続・温泉地で出会った美味しい湧水 10選
<前回はこちら>
「長湯して 水の旨さも 山の宿」
群馬県の温泉宿で、脱衣所や待合室などに掲げられている標語です。
温泉利用許可申請をした施設において、マナーアップ啓発資料として張り出されています(※著作権は群馬県に帰属)。
暑い日が続いていますね。身の危険を感じるほどです。
水分補給はマメに。どうせなら美味しい水を、安くいただきたいものです。
どうもボトルウォーターに課金するのは勿体ない気がしまして…
私は旅に出る時は愛車にペットボトルやポリタンクを積載し、近くの湧水処で給水してから宿に向かいます。長くこの習慣を続けてきました。湯治の際は飲用だけでなく、米を炊く際など生活水としても使用します。
一方で湧水は水道法の適用外になるため、明確な管理者がおらず水質検査がされていない場合がほとんど。お腹を下した場合は自己責任です。私は幸いあたったことはなく、これからも湧水や伏流水はブーメラン覚悟でいただくつもりです。何故なら旨いからです。
前回に続き、温泉地で出会った美味しい水を10選ご紹介します。
この時期車に積んでいるとたちまち温水になってしまいます。くれぐれも保管にはお気をつけください。
①恐山温泉 「恐山冷水」(青森)
日本三大霊場とも言われる恐山。むつ市街から本山を目指す途中に顕現します。霊も飲みに来ると伝えられている湧水処。緊張感漂う飲水です。
地蔵菩薩が見守る中、合掌瞑目してから手で掬って喉に流しました。
まだプレ開山期間中の4月末、山巓には残雪があるころです。清冽で冷たく、そして神々しい天然水が食道へと抜けていきます。
宿業から逃れられるような気がしました。
②乳頭温泉郷 「茶立ての清水」(秋田)
日本を代表する秘湯温泉地「乳頭温泉郷」への道中、田沢湖方面から少し八幡平へオーバーランするとこちらが見えてきます。国道沿いで駐車場も広く、多くの観光客が訪れていました。
車の寄せ付けは難しく、20ℓポリタンクを運ぶのは結構大変でした。
読んで字の如くですが、昔殿様がこの水で茶を立てて飲んでいたそうです。コーヒーにしてもお茶にしても、やはり水道水は鉄錆の匂いが混じったりするものです。湧水で煎れると素材の味が活きますね。
③秋ノ宮温泉 「目覚めの清水」(秋田)
宮城県の鳴子方面からトンネルを抜け秋田県湯沢に入ると、交差点の一角に境内社があります。透徹で冷えた水が眠気や疲れを取り払うことから「目覚めの水」だそうです。確かに目の覚めるようなキレがありました。
現在は転じて「清水を飲み、清新な気持ちで旅を無事に続けてほしい」と、交通安全の竜神社が建てられています。
採水後は湯治仲間と鳴子温泉へ戻って行きました。無事故で戻れたのはここの水を飲んだお陰かも知れません。
④鳴子温泉郷 「風早峠の水」(宮城)
宮城県大和町の街外れ、緑陰の峠の中にあります。
4月の中旬、一瞬でしたが吹雪いていました。鳴子温泉に湯治に行く道中に寄ったのですが、これほど素晴らしい湧水地とは存外でした。
5本の口から地を叩くように放たれる清水。味も卓絶ですが、何といってもここは道路付けが100点です。バックでギリギリまでピンそばに寄せると、何とノーステップでポリタンが荷台に積載できるのです。
10年近くをかけて様々な湧水処を見て参りましたが、ここが汲み易さはナンバーワンだと思います。
⑤中ノ沢・沼尻温泉 「八幡清水」(福島)
安達太良山麓、中ノ沢温泉街の南に「八幡清水」はあります。注目いただきたいのは画像左から2番目の放水口。扇状にスプラッシュしているのが分かります。直径10センチ近くあるでしょうか。
