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人々とのつながり、大豆農家の課題〜ねごやファームインタビュー2/3〜
認知度の高まり
人の繋がりで上がっていく認知度
――地域では津久井在来の認知度がかなり高まっている感覚なのですよね。その認知の高まった実感、感じた瞬間はどのような時ですか。
◆なんだろう。どういう風に表現したらいいのかな。年々、新聞とか、県内で他の仲間の地域が取り上げられたりするのよ。そういうことで県内にも結構知れ渡ってきて。
当初からなんとか県内に広めようっていうことを考えてたんで、それが徐々に広がっていて。今、そういう意味では各地で作ってもらっていて、それぞれ加工品を作ったり、そういうことに取り組んでるから逆に他の地域の方がそういう面では進んでる部分がある。
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――やっぱり認知が高まったのはこういう体験とかが大きい。
◆あとはね、大きいのは辰巳芳子さん。大豆100粒の。その会から大豆100粒をやりたいから大豆を出してもらえませんかって話が来て。辰巳先生と一緒にできたっていうのが大きいです。
で、事務局をやってる女性がtvk(テレビ神奈川)なのよ。tvkが大豆100粒をやってるんです。そうして大豆やりながらtvkと組んでできるようになったっていうこと。
それとあともう1つ大きいのは、知事(松沢成文前神奈川県知事)が取り組んでくれた。松沢が1期目の終わり頃から付き合い始めて、2期目には完全にこう乗り出してくれて。で、やっぱり知事があちこち行って津久井在来津久井在来っていうもんだから、関係するものたちがやらざるを得なくなってくるわけ。それがすごく大きかった。知事とそれで私仲良くなれたもんだから。
――それで広がっていった。
◆そうです。今は市長が変わって、仲良しだから一生懸命やってくれてる。あとスタッフっていうのかな。みんながこのことを理解してくれて、市ぐるみでやるような。
――もう地元にもほとんど浸透しているという感覚ですか。
◆うん。だからまあ、農業を盛んにしていくのに、津久井在来大豆であるということに誇りを持たないと。そういうことが認知されて、作る人たちの中、他の住民のたちの中にもそういう気持ちが出てきてるってことは、すごい価値のあることだと思う。だから、当初狙ったことが、その場になってきて。
――こういう体験などをやっていると、顔が直接見える繋がりになってくる。
◆そうそう、そうです。だから、そういう意味でこれは人の繋がりで成り立ってきたっていうことだと思います。
農業のこだわり
農薬、草
――大豆も含めて、農業全体でこだわってることはありますか。
◆30年ぐらい前に、環境保全型農業っていう国の政策があったんだよ。それに有機農業の関係から携わったんだよ。それベースにしたいなとは思ってるんで、でも、こう広げていくと、やっぱり農薬に頼らなきゃいけない部分が出てきたりするんだけど、そこんところ、せめぎ合いだな。
面積やってくると、農薬をつかわなければ乗り切れないし、だからといってあんまり使いすぎてもいけないし。大豆もそうなんだよ。防除4回あんだよ。8月に入ると画鋲虫を隔週で2回やって、そのあと薬まくんだ。大変体力のいることなんだよ。暑い中でさ。
――こだわって大豆育てる中で、他にも大変だったことは。
◆草との戦い。すげえ大変だった。機械がね、管理機があまりなかったから。それで土寄せの時期、タイミングが掴めなくて、草の中から大豆を拾い出すような感じ。それがだんだんと栽培体験ってのが出来上がっていって。合併して市から補助が出て、機械が揃ってきて。で、いろんなことがうまく進むようになってきた。
やっぱり1番は草。真夏の中でさ、草との競争だもん。初めは綺麗な畑にまいたようなつもりが、ほっぽっとくと、すぐ草が後から上に出てきちゃうの。
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――大変ですね。でも、そういった経験ができるというのも体験型のいいところですね。手間がかかっているのがわかる。
◆いいでしょ、そうなのよ。
ボランティアの思い
――それから食べる側まで顔を認知してもらうことに結構こだわっている。繋がることとか、認知してもらうことが1番。
