持ち込み中古フレームへの載せ替えもお任せ下さい◎2020年05月20日更新
広島県広島市にある『動く自転車屋』『自転車の便利屋』サイクルサービストグトのnoteをご覧いただきありがとうございます。
好きな音楽ジャンルはいろいろありますが、特に『メロディック・スピード・メタル』(通称『メロスピ』)が大好きな快適長持ち系自転車安全整備士のノーリー(店長)です。
1988年にリリースされたHELLOWEENのアルバム『Keeper of the Seven Keys, Pt. 2』に収録されている楽曲『March Of Time』が、今のところ私のテーマソングになりつつあります。
とは言え、私ではこんな声を出せるはずもなく、歌えるわけではありません。
やはり何事もプロはスゴいと思います。
感化され過ぎて今回のブログは〇〇章なんて書いちゃっていますが、歌詞もなかなか良いと思うので、興味がある方はぜひ聴いてみて下さい。
おそらくこれが所属レーベル公式のものですが、違ったり不都合があったりしたら消します。
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当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。
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■序章 まさかの同じ車種!?
今回のご依頼内容は、今お使いの【TREK】(トレック)EMONDA SL6(2021年式)から中古で手に入れた【TREK】(トレック)EMONDA SLR(2021年)フレームへのパーツ移植です。
どちらもレースでの使用を想定されていて、同じように見えそうですが、『スーパーライト』を意味する『SL』はサイクリングから市民レースまで幅広い層をターゲットにしたミドルグレードバイク(それでもなかなか良いやつ)であるのに対し、『スーパーライトレーシング』を意味する『SLR』はその名の通りレースシーンに焦点を当てたハイパフォーマンスバイク(つまりトレックのハイエンドバイク)となります。
今回のSLRはすでに別のユーザーさんが使っていたため、フレームの状態については組んで乗ってみないと何とも言えませんが、少なくともハイエンドフレームを運用できるという事実は変わりません。
わかりやすく言うと『所有欲を満たす』ということでしょうか。
趣味の世界ですから、こういうことがあってもいいんです。
2024年04月時点で、これまでも当店では【TREK】の取り扱いはありません。
ただし、【TREK】車の作業実績はたくさんあるので、当店にて作業可能です。
元の車体であるEMONDA SL6も他店様での購入品ですが、当店では他店様での購入品や個人売買等で手に入れた車体でも作業を承っております。
それではお預かり時点での状態を簡単にチェックしていきましょう。
今回登場するのは同じEMONDA(エモンダ)シリーズなので、以下『SL6』と『SLR』で表記します。
↑の写真で左側がこれまで運用してきたSL6、右側が中古で手に入れたSLRです。
色も似ていますね。
今回のユーザーさんのSL6は車体としてきちんと使われてきていますが、非常に大切にされてきたことが伺えます。
マウント類は【TREK】独自のシステムです。
スッキリとしていますね。
コラムはカットせず、ステムとスペーサーを入れ替えて運用されました。
ある程度、ユーザーさんにとってのポジションを出せているのかもしれません。
【SUPACAZ】(スパカズ)Super Sticky Kush Starfade Tapeは当店でも売れ筋のバーテープです。
巻き直すため、バーテープはここでサヨナラとなります。
ボトルケージも含め、移植できるものは全部移植予定です。
リアブレーキ台座はSL6もSLRも25mmどうしでした。