ポリタンの口を当てたのですが、肘から下がもぎ取られるほど旺然と噴き出ています。一瞬で満タンになってくれるのは有難いのですが、代償として靴がびしょびしょになります。
⑥湯野上温泉 「高倉山湧水」(福島)
会津湯野上温泉と言えば、「大内宿」と「塔のへつり」をセットで回る方も多いかと存じます。酷烈な暑さの折、是非そのコースに「高倉山湧水」を入れてみてはいかがでしょうか。
中々の隘路を登っていくのですが、ちゃんとした県道です。屋根ありで管理者もいるようです。車寄せスペースもあり、歩いて10mくらいの距離まで付けられます。重たいですが、美味しいので我慢我慢。
⑦塩原温泉郷 「長寿の水」(栃木)
今回ご紹介している中で最も到着困難なのがこちら。
塩原温泉街からグネグネと山を狭路を進みます。「場所合ってるか?」と不安になりますが、塩原温泉方面から「山の駅 たかはら」を目指すと確実に到着します。
岸壁を舐めるように沢水が伝い、一帯は非常に涼やかです。
ご紹介している中でも景観もこちらが最良です。ですが恐らく一年を通し、通行可能な時期は夏場の数ヶ月と思われます。必ず行政のHPで確認してから行くようにしましょう。
⑧板室温泉 「木の俣の湧水」(栃木)
塩原温泉郷と那須湯本温泉の中間に位置する板室温泉。その湯治効果は素晴らしく度々訪れています。滞在中に飲用しているのがこちら「木の俣の湧水」。
最初に訪れてから10年近く経ちますが、年々ワイルド化しています。
以前はもっと管理されている感がありました。こちらはお腹が弱い方は煮沸した方が良いかもしれません。
湧水って大雨の後は、やはり泥が混じったりするのでしょうか。
⑨川場温泉 「名水の里天神」(群馬)
群馬の湧水と言えば片品湧水群が筆頭ですが、隣接の川場村にも清麗な湧水処があります。沼田インターから8分、老神温泉街から20分の「名水の里天神」。何度か行きましたがタイミングが悪かったのかいつも行列に並びました。
青色のバルブを90度捻ると湧水が落ちます。ちょろちょろですが非常に美味しい水です。この辺りは美味しい米もできるようで、良い水が育てているのでしょう。
隣にはこちらの湧水を使用したお蕎麦屋さん「滝の沢茶屋」があります。さぞ美味しいかと想念されますが、昼頃行くと並んでいるためにまだ入ったことはありません。
⑩布引観音・中棚温泉 「弁天の清水」(長野)
小諸城からほど近く、何の変哲もない住宅街を進んでいくとオアシスを発見。3台分の駐車場、常に車が入れ替わります。引きのショットを撮りたかったのですが、車と人が写り込んでしまい断念しました。
池に溜まった天然水が溝渠に落ち川となります。美しい景物です。いつまでも見ていたいのですが、待っている人がいるのですぐに立ち去りました。
こちらを4日間の湯治期間中の飲水として使用していました。温泉と美味し湧水の生活、身体が少し絞れたような気がしました。
おわりに
以上10選でした。ほとんどが冬期通行止めになる道です。行く前に必ず交通情報を確認してから行きましょう。
繰り返しなりますが生水です。出し惜しみせずにコーヒーや炊飯、飲用にドンドン使った方が賢明です。コックやゴムパッキンも洗浄も忘れずに。
涼しい場所に保管するのは当然ですが、酷暑の折ペットボトルに移して冷蔵保管ですかね。いやむしろ、カチカチに凍らせて出先で半氷になっているくらいがベストでしょうか。
記事を書いていたら、半割竹を持参して流しそうめんをやってみたくなりました。怒られると思うので、絶対にやりませんが。
今年の夏も湧水で乗り切りたいと思います。
令和4年7月 記
<①恐山冷水>
<③目覚めの清水>
<④風早峠の水>
<⑩布引観音・中棚温泉>