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同僚と、湯治に行く③【超絶景五色沼~釣堀へ 現れ始めた湯治の効果】

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 ミシュラン・グリーンガイド一つ星認定され、「神秘の湖沼」とも呼ばれる五色沼。噂には聞いていたが、これほどまでに美しいとは。
 
 無数の沢を横目に、なだらかな緑道を進む。恐れていたほどの傾斜はなく、何とか歩けそうだ。次々と姿を現す小沼群、どういうメカニズムなのか全て色が違う。


私 「どうやったらこんな色になるんだ?」
H 「凄いですね、これ」

私 「ここが一番綺麗だな」
H 「うわっ、ここも凄いですよ」


 そんなことをずっと話ながら、行軍は進む。時折ペットボトルを取り出し水分を補給する、飲んでいるのは元湯源泉。何故か浴場で飲むときは無臭だが、ペットボトルに給水し時間が経過すると硫黄臭がする。


 この日は少し雲が出ていたが、絶景を前に深く呼吸をすると暫し激痛を忘れる。グリーンやブルーに反射する湖面、形も全て違うためいくつ見ても飽きがこない。スマホをしまっては取り出し、何度もシャッターを切る。
 

 約100分歩いたか、かなりのスローペースにHは合わせてくれた。何とか4キロを完歩。だが、流石に脚にはダメージを負った。大腿部が熱を持ち、暫し車を運転すると完全に足が棒になってしまった。

 
 「早く、元湯源泉へ、」


 14時と同時に共同浴場へダイブ。この日も1時間、キッチリと源泉を効かせる。下肢の熱は次第に引いていった。過去に長期滞在している磐梯熱海、元湯にはこれまで30回以上来ているが、最も効いた瞬間だった。



 普段の湯治中は平穏だけを求め、私は観光らしきことを一切しない。源泉に神経を研ぎ澄ませ、温泉地からは出ないことも。今回は2人旅とあって、割とアクティブに攻めた。


 3日目に向かった先は、「渓流釣り堀 ぼん天」。
ちょうど安達太良山をぐるりと半周し北側へと回る。その途中、見覚えのある寂れた温泉街を通過した。以前訪れた「中ノ沢温泉」だ。


 まだ私にとって温泉は趣味であった5年前、夏季休暇で福島を一周した際に宿泊で訪れた地。私の肌には少々痺れる白濁強酸性泉、温湯を好む私にとっては少々ハードな源泉だった。

 思わぬ形で再見した鄙び系温泉街。当時を思い出し後輩Hを置き去りに一人高揚していた。

 そこから更に10分、釣堀に到着。釣った魚は塩焼き、刺身、唐揚げの3様に調理してもらい、そのまま買い取り昼食になる。

 ニジマスとイワナ、ヤマメの3種が放たれた渓流釣り堀には、地下から湧き出た天然水が張られていた。透明度の高い天然水、型の良い魚影が無数に浮ぶ。

 ヤマメはこの時期産卵期のため、いくら餌を落としても釣れないという。 難易度が高いというイワナをHが狙い、私はイージーなニジマスを早々に釣り上げた。2匹目に当てたのは40㎝クラスのビッグバイト。ニジマスはその後も爆釣が続き、途中からイワナに狙いを定める。
 
 結局2時間の追ったイワナは最後まで上がらず、生簀ですくってもらい刺身でいただく。天然水育ちだからだろうか、全く臭みがない。結局2人で8匹分をフルコースで平らげた。


 少々生臭い手を洗いに、また湯元元湯へ。
3日目を迎えたこの日の湯上り、後輩Hの背中を見てあることに気付く。


私 「背中白くなっているよ」
H 「そうですか??確かに調子は良いです」
私 「最初の写真撮っておけばよかった、本当に効くもんだな」
H 「ここには多分、これからも一人で来ると思います」


 ここに着いた時、彼の背中は赤かった。日に日に肌艶が良くなるH。普段は痒みで眠れないというが、概ね快眠が取れているという。


 「これ見てみな」

 私が指さしたのは浴室の入口にかけられている温泉分析書。どこの温泉利用の施設にも掲示が義務付けられており、大まかな源泉の特徴はこの表に示されている。 

 湯元元湯には3本の源泉が投入されているため、3枚の分析書がある。湯の成分の濃さを表す「溶存物質総計」。何れの源泉も基準量に達しておらず、成分が薄い「単純温泉」に分類される。


 成分が濃いほど効きそうなものだが、彼が肌に合うと言った「駒の湯山荘」と「大塚温泉」も、極めて成分は薄い。 

 
私 「この源泉、何も入ってないんだよね」
H 「本当ですね」
私 「なんで効くんだろうな?不思議だな」(これだから、湯巡りはやめられないんだよ)
 


 Hは普段痒みが出るためアルコールを口にしない。だがこの日からは糖質オフの缶ビールを口にするようになった。私も多飲はしないが、「さらりとした梅酒」を元湯源泉で割る。

 磐梯熱海駅前には「縁」という魚屋があり、マグロやカツオを購入し酒のあてに。

 23時を過ぎると消灯。不眠症の私は暫く眠れず、彼が寝たのを確認し、早朝に目が覚めると朝風呂へ行く。部屋へ戻ると彼はもぞもぞと起きる。

 普段は頭がキレすぎるところがあるが、寝ている時は可愛いものだ。



                           令和3年9月17日


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