フラットマウント規格はブレーキ本体固定用ボルトの長さも無視できません。
エモンダはシートポストが少々特殊です。
ライドイベント参加直後とのことで少し汚れていますが、このスプロケットの状態を見るとユーザーさんが日ごろからメンテナンスをしっかりやってきたことが伝わってきます。
チェーンは【SUMC】SX11SLレインボーです。
これまた当店でも人気があります。
この頃のエモンダには専用のチェーン脱落防止デバイスが付いています。
絶対に必要なものとまでは言い切れませんが、あると安心なのは間違いありません。
フロントディレイラー(以下『FD』)の取り付けにも専用パーツをかましています。
SL6はこれでお別れとなりますが、全体的に状態は良い感じでした。
後ほど洗浄&各部のチェックを行います。
作業に先立ちまして、次はSLRです。
同じサイズ、似たようなカラーリングですが、フレームのカーボン素材のグレードが違います。
カーボンフレームとしてのヘタり具合は現時点では判断できません。
実際に乗ってみないと何とも言えませんが、『美品』と言える程度には外観上はキレイです。
使用感はありますが、前オーナーさんも大切に乗ってきたのでしょう。
ダウンチューブのボトルケージ台座付近には擦れ痕がありますが、カーボン素地ともヴィジュアル的な相性は良いのではないでしょうか。
他には明らかに目立つような大きいキズはありません。
ブランドロゴが少し汚れていて、これをサイクルサービストグトの洗車で落とせるかどうかが、この車体を仕上げていく過程でのひとつの分岐点となるでしょう。
ゴゴゴゴゴゴゴ…。
新フレームとなるSLRはすでにほぼ分解されていますが、ここからさらに分解・洗浄・下処理をしていきます。
■第1章 新フレームセットの洗浄
さて、私も自転車のプロ・メカニックとして、マイケル・キスクさんの仕事ぶりに負けないような仕事をしなければなりません。
事前にしっかりと打ち合わせをし、予算の範囲内でコストをかける部分とそうでない部分を大まかに決めました。
途中でも変更が生じるかもしれませんが、やはりユーザーさんの思い描く理想をできるだけカタチにしたいものです。
こういう対話を重視するのもサイクルサービストグトの強みだと自負しています。
ということで、まずは今回の新フレームであるSLRの洗浄と下処理です。
当店の通常の洗車メニューレベルで大まかな汚れは落ちました。
全ての汚れを完全に落とせるとは言い切れませんが、それでも他店様で落とせなかった汚れを落とせることも多く、おかげさまで当店の洗車メニューはご好評いただいています。
ただし、今回のご依頼内容だとこのままで終わるわけにはいきません。
フロントフォークを抜いてみると、古いグリスがコンニチハ!
チェーン落下防止デバイスを外してみると汚れが溜まっていました。
ヘッドベアリングを受ける部分も古いグリスが残っていたので、これを除去しなければなりません。
洗浄剤をいくつか使い分けながら、何度も繰り返して洗います。
一度にまとめて短時間で洗浄してもなかなか汚れが落ちません。
根気強く洗浄剤も水も大量に費やし、時間をかけるからこそ落とせる汚れもあるわけです。
当店の洗車は基本、1日お預かりだという理由が伝わるかと思います。
擦れ跡は汚れではありませんが、これはコーティング次第で目立たなくすることはできそうです。
目立つ汚れは見当たりません。
洗浄をすることで、汚れで隠れていたキズが見えてくることはあります。
ロゴの汚れも落とせました。
トップチューブ、シートチューブ、シートステーの交点も意外と汚れが残っていましたが、これでかなりスッキリしました。
黒くて気付きにくいですが、汚れによって目立ちにくくなっていた小傷が出てきました。
これも当店のコーティングで目立たなくできそうです。
リアエンドパーツ(リアディレイラーハンガー)も無事に外せたので、ハブエンドがはまる部分も徹底的に洗浄します。
