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日本語字幕のない映画は観られない…Twitter発「聴覚障害者の困りごと」は社会を変えるきっかけに
2022年冬に話題となったドラマ『Silent』では、Snow Manの目黒蓮さんが中途失聴による聴力障害を持つ青年を演じていました。作品を通じて耳の不自由な人たちが抱える困難に気づいたという人も多かったのではないでしょうか。Twitterでも当事者が実際に日常生活で直面した出来事が語られ、当事者の生活に関する理解が深まるきっかけにつながっています。
ツイートまとめサービスのTogetter(トゥギャッター)がお送りする「3分くらいで分かる週刊Twitterトレンド」、今回はTwitterに投稿されている「聴覚障害者の困りごと」についてのエピソードを紹介します。
「めっちゃ便利だ」コンビニの指差しシートで意思疎通
飲食店やコンビニなどのお店で必ず発生するのが店員さんとのコミュニケーションですが、聴力障害者の方はこの段階で、どうやって店員さんと意思疎通できるか困ることがあるようです。
ろう者である、まみねこ(耳をお空に置いてきた)(@catfoodmami)さんは居酒屋を予約する際、利用者が「全員、耳が聞こえない」ことをあらかじめ伝えておきました。すると、そのお店では注文方法を説明した紙や、スタッフを呼ぶ時に振る旗までも用意されていたそうです。実際に用意されていた旗と紙の画像とともに投稿されたツイートは拡散され、2.4万件ものいいねを獲得しました。
今日は会社のデフと突発で居酒屋へ。
— まみねこ(耳をお空に置いてきた) (@catfoodmami) January 8, 2020
電話リレーサービスで店の予約をした際に「全員耳が聞こえない」とお伝えしたからか、呼ぶ時に振る旗まで作ってくれたらしい…
声で呼べないから店員さんが気付いてくれるまで待つしかないことが多かったけどこの旗があると助かるー!
この気づきはありがたい。 pic.twitter.com/gtcR7l8rIP
居酒屋さんの配慮について「旗は声を出せない人にとっても有効では」「聞こえる人にとっては、聞こえない人の困りごとがわかりにくいからこうして発信してくれるとありがたい」という感想が集まりました。
ちなみに、まみねこさんは有志で日本の映画に字幕をつけることを考えるグループを作り、話し合いをしているそうです。
また、両耳重度感音性難聴である野口敦史( @A_gussan0531)さんはコンビニを訪れた時、店員が何を言っているのか聞き取れなかったため、耳が聞こえにくいことを伝えました。すると店員が指を差したレジカウンターにはレジ袋や電子レンジのイラストとともに「レジ袋購入します」「温めてください」と指示できるシートがありました。イラストを指差しすれば伝わるので「めっちゃ便利だなこれ」と思ったそうです。
さっきローソンで店員さんが何か言ってたんだけど何言ってるのか全然わからなくて「すいません耳が悪いんですよ」って補聴器指さしながら言ったら、これの一番下指さして「あたためますか?」って言ってたの伝わって(これが噂のローソンのか…!)って思いながらめっちゃ便利だなこれってなった#難聴 pic.twitter.com/UHF1PlX3ZG
— 野口 敦史@難聴・料理・アンプティサッカー (@A_gussan0531) October 2, 2022
このシートは2022年8月からローソンが全国の店舗のレジカウンターに設置している「指差しシート」というものです。
指差しシートについては「風邪で声が出ないというときにも助かる」「お客さんや店員さんもストレス減りそう」といった指摘もありました。
このような「困りごと」とそれが解消されたエピソードを読んでいくと、困りごとを解決することで特定の人だけでなく、多くの人の安心につながる可能性が感じられます。
「日本語字幕」がない映画は観られない
映画館で上映されている作品で、日本語字幕が付いているのはほとんどが洋画です。このことが、耳の不自由な人にとって観られる映画の選択肢を狭めてしまっています。さらに、洋画作品に日本人が出演していると字幕はどうなるのかご存知でしょうか。
ユカコ@デフサポ(@defsapo)さんは生まれつき耳が聞こえません。2022年に公開されたブラッド・ピット主演の映画『ブレット・トレイン』を鑑賞する際、字幕版を見れば映画が楽しめると思っていたのですが、日本人俳優が出演するシーンでは日本語字幕がなかったのです。
聞こえない私、洋画なら楽しめるのでワクワクしながら「ブレット・トレイン(字幕版)」を見に行ったのですが、まさかの日本語の部分は日本語なし…。
— ユカコ@デフサポ🇺🇸🇯🇵(難聴児の教育と企業研修とyoutuber) (@defsapo) September 21, 2022
真田広之さんが日本語で話しているところ全て空白で、何を言ってるのか一切わからず…。字幕版を必要としている聴覚障害者がいることを知って欲しい〜
ユカコさんによる「真田広之さんが日本語で話しているところが空白で、何を言っているかわからない…」と伝えたツイートは2万件以上のいいねを獲得しました。
なお、ツイートが投稿された同日に映画の公式アカウントから「劇中の日本語の台詞にも字幕を入れて上映」すると発表がありました。関係者も日本語字幕の大切さを意識していることが伺えます。
【上映に関するお知らせ】
— 映画『ブレット・トレイン』公式アカウント (@BulletTrainJP) September 21, 2022
9月23日(祝・金)より映画『#ブレット・トレイン』字幕版(※)は、劇中の日本語の台詞にも字幕を入れて上映いたします。
※IMAX® / Dolby Atmos / Dolby Cinemaを除く
📽上映中の映画館は
こちらよりご確認ください▼https://t.co/75H3e477MQ pic.twitter.com/KbLE64QsLu
さらにもうひとつ、日本語字幕の重要性がわかるエピソードがあります。
さめぱ(@samepacola)さんには耳に障害がある友人がいます。この友人がNetflixに入会したとたん、アニメをむさぼるように観るようになったと投稿しました。Netflixではアニメにも日本語字幕が付けられていることが大きな理由だそうです。
耳に障害のある友人がそれまで一切アニメ見なかったのに、Netflixに入るなり貪るようにいろいろ見るようになったのをみてつくづく字幕はデフォで入れるべきと思いましたね(ネトフリは独自で日本語字幕を付けてる)。もう円盤の時代でもないので、各配信サービスが前向きに取り組んでくれると良いな。
— さめぱ (@samepacola) December 18, 2019
日本語字幕つきの映像作品が観られることについてTwitterユーザーからは「健聴者であっても聞き取りにくいことがあるから字幕が欲しい」という声もありました。こうした声を受けてか、日本語字幕つき上映を行う映画館も存在します。日本語字幕が配信サービスにも広がると、コンテンツを楽しむ人の数はさらに増えるのではないでしょうか。
まとめ
これらのエピソードから、健聴者が難なく行えていることが当事者にとっては大きな困りごとになっていることがよくわかります。Twitterでの発信が実際に多くの人の理解と暮らしやすさに直結していることは見逃せません。あらゆる立場からの情報発信はよりよい社会を作るヒントにつながっていることが実感できますね。
以上「3分くらいで分かる週刊Twitterトレンド」でした。この連載は毎週月曜日に更新しています。今後もTwitterでバズった、あるいは興味深いトピックを解説していきます、お楽しみに!
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2023/01/16 まみねこさんの活動について追記しました。