですが、この欲がないところが長く旅館業を続けるコツなのだそうです。滞在中にも予約の電話がビンビン架かってきましたが、申し訳なさそうにお断りする女将さんが印象的でした。
土日はまず満室です。楽天トラベルで見張りをし、ウィークデイの中日などでないと予約取れません。ですが行く価値はあります。
1泊2食付:7,800円~
⑦角間温泉 越後屋旅館(長野)
文豪吉川英治愛湯の宿です。出桁造りの旅館群と共同浴場が密集する一帯はタイムスリップしたような異郷感です。渋湯田中温泉からも近く、いつか行きたいと思いつつこれまで未湯のままにしていました。
放置していたことを強く公開しました。それほど宿・湯・食共に素晴らしかったです。
貸切の3つの浴槽の内、2つは独自源泉です。自噴かけ流しで実にフレッシュ。好きな時間に貸切でいただけるのが有難いです。食事も2食付き8,800円(込)とは思えないほど豪華です。
館主と女将さんのお人柄も、多くのリピーターを引き付ける要素と見ています。
これほど素晴らしい宿はなかなか出会うことは出来ません。来年、必ずや連泊します。
素泊り:5,500円~ 1泊2食付:8,800円~
⑧松之山温泉 民宿みよしや(新潟)
この宿に泊まらずして、松之山温泉の全貌を知ったつもりでいたことが恥ずかしいです。松之山の、いや日本の至宝とも言える素晴らしい湯でした。
太古の海水が噴き出すジオプレッシャー型の源泉。その鮮度を失わぬ様、加水加温濾過循環、消毒液の投入もありません。「サイフォン式」の湯遣いで浴槽に張られる湯の鮮度も100点です。
私如きの拙文では、この素晴らしき源泉を表現するには恐れ多いです。
長期滞在すれば全身の激痛も全て吹き飛んでいきそうな良泉です。少々古い宿。外鍵もないので、ボロ宿耐性が低い方には向かないかもしれません。
1泊3,750円~
⑨逆巻温泉 河津屋(新潟)
長野と新潟の県境にある秋山郷。その一角にある秘湯です。
こんな隘路の先にどうやって宿を建てたのか・・・相互通行不可の一本道の奥にポツンと一件宿は現れます。
洞窟風呂はその名の通り、洞窟をくり抜いて造ったという内湯。美しい自噴泉は無色透明ですが石膏臭あり。飲泉も可能です。40度前後の温湯で、貸し切り長湯でいただきます。
この辺りも何度も通ってきましたが、未湯のままにしていました。
本当に勿体ない。
日帰り:800円 1泊2食付15,550円(込)~
⑩松崎温泉 長八の宿 山光荘(静岡)
温泉界のレジェンド「つげ義春」氏の作品(長八の宿)のモデルになった宿です。作品が発表されてから半世紀以上経ちますが、外観も内装も当時のままの様です。
最も驚いたのは、作中に登場する若女将のモデルとなった女性が現在も帳場に立ち、館内を案内していただけます。つげ氏との思い出話も伺うことができ、余りの感動に卒倒しそうになりました。
湯も沿岸沿いらしく濃厚な塩化物泉。100%かけ流しです。さすがつげ氏、外しません。
つげファンでなくてもこの宿は感動することでしょう。作中に登場する「長八の間」は、見学も出来ます。少々値段が上がりますが宿泊も可能です。食事も西伊豆の魚、やはり美味です。
1泊2食付:11,000円~
まとめ
どちらの宿も白眉の名湯ですが、私が今湯治をしたいのは「松之山温泉 民宿みよしや」です。今年1泊のみの滞在でしたが、素晴らしい湯でした。雪が解けた頃、ゆっくりと1週間ほど湯治をしてみたいです。
来年は空路で旅が出来るでしょうか。少し気が早いですが、北の大地北海道、山陰山陽エリアで湯治をしてみたいです。
令和3年12月16日
<東山温泉 新滝>
<宮下温泉 ふるさと荘>
<横向温泉 中の湯>
<片品温泉 旅館みよしの>
<松の湯 松渓館>
<角間温泉 越後屋旅館>
<松之山温泉 民宿みよしや>
<逆巻温泉 河津屋>
<松崎温泉 長八の宿 山光荘>