ヘッドチューブの上部にステアリングストッパーがセットされる箇所があり、ここも汚れが溜まっていました。
ご覧の通り、汚れは無くなりましたが元々の塗装がイマイチだったのか、塗膜に気泡が混じっているような状態です。
パーツをセットすれば見えなくなる部分であり、汚れは落ちているので問題はありません。
SL6からSLRへ。
カーボン製のフレームどうしでも、カーボン素材のグレードの違いが表示されています。
フロントフォークのベアリング接触部分もこんなにキレイになりました。
メーカーさんや他店様による作業(仕事)か、他のユーザーさんによる作業かはわかりませんが、コラムの上端の処理が少々甘い気がします。
何か急ぎの事情があって丁寧に処理できなかったのかもしれません。
今回はコラムカットのご注文も承っているので、後ほどカットして断面もキッチリ仕上げさせていただきます。
■第2章 ハドラスコーティング施工
当店も自転車用ハドラスコーティングを導入しました。
結論から言うと、新車購入時や車体オーバーホールのタイミングにはセットでやった方がいいです。
間違いありません。
ちなみにハドラスコーティング施工することを『ハドる』と言います。
フレームを徹底洗浄したことで、汚れにより隠れていた傷が見えました。
ハドった結果↓
『小傷?ナニソレ?』状態になりました。
薄いキズなら目立たなくなります。
ダウンチューブのケージ台座付近にガッツリ付いた擦れ跡は…↓
完全には消えませんでしたが、目立ちにくくなりました。
車体色がシースルー系の極薄塗装なので、カーボン素地が透けて見えるようなカラーリングですが…
それが損なわれるような外観上の変化はありません。
マットカラーの乾いた感じの質感が…
しっとりとした質感に変わるだけです。
効果を検証するため、左右のシートステーに同時に霧吹きで水滴をふ吹きかけて簡易的に実験してみました。
ハドラスコーティングは第1層目の『RED』液剤と、第2層目の『BLUE』液剤を使って完成させます。
霧吹きで水滴をかけ、シートチューブを掴んでフレームを少し振ってみました。
すると、第2層目用のBLUE液剤まで使って完成させた右側のシートステーには水滴がほとんど残りませんでした。
コーティングの膜は非常に薄いですが、それぞれの目的に最適化した液剤を2層に重ねることで、防汚効果だけでなく施工面にキズが付きにくくなります。
日光の下で見てもムラの無い美しい仕上がりです。
自転車用のハドラスコーティグですが、ヘルメットやアイウェア、ホイールやその他小物まで当店にて施工可能です。
ハドりたい物がありましたら、当店へお気軽にご相談下さいませ。
この後、フロントフォークや他のパーツにも施工していきます。
■第3章 ポジションチェック&打ち合わせ
当店ではできるだけユーザーさんが後悔せずに済むよう、細かくご要望を伺っています。
こちらからもいろいろと提案しますが、最低限必要な事でなければ押しつけるようなことはしません。
ユーザーさんと共に最高の1台を目指します。
今回はユーザーさんにとっての新フレーム(SLR)と旧フレーム(SL6)のサイズとジオメトリーが同じだったため、旧フレーム(SL6)でポジションチェックをしました。
車種や用途によってはわずか数ミリの違いが大きな違和感を生むことにもなります。
ユーザーさんの経験値増加とともにポジションが変わる(変えることを推奨する)場合も多いです。
ステムの長さや角度をどうするか?
固定位置の高さはどうするか?
そして、それらは今のうちに完全に決めてしまうのか?
それとも後日、少しずつ変えていく予定なのか?
ユーザーさんのプランや想いをなるべく尊重し、ベストな提案をしています。
細かいことですが、当店なら車体の仕上げについても細かく対応可能です。
例えば…
バーテープの巻き終わりをどのあたりに持ってくるか?
バルブとタイヤのロゴ(ラベル)をどの位置に合わせるか?
