好きな「講談社文庫」の小説3冊
はじめに:講談社文庫を選んだ経緯
「好きな本」を出版社ごとに考えてみよう、という試みの第二弾です。
(前回の記事はこちら↓)
本当は「河出文庫の本」にしようと思っていました。
しかし河出文庫の背表紙って、遠目で見ると講談社文庫の背表紙に似てるんですね。
自分の本棚を眺めては「これは講談社文庫か」→「これも講談社文庫だ」→「これも講談社文庫じゃん!」と戸惑う事になった結果「もう講談社文庫にしよう」と決めた次第です。そんな日もあります。
講談社文庫から沢山の本を出している作家として森博嗣さんと村上春樹さんも挙げられますが、このお二方は特別な存在ゆえ選びきれなかったので敢えて入れていません。
というわけで3冊を選んでみたら、小説ばかりになりました。
1.『チルドレン』伊坂幸太郎
本作に登場する家裁調査官の”陣内”は、伊坂さんの作品の中でも突出して好きな登場人物です。必ずしも賛同出来る事ばかりじゃないけどそれでも、いつだって自分を貫く破天荒なトリックスター。
そんな陣内を中心に繰り広げられる、爽快な連作短編集です。
「大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」は、生き方における美しさを考える上での、ひとつの到達点だとも思っています。いつも心に陣内を。
2.『浄土』町田康
7編収録の短編集ですが「浄土」というタイトルの作品はありません。読んだ人だけが「この収録作品たちにこの書名……」という感慨を得られるところまで含めてワンセットの一冊だと思ってます。
愉快痛快シュールな文体で描かれる、逃げ惑う戸惑いや憤りや本音や崩壊やビバカッパの混沌に思いっきり呑まれちゃってください。それらは紛れもなく町田康の小説ならではの読書体験です。
3.『十七八より』乗代雄介
乗代雄介さん、もうちょっとしたら小学館文庫から本が出るけど現時点では文庫で読める作品はすべて講談社文庫でして。本作は、第58回群像新人賞受賞作でもあるデビュー作です。
自らを「あの少女」と振り返る述懐は、「わかる」と「わからない」の間に広がる茫漠たるグラデーションの海に身体を浮かべてふよふよ漂う読み心地。でも小説を読む愉しみって何もかもをスパパパパーンと理解するだけじゃないし、それって生きていく中で直面する問いにも通ずるものがあるんですよ。
初期衝動も含めて、ここにしかない景色を堪能できる作品だと思う。
おまけ:過去にご紹介した名作
森博嗣さんの作品は敢えて入れなかった、と冒頭で書きましたが…。
選ぶなら迷わず『喜嶋先生の静かな世界』という長編小説にします。
でもこの本、過去に「生涯かけて繰り返し読みたい」として紹介しているんです。これ以上費やす言葉もないぐらい語っているので、よろしければこちらもどうぞ。
今回は小説ばかりになってしまったので、明日は小説以外の本の話もするつもりです。
お読みいただき、ありがとうございました。