◆そう。人ってそこだと今になって分かるな。そういう特徴だと人と繋がるのがね。結構しつこいんだよ。人を追っかけるからね。だから、今はそんなことしない。けど、当時は人だったから、何度も何度も通ってわかってもらうっていう作業をするからね。
小学校の体験なんかは、もうこの学校に熱心な先生がいて5年ぐらいやってるから。
校長も今回、熱心というか乗り出しちゃったから。市が乗り出してきたから、あとは子供を舞台の上に乗っけて、子供を表に出し出していくっていうことになるのかなとは思う。
――これから認知してもらうには、子供が1番。
◆そういう戦略もあるけど、これはもうね。私は道楽になってきてる。
要するに子供にね、「ありがとう」って言われてね。にっこりされたら、もうおしまい、全てがおしまい。やっぱりね。それは学校で我々がこれをやる基礎だよ。
だって味噌作りにさ、朝だよ。我々6時から学校入って、準備して竈門を炊いて火をつけるのは6時半大体目標にして、それで半日5時間たく。それを学校でやってるわけで、子供たちに休み時間休み時間に来て、見てもらったり、食べてもらったりするわけ。それで出来上がったものを今度、午後の時間帯で仕込みする1日だよね。
――1日かかる…でも、楽しい。
◆子供と話すじゃん。だから、みんな病み付きになるよ。ボランティアに参加してる人は。
――小学生から仕込みが始まって、今から楽しみですね。
◆こういう人たちがどういう風になってくるかって、これから楽しみだよね。どんなふうに世代になって、どういう風に関係してくれるかっていうことはね。
課題:畑が足りない
畑が足りない
――今、大豆について課題だなと思うことはありますか。
◆課題っていうのは、大豆は需要があるから作らなきゃいけないんだけど、やっぱり畑が足りないっていうのは現実です。
あと、もう少し機械化をしていかなきゃいけないかなとは思います。で、体験の人たちの負担をなるべくもっと軽くしていかないといけないのかな、と思います。
――畑はかなり広いですよね。今の時点でもう。
◆いや、120aあっても大豆の面積としたら広くはない。だって、年間売っていくらよねって。1番取った年は3000キロだったか。けど、3000キロでいくらって150万だよ。そんなもんだよ。それをまとも取り組んだってね。しょうがねえんだよ。
だから体験で、こうこういうことで知ってもらって、色んな意味が発生してくることが大切だと私は思って。やっぱり地方とこの東京近郊の現場じゃ違うじゃん。俺も面積そんなに取れないから、どっちかっていうと稼げる野菜をやってかなきゃいけないと。大豆は儲からねえよ。
大豆の量がないのだ
――今、直接おろしてるのはとちぎやさんくらい。
◆今までは直接配ってたんだけど、今は業者に任せてるからそこにおろすのだよね。あとはね、学校の味噌で使っちゃうんだよ。もう今作ってる。
――3000キロぐらいだと、それでなくなってしまう。
◆そうそう、あと時々日本味噌に頼まれたりするから、そうするとちょっと大口になってくるけどそのくらいだようちの場合は。
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――これ以上量産しようという感じでもないですか。生産性というか。気持ちとしては量産してもいいけど、ビジネスで考えるとちょっと…みたいな。
◆現状ではね。畑があればね。ここんとこで、トラクターで土寄せする機械を入れたんで、それで仕事が結構楽になりそうだから、あと5反ぐらいは増やしても大丈夫だと思うけど、まあ、この地域でないともう仕事にならないから、この原っぱの中で、それだけ手に入ればいいなとは思って。
――畑は結構、手に入れにくい。
◆なかなかこの地域はダメなんだよ。まあ、住宅が周りに張り付いてるからね。要するに、家庭菜園の人が入り込んじゃったんだよ。旧市だとみんな貸してくれないんだ。こっち来ると、個人的にみんな口説きに行って借りちゃうんだよ。旧市はね、財産管理があるから人に貸さないんだ。
――橋本とかも完全に東京のベッドタウンで、ちょっとした田舎暮らしに憧れてこのへん住んでる人がいて、確かにそういう需要はすごくある。
◆そう、そうなの。
ねごやファームHP:http://www.negoyafarm.com/index.html