…その他諸々、ユーザーさんを惚れさせる見た目も『車体の性能のひとつ』だと考えているからです。
■第4章 分解チェック
外からでは見えない部分が消耗・劣化していることも多々あります。
分解をしながら再利用できるものとそうでないものを見極め、ユーザーさんに報告・提案をして、ユーザーさんの予算とすり合わせることも大切です。
分解チェックしてみないと始まりません。
というわけでどんどん外していきましょう。
ボトルケージは製品によって適合するボルト(の頭)が異なります。
ペダルが固着気味でしたが、無事に外せて良かったです。
左クランクを抜いたらBBが見え、汚れが蓄積しているのがわかります。
使うグリスの種類や量、自転車の使用環境や頻度によって異なりますが、部品を快適に長持ちさせたい場合は春夏秋冬の各シーズンに1回はここまで外してメンテナンスするといいでしょう。
チェーンにも汚れが蓄積しています。
今回は再利用できそうなので、要洗浄です。
右クランクとチェーンリングのセットを外してみました。
徹底洗浄するため完全分解します。
BBはひとまず古いグリスを拭き取った状態です。
オレンジ色のダストシールのフチがわずかに破れかけていますが、ヒアリングした使用用途なら問題無いと判断しました。
動作はすでに確認していて、動きには特に問題が無かったのでリアディレイラー(以下、『RD』)も再利用予定です。
FDもそれなりに汚れています。
部分的に磨きが必要になるかもしれませんが、FDも再利用はできそうです。
ディスクブレーキの場合、パッドに油分は厳禁です。
瞬間的には解決できたように思えても、結局また不快な異音を発生させます。
受付時には、すでにフロントのパッドが油分を吸着していたため、フロントは要交換です。
後の作業で油分が飛び散っても問題無いよう、無事なパッドは専用のケースに入れて隔離します。
小さいパーツも多いので、それらも無くさないようにきちんとケースにまとめておかなければりません。
ブレーキホースはこの時点では再利用の可否はわかりませんが、インサートとオリーブ再利用できないので、別途必要になります。
ブレーキ本体は洗浄して再利用します。
ブレーキローターはほとんどすり減っていませんでした。
こちらも洗浄して再利用します。
スプロケットは汚れていますが、歯の状態は使えないというレベルではありません。
できるだけ洗浄して再利用します。
ヘッドパーツと各種専用部品です。
フレームセットとして売却をする場合、これらはセットになるので後ほど洗浄します。
このように自転車は、普段メンテナンスをしていてもなかなか手が届かない部分も多いです。
■第5章 使用部品の洗浄
パッと見大丈夫そうなパーツも、洗浄していくことで問題が見えてくることもあります。
車輪もしっかり洗浄しましょう。
ブレーキダストもしつこい汚れのうちのひとつです。
ブレーキローター(ブレーキディスク)はとにかく油分厳禁!
クランクセットから外した状態でチェーンリングをしっかり洗浄します。
歯を素手で触っても手が汚れないレベルになれば合格です。
RDもFDもしっかり洗浄します。
ボトルケージもしっかり洗浄しておきましょう。
専用パーツ等も1点1点丁寧に洗います。
ヘッドベアリング等洗浄はこれで終わりではありません。
スプロケットはここまでキレイになりました。
チェーンリングも同様に、素手で触っても手に汚れが付きません。
チェーンリング固定用ボルトのネジ部分に固着防止目的のグリスを使います。
部品交換が必要になった時、できるだけ必要最低限の支出で済むようにしたいものです。
そのグリスをアウターチェーンリングの雌ねじに移すため、一旦締め込んでいきます。
クランクはリコール対象型番のFC-R8000ですが、製造年月を確認してみると対象外でした。
それでも念のため該当部分をしっかりチェックし、問題無しと判断できたので元に戻します。
左クランクも同様です。
こういう情報を持っていること、そして対処方法等を知っていることもプロならでは。
左クランクも入念なチェックを経て無事だったため、元に戻します。
BBは古いグリスとともに砂や小石等を除去しておきました。
チェーンは本来の輝きを取り戻しています。
専用パーツも全て分解洗浄済みです。
特殊なシートポストも分解洗浄して下処理を行います。
どのパーツもキレイになりました。
各セクション毎にパーツを分類し、無くさないようにまとめています。
■第6章 さらば、SL6
今回のご依頼ではユーザーさんにとっては旧フレームとなるSL6にも予算を使っています。
SL6の専用パーツを外しただけの状態だと、普段は洗浄できない部分には汚れが蓄積しています。
普段からしっかりメンテナンスをしていても、物理的に届かない部分が多く、こういう時もプロの出番です。
フロントフォークとヘッドベアリングが当たる部分もしっかり洗浄しておきましょう。
超音波診断まではしていませんが、ネイルタッピングによる打音検査では異常が見当たりませんでした。
洗浄する価値アリということで、フレームもフォークもしっかり洗います。
ピッカピカです。
フロントフォークもご覧の通り!
