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Photo by
atelierminori
すこしずつ、春支度。
桜は、見上げるものとばかり
思っていました。
あら、こんな桜が、と思ったのは
出先で立ち寄った植物店でのことです。
青空の下に並べられた
シクラメンやパンジーの苗、
寄せ植えのカラフルな花々、
元気なチューリップの鉢植えを
眺め見ているなかでそれを見つけました。
両の手のひらに収まるほどの
ころんとまるい小鉢に
背丈15センチほどのちいさな木が
根を張っています。
若い枝に、まだ花はなく
それでも、やや赤みを帯びた蕾を
枝先でふっくらさせて
季節の変わり目を待ちわびているようです。
横に添えられているポップに目をやると
「桜盆栽、八重桜」との文字。
桜と言えば、ふとい幹と、
桃色の雲を思わせる花の咲きぶり。
そんな印象がつよいものですから、
私は、その文字を見てはじめて
この木は桜なのだと認識しました。
それにしても
通常の大きさより小さいというだけで、
どうしてこんなに
愛らしく映るのでしょうか。
つい、育てたい欲求がくすぐられます。
それに「自分だけの桜」というのも、
ぜいたくに思えて
その桜をひと鉢、買うことにしました。
家に着き、桜盆栽について
あれこれと調べてみたところ、
出回っている桜盆栽は
桜の種類も豊富であることを知りました。
しだれ桜は楚々として
牡丹桜は華があり、寒桜は可憐です。
どの桜の表情も本当に素敵。
盆栽だからこそ、
花の一輪、枝の一本に目が届き
その個性を豊かに感じるのかも知れません。
私の目下の楽しみと言えば
日ごとに ほろこんでゆく蕾を
見守ることです。
最初の一輪はいつ咲くだろう。
その一輪はどんなに綺麗な色だろう。
小さな桜を家に迎えて
私の胸にはもう、
春が灯っています。
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