いつものお散歩こそ、ひと工夫。
昼下がりの喫茶店です。
近くの席には、40歳くらいの女性と
そのお母さまと思われる方が、おふたりで
座っていらっしゃいます。
ショートケーキと栗のタルトを
それぞれに楽しみつつ、
どうやら、親子デートのようです。
「最近、風が気持ちいいから、
朝のうちは、よく歩いているの。」
そう話すお母さまの声は、
どこか、弾んでいます。
娘さんが聞きます。
「気候がちょうど良いものね。
散歩のコースは決まっているの?」
「ううん。いつも気まぐれよ。
というのも、わたしの散歩は
最初に、ちょっとバスに乗るからね。
バスに乗って、
自分が普段生活しているあたりから
離れてみるのよ。
それで、自分がまだあんまり知らない場所を
散策して
このあたりで暮らしてみたら
こんなふうかな、、って想像するのが
たのしいの。」
「お母さん、なんだか
前より若くなったみたい。」
給仕のひとがやってきて
ふたりのテーブルにあたたかい紅茶が
サーブされました。
窓の向こうでは、
紅葉をはじめたプラタナスの木が、
空の青ときれいな対比を見せています。
知らない町を
じぶんの足で歩いて
じぶんの目で見たものを通して
そこにある暮らしに
そっと心を馳せる。
お母さまの、朗らかなオーラの秘訣は
きっと、そんなひと時にあるのでしょう。
自分のことばかり考えず
外へ、外へと目を向ける習慣が
健やかな心の下地をつくるのですね。
私も、知らない町を
歩いてみたくなりました。
文庫本を閉じ、
残りのカフェラテを飲みきって
私は、お店をあとにしました。
いいなと思ったら応援しよう!
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