各種専用部品もキレイになりました。
ヘッドベアリングはSLR同様にシールを丁寧にめくり、部分オーバーホールをしています。
【SHIMANO】プレミアムグリスを溢れるほど使い、耐久性を上げています。
今回のユーザーさんはSLR(上位グレード)への乗り換えということでSL6が不要になったわけですが、SL6に大きな不満は無かったそうです。
不満は無いけど上位グレードがあるなら使ってみたいと思うのは、趣味の世界ではよくある話ではないでしょうか。
ただ、今回のユーザーさんはSL6にも思い入れがあり、手放す前提ですが、次のユーザーさんが気持ちよく使えるようにと、SL6にも予算をかけてここまで作業をご依頼いただきました。
このフレームセットのネクストユーザーさんは本当にラッキーだと思います。
もちろん、手放すための必要書類等は当店でしっかりとサポート済みです。
私としてもこのコ(SL6)にはこれからも良い人生…というか車生(?)を送ってほしいと願っています。
専用部品だと何が何だかわからなくなる可能性があるため、このようにわかりやすく分けておきました。
必要なものを全てまとめています。
フレームから外せる部品を全て外したのは、ネクストユーザーさんがフレームにコーティング等をする際にやりやすくするためです。
ネクストユーザーさんが広島の人なら、当店にてコーティングや組立をご依頼いただく…という未来もあるかもしれません。
もちろん、県外でも大歓迎です。
■第7章 各パーツ下処理
各部品の下処理工程です。
全ては掲載しきれませんが、大まかに当店の仕事をご紹介していきます。
この車種の場合、ヘッドベアリングは基本的に交換することがありません。
なので、長持ちするように入念な下処理を行います。
まずは古いグリスを完全除去。
そして【SHIMANO】プレミアムグリスを溢れるほど注入します。
ベアリングボディーにはサビ防止効果を狙ってグリスで油膜を張ります。
SL6にもやったのでデジャヴですね。
次はフロントフォークのコラムカットです。
特殊な形状のコラムですが、当店なら問題ありません。
第1章の最後に、当店へのお持ち込み時点でのコラムの状態を掲載しました。
一般的には決してダメというわけではありませんが、切れ端からも元のコラム切断面処理の甘さが垣間見えます。
当店なら↑の仕上がりです。
特にカーボンコラムに関しては当店なりのポリシーがあり、切断面に手仕事で処理をしています。
切断面をティッシュペーパーで撫で、そのティッシュペーパーが破れない程の精度に仕上がらないと当店では合格としません。
当店でカーボン製コラムのカットを承る場合、車体をお預かりし、フロントフォークの脱着も含みます。
そのため、オーバーホール時や組立時にまとめてご依頼いただくのがお得です。
そうでないタイミングでも承りますが、車体の仕様(特にハンドルまわりやブレーキ)次第で工賃がことなります。
工賃を知りたい場合は1度実車を見せて下さい。
改めてフロントフォークを洗浄します。
洗浄することで、汚れによって隠れていたキズが見えるようになったりもします。
当店でハドった結果、キズは目立たなくなりました。
プレッシャーアンカー(エキスパンダー)も分解洗浄・下処理をしています。
固着やサビをできるだけ防ぎたいものです。
この車種は向きに気を付けなければなりません。
ヘッドカバーもハドっておきました。
ホイールにもしっかりと下処理をしていきます。
フリーボディーを抜き取ってみると、グリスが劣化していました。
長持ちさせるためには適切なタイミングでオーバーホールをしてあげることが大切です。
一旦、しっかり洗浄しておきました。
改めてグリスを塗布していきます。
部分によってグリスは複数使い分けています。
グリス切れを起こした状態で使い続けると、内部の部品が破損することに繋がり、支出も大きくなりがちです。
できるだけそうならないように、長持ちさせることを意識しながら作業しています。
フリーボディー装着済み。
センター確認中。
振れ取り作業・馴染みだし・センター確認、振れ取り作業・馴染みだし・センター確認を繰り返し、できるだけ精度の高いホイールに仕上げます。
今回はホイールもハドります。
リムはもちろん、スポークやハブもです。
↑左がハドる前、右がハドった後。
写真では違いが伝わりにくいかもしれませんが、マットの感じはちゃんと残るということです。
ホイールの作業が一通り済んだら、タイヤを装着します。
タイヤラベルとバルブの位置関係はすでにユーザーさんと打ち合わせ済みです。
狙ったところにビシッと合わせます。
