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文フリで本が欲しくなる理由

浜松町から大量の荷物を持った人がモノレールに続々と乗り込む。
私がもし文フリを知らずに居合わせたなら。
「旅行支援みんなうまくいってるかーい!」と叫んでいたかもしれない。(まだ根に持ってる)
それなのに、羽田空港に着く前に、ドヤドヤと降りる人の群れ。
おい、みんなどこへ何しにいくんだい。

その1・つる文フリ会場へ降臨


いよいよ、文フリ東京会場についた。
つるちゃんは2度目とあってか落ち着いている。
大きなキャリーバッグから、売るべき商品、ポップ、飾り用の布などを取り出す。
ポスターを飾るための新聞紙工作や、段ボール製の本立ての作製も開始。

↓こうして作られている

事前にもらっていたブース完成図をもとに、私たちは淡々とテープをちぎり、値札をはり、お隣にご挨拶をしたりした。
鶴の恩返しでいうところの「見ないでください」シーンを、堂々と間近で見られるお得感。
いけない、あんまりジロジロ見てたら飛んでいってしまう。否、羽を休めてるなよ、お前も働け。己を叱咤しつつ、仕上がったブースはなかなかのものだった。
いよいよ、ここに、つる・るるるが降り立つのである。

鶫さんの鶴も降り立つ
オマール婚中の鶴も降り立つ


その2・ウリが何かを伝えられなければ、本は売れない

売って売って売りまくる。

言うのは簡単。だが、他人様の財布の紐を緩めるというのはなかなかに難しいことは想像に難くない。
文字の羅列で表現されている本の内容を伝えること、ここにどんな世界が詰まっているかを簡潔に伝え、その上で「読んでみたい!」と思わせるテクニックとは…?


大阪文フリに、ふらりと遊びに行ったことを思い出す。
私はその時、数点の本を選んで購入したのだが、その決め手はなんだったんだろう?

ぶらぶらと歩きながら、そう、まずはブースに置かれた本のタイトルを見る。
ぶら下がってるポップなどでなんとなくジャンルを想像する。
それから表紙。
落ち着いているのか、鮮やかなのか、賑やかなのか。
それらをチェックする間、自然と歩く速度が落ちている。
そこですかさず声をかけられる。「よかったらご覧になって下さい」

手に取る場合と、手に取らない場合の違いは、上記の第一印象でほぼ決まるのだけれど、時々、そこをさらに食い下がる売り手さんがいる。
「よかったらお持ちください」無料配布用の冊子だったり、チラシだったりだ。
そこで気が変わることも幾度かあった。
「あ、このフレーズ、好き」

売子さんが、いっさい何も言わないタイプのブースもあった。
ほぼ笑わない、説明しない、とにかくみてくれ。という感じだ。
とあるブースに画集と詩集を織り交ぜた本が売られていて、それが本当に私の好みだった。
あまりにも好みだったので、私はそのブースでひたすら本を吟味していたが、売り子さんはその間一言も喋らず、私が「これはアクリル画ですか?」と聞くと「そうです」と言ったっきりだった。
2冊の本と、小さなグッズの購入を決めて「お願いします」と言った時も「ありがとうございます」と深々とお礼をしてくれたものの、特にテンションが上がる感じでないのがとても面白かった。
もしかしたら脳内に松岡修造がいて「売れた!流石だ、今の僕には勢いがある!」と叫んでいたりするんじゃないかと、勝手に想像した。
しかしこの場合、『絵』という、一瞬で好みが判別できる商品だったから有効であって、文章のみであった場合、決め手に欠けてしまうだろうから、もうちょい修造の力を表に出してもいいのではなかろうか、と思う。(修造縛りじゃなくていいんだけれども)

さて。
そこで我らがつるちゃんだ。
彼女の売り方は、淡々タイプか、ゴリゴリタイプか、雄弁なのか寡黙なのか…?
ちなみに私は、どう考えてもゴリゴリしてしまうタイプなので、もしそれがつるちゃんの雰囲気を壊してしまうようだったら控えなければいけないと、自分に言い聞かせていた。

いや。でも本当は知っていたかもしれない。
つるちゃんが、いい塩梅の熱さと冷静さを持ち合わせていることを。
つるちゃんは、最初から事前にお客様をキャッチするフレーズを整えていたし、私と紫乃さんは、すでにそれを共有している。

つるちゃんの動きは機敏だった。
歩く速度が緩んだ人にはすかさず無料配布物を。
さらに足をとめた人には、本の面白いポイントを簡潔に説明していく。
つるちゃんの説明は見事なものだった。
わかりやすい上に、面白そうで、かつ本人が楽しそうなのだ。

危うく「よってらっしゃい!みてらっしゃい!」と騒ぐところだった。いや、大人だもん、そこら辺は空気を読んでやらないけども、出たとこ勝負のつもりの自分に反省した。

お客さんの様子を伺うと、つるちゃんの説明に耳を傾けながら「へぇ〜」と笑顔でページをめくる。
『春夏秋冬ビール日和』での1人暮らしから、『おじゃただ』の2人暮らしへの移行。
それを聞いて、セット買いをする人も多くいたし「ジャケットがとにかく可愛い!」と言うお客さんには、すかさず表紙のアイテム説明と編屋さつきさんの宣伝もする。