スプロケットのロックリングにも固着防止のグリスを使っています。
RDも分解洗浄していきます。
下洗いはしたものの、プーリー等の汚れはまだ落ちていません。
どんどん分解していきます。
可能な限り分解し、徹底洗浄が済んだ状態です。
プーリーのベアリングに粘度の低いグリスを使っています。
スプリングやリンク(関節)部分にはサビ防止と潤滑な動きの持続を狙い、適切に注油済みです。
RDもハドっています。
FDの汚れが意外と頑固でした。
できるだけ分解しています。
徹底洗浄からの必要箇所への注油を済ませた状態です。
ちゃんと汚れも落ちましたね。
シートポスト(この場合は『シートマスト』)もハドっています。
各パーツは分解洗浄&下処理済みです。
サドルも洗って乾燥させました。
一旦、仮組状態にしています。
ブレーキ本体も徹底洗浄済みです。
クランクセットもハドります。
↑RED液剤(1層目)からの水拭き工程の様子です。
R8000の純正アウターチェーンリングはクランクとデザインが繋がるようになっているので、アウターチェーンリングもハドりました。
■第8章 組立の様子
ここから本格的に組立工程です。
フロントフォークにブレーキ本体を仮止めしています。
フレーム内を通るシフトアウターケーブル2本とリアブレーキホースに、全て音鳴り防止のスポンジホースを被せています。
スポンジホースが無い場合は仕方が無いし、無くても組めますが、あるなら使ってあげるといいでしょう。
スポンジホースを使うデメリットは多少の重量増加、メリットは振動によってホースやアウターケーブルがフレーム内部で暴れても不快な音が鳴りにくく(走行中のライダーさんには聞こえにくく)なることです。
エモンダSLシリーズは油圧式ディスクブレーキ&電動変速コンポで組むのがオススメです。
しかし、今回は使える部品はできるだけ再利用するため、機械式変速コンポで組みます。
ヘッドパーツの組み付け手順に注意が必要です。
ケーブル類は適切なエントランスを経由して、ついにフレームとフォークが繋がりました。
リアブレーキとホースを接続したところです。
シートマストとサドルを組み付けます。
事前に決めた前後位置や角度・高さに近づけていますが、納車時に微調整するかもしれません。
ブレーキホースが新品になったのでオイルも注入し直します。
もとのオイルは黒ずんでいました。
ブレーキオイルの交換も定期的に必要となる作業です。
車体をあらゆる角度に傾けながらエア抜き作業をしていきます。
それなりに時間がかかる作業です。
ホイールにブレーキローターを取り付ける前に、ロックリングに固着防止処理をしておきます。
センターロックタイプのローターなので、バルブの位置とローターのロゴの位置関係がいい感じになるように取り付けるのがトグト流です。
性能には制動力には関係無いですが、車体をできるだけ美しく・カッコよく組むのは大切なことだと思います。
ブレーキ本体の位置調整も完了です。
RDハンガーのアライメント確認&微調整もします。
中古の車体やフレームセットはこれが狂っている車体も多いため、油断はできません。
この車体は微調整で済みました。
RDを取り付けます。
BBシェルのネジは良好でした。
念のため固着防止の処理をしておきます。
T47規格のBBは適合するツールが複数あるので注意しなければなりません。
BB締め付け時に工具で車体を傷付けないよう、できる限りの対策をしています。
BB自体にも適切な下処理が必要です。
各部品をできるだけ長持ちさせましょう。
クランクセットも組み付け完了です。
ペダルの固着防止も欠かしません。
この車種では、FD固定に専用部品を使います。
規定トルク以下で固定済みです。
シフトインナーワイヤーへ専用グリスを塗布して、滑らかな動きの持続性アップを狙います。
フロントシフトワイヤーを通し終えました。
リアも同様です。
グロメット無しでも組めます。
しかし不快な異音の原因になるので、有るならグロメットを使うべきでしょう。
ディレイラーとシフトインナーケーブルを繋ぎます。
インナーワイヤーの末端処理は当店独自技術の『MEF』で仕上げました。
ボトルケージ固定用ボルトにも下処理をしてあります。
だんだん仕上がってきました。
バーテープをどこまで巻くかは事前に打ち合わせ済みなので、ユーザーさんのご希望の位置まで巻いていきます。
こういう細かいご要望にもお応えできるのも当店ならではです。
バーテープを巻き上げ、化粧テープ(フィニッシングテープ)がしっかりとくっつくようにしています。
最後にチェーンルブを差して…いよいよ完成です!
■第9章 完成ッ!
車体を構成する全ての部品のグレード(ランク)や状態によっても差は出ます。
同じ部品を使っていても、状態が良いものと悪い物とでは違って当然です。
部品をできるだけ再利用しつつ、現状で最高の性能を引き出す整備作業が完了しました。
メインコンポは【SHIMANO】(シマノ)R8000 ULTEGRAです。
当店でも定番となりつつある【GIZA PRODUCTS】(ギザ・プロダクツ)VLT-001 EVA COLOR BARTAPEのブラックを採用しつつ、ハンドルバーエンドプラグは【SUPACAZ】(スパカズ)STAR PLUGZ(Oil Slick)を再利用しました。
【BONTRAGER】のブレンダーシステムでハンドルまわりがスッキリしています。
※サイコンやライト、ベル等は納車時にお持ち込みいただく予定です。
フロントシフトインナーワイヤーの末端は当店独自技術の『MEF』にて仕上げています。
現状では色がレッド(たまにブラックが混じる)しか無いのが難点ですが、衣類や皮膚に優しい末端処理方法です。
あまり目立たないですが、リアシフトインナーワイヤーも同様にし仕上げています。
ブレーキは【SHIMANO】BR-R8070のままです。
油を吸ってしまっていたパッドは新品に交換してあります。
ブレーキローターの固定方式はセンターロックです。
制動力に影響はありませんが、バルブの位置とブレーキローターのロゴの位置にもこだわっています。
バルブとタイヤロゴの位置関係もユーザーさんのご希望に合わせています。
タイヤは交換時が来ていて間もなく交換予定です。
クランクとアウターチェーンリングはハドっています。
RDもハドっておいたので、汚れが付着しにくくなるでしょう。
汚れたとしても容易く汚れを落とせそうです。
カーボン製フレームといっても、使われているカーボン素材が車種によって異なり、それが製品価格の差にも繋がります。
今回は同じ車種のカーボン素材違いです。
ちなみにハンドルの切れ角はここまでとなり、エアロロードバイクらしい仕様です。
輪行する場合はエアロロードバイク向けの輪行袋を用意しましょう。
この車種の場合、ステアリングストッパーを外せばハンドル切れ角90度を実現することも可能です。
■終章
SL6というグレードからSLRという上位グレードへのフレーム交換作業でした。
フレームサイズ・ジオメトリーは同じで、車体色も似ていましたね。
新品ではないため正確な比較はできないかもしれませんが、所有欲を満たすというのも自転車の楽しみ方のひとつだと思います。
中古車や中古フレームセットには様々なリスクが付いてきます。
運が良ければアタリを引けるかもしれませんが、大ハズレと言わざるを得ないものも多く出回っているのが現状です。
当店では中古車体の整備や修理、中古フレームへの部品組み付けも承っていますが、ユーザーさん自身が大損しないためにも、できれば買う前に当店へ一度ご相談下さい。
有料ですが、大ハズレを引かないためのお手伝いをさせていただきます。