最初からメモを片手にくる人もいた。
「い・23 つるる書店」
そんな人には「どこでお知りになりましたか?」とリサーチも欠かさない。

すごい、すごいぞつるちゃん。
これは私がもし、つるちゃんを全然知らずに会場をウロウロしに来ても足を止めるブースだと思う。
実際、本は思った以上に売れていく。

後半、わずかにつるちゃんが席を外した時間帯がある。
本人がいない時にも売ってみせたい。そして褒められたい(45歳女性)。

ちなみに紫乃さんは、第一会場にて白鉛筆さん取材中。みんなでやれることを全力でやる。眩しい私たち!(褒められてのびるタイプです)

私は、つるちゃんがやっていたのと同じように、声をかけ、本のおもしろポイントを説明した。
「へえー、面白そう」カップルで来た彼女が言った。彼氏が「見てみたら?」と言う。
お、これは、彼女さえ欲しいといえばイケるパターン!
私は、女性目線の一人暮らしの面白みと、オマール婚というフレーズを出してみる。


「えー、2冊欲しいかも」
ご購入された方に差し上げてるこのクッキーのエッセイもあるんですよ!株式会社おいしいって会社なんですって!笑!

オマケをちらつかせ最後のひと押し。
カップルが2冊お買い上げくださった瞬間だった。高揚感半端ない。
興奮しすぎて、クッキーを3枚渡してしまった。(怒られるタイプの店員)

鼻息荒く、次に来た人にも同じ圧で迫ったら「あ、なるほど〜」とささやかに頷きながら風と共に去っていかれたので、相手によって、圧力の加減を考えた方がいいらしい。


そこを踏まえてもう一度つるちゃんを観察すると、程よい声のトーンと、時折見せる小さな握り拳がなんともかわいらしかった。
つるちゃんがブースに立っている方が俄然売れるし、立ち止まる人が多い。
押し付けがましくない程よい雰囲気ももちろんなのだが、作者自身が説明する本のウリというのは、お客さんに届きやすいのかもしれない。

3・つる『昔話体質』を発揮

杖をついたおばあさんがいた。
最初に本を2冊購入した後、さらに戻って一冊購入していただいた。
「すごいね!」とはしゃいでからおよそ1時間後、さらにもう一度いらっしゃった。
とにかくつるちゃんとお話がしたいらしい。
「こんなに素敵な雰囲気で売られてて、本当にいいわと思って」
ありがとうございます、ウフフウフフとお礼を言う。
驚くべきことに、そこからさらに1時間後ぐらいに彼女はやってきて
「ごめんなさいね何度も」
つるちゃんが、他のお客さんの接客をしている間、私にも「お友達?いいわねぇ」と言ってくださり、つるちゃんに目を細めていらっしゃるのだ。
その上「知り合いにもお勧めしてきたのよ」と嬉しそうに報告してくれた。
え、つるちゃんのお婆様ではないのよね?
あまりにもつるちゃんを可愛がっているので、念の為に確認したが、血縁者ではなかった。
この、人を惹きつけるゴムゴムの実のような能力をつるちゃんは持っているのかもしれない。(体は伸びないけども)
おばあさんは、何度も何度も、本当に何度も、つるちゃんを褒めて会場を後にした。
昔話体質を実際この目で確認した瞬間だった。


そうして、私たちは、大満足の結果で文フリを終えた。
完売2種、新刊は完売間近まで迫る勢いだった。程よい疲れが全身を襲う。

おつかれつるちゃん。
あなたを新たに知る人がたくさんいると思うととても嬉しい。
いつか高みにのぼっても、どうかこの日を忘れないでね。
私は、そう呟いてその夜そっと目を閉じるのでした。


いかん。またもや長文になってしまいましたが、文フリで勉強させてもらったことを自分なりにまとめてみました。
それ以上に、つるちゃんの魅力を語り尽くしたい私を誰も止められまい。
今後、自分に活かせることがあるといいなぁと、沸々と思い始めています。

文フリ、各地で開催されています。
まずはふらっと遊びに行って、肌であの熱気を感じること、とにかくお勧めいたします。
ブースそれぞれの個性が本当に面白くて、その後、インスタやTwitterで「あの人、有名人ぽかった!」と知るのも楽しいです。「私、見る目あった!」っていう答え合わせが面白い。
もちろん、買ったものが純粋に面白いのも嬉しいし、時には「思ってたんと違ったかも!」というのも、そこにどんな差異があるのか考えてみるのも実は好き。
調べ尽くして、憧れの人の本を手にする瞬間もまた良き高揚感。
楽しみ方は人それぞれ、楽しんだもの勝ちでございます。

とにかく散財してしまうことは間違いないので、ぼちぼちお金を用意しておくことも大切。
一期一会、プライスレス…!

長い長い、文学フリマ参戦記、最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!


文フリ来れなかったあなたも、ご購入はこちらから↓


降臨した鶴の絵

橘鶫さん 物語の欠片と画集、いつか本に…!(切なる願い)
その時が来たら、私、同じ勢いでnote書く自信がございます、ふっふっふ。

KaoRu IsjDhaさん
言わずと知れた、つるちゃんの大ファン、親衛隊隊長。
文フリ差し入れありがとうございます!
コーヒー豆氏より、コーヒーいただきましたよー!プリっとしてた!笑


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