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鶴は昔話へ誘なう
距離感。
人と人とが繋がる時、その距離感を誤ると、「近っ!こいつ近っ!」ってなって敬遠されちゃうし、かと言って、いつまでも見ているだけだと、交流は深められない。
そして私は、比較的距離感を見誤るタイプで、現在仲良くしている友人たちの内数名から「謎の水を売りつけられるかと思った」と、後に語られたりする。
「文フリの日うちに泊まりませんか?」
つる・るるるさんにそういう内容のメールを送った日、「いや、良ければ!ですけどね!もう、疲れるなって思ったらホテルでも全然、好きなように寛いでいただいて!そして、うちに泊まるという場合も、全くお気遣いなきよう…!」
と、距離を急に縮めようとする自分のフォローもすかさずした。
「え、いいんですか、泊まっても?」
その返事が来るや「おい聞け家族の者たちよ!埼玉から鶴様がいらっしゃる、おもてなしじゃお、も、て、な、しーーー!」
しかしだ。あの「お・も・て・な・し」の言葉には呪いの力があるのか、文フリはあえなく延期、とき子一家のおもてなしは中止になるかと思われた。
しかし私は距離感を見誤る女。
「落ち着いたら泊まりに来ませんか?」
再度、つるさんに連絡をした。
「いいんですか?私も会いたいです!」
聞いたか皆のものー!!直ちに準備を開始せよー!!
我が家は色めきたった。
娘は「つるちゃんへ」と手紙を書き出し、夫は「何を食べる?」とはしゃぎ出す。
「ちなみにだけど、つるちゃんて誰?」
知らんのかい!(いや説明してない)
この2人は、私が友達だと紹介した人は、自分達の友達であると認識する速度が異常に早い。ジャイアニズムの傾向がある。
そういったわけで、家族揃って浮かれている間に当日が来た。
駅に着いて「ちょっとトイレに行ってます」とLINEをし、要を済ませて慌ててトイレを出ると、スラリと背の高い色白の娘さんがいた。
瞬間的に「あ、つるさん!」そう思ったが、このご時世だ。万が一間違えた場合、知らないおばちゃんが急に「あなたは鶴?」と迫ってきたら恐怖以外の何者でもない。
なんらかのファンタジーが始まる勢いもある。
そういったわけで、挙動怪しく、その女性をチラチラ見ながらそうっと携帯に手を伸ばした。
するとその女性も私を見ながらそうっと携帯を取り出そうとする。
それはさながら、間合いをとる侍で「やるなお主…!」言いかけたところで「えっと、とき子さん?」先に勇気を出したのはつるさんだった。
わぁー!やっぱり直感は当たってたー!
本物や、本物のつるさんやでー!
…いけない、最初から距離を間違えそうだ。しかし私たちは「はじめまして!」と挨拶をするとゲラゲラ笑った。
その日は宮島に行く予定で、娘は当然のようについて来た。
宮島に行く道中から、話は盛り上がる。
あのnoterさんは読んでます?読んでます読んでます!面白いんですよね!ひゃっはー!
そういえばあれ書く時どうしました?わかるわかる!ひゃっはー!
車内で白熱する私たちと、それを密かに聞き続ける娘。
「ねぇ、つるちゃんて、つる・るるるの本の人?本当の名前って何?」
娘も一丁前に参加してくる。
宮島に着いてすぐ、頭上に鷹のような鳶のような猛禽類さんが飛んでいた。
咄嗟に「あ、鶫さん来たよ!」
そういうと、つるさんも「本当だ鶫さん!」
娘は「なんで鳥に名前が?」と疑問を口にした。
ふふふ、君も大人になったらnoteを読むがよろし。
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こちら鶫さん↓
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宮島の詳しい話しはつるさんの記事におまかせしちゃうとして、
はぁーお腹すいたねぇと帰ったら、夫がいそいそと料理を作って待ってくれていた。
我が家のおもてなし担当は、客人が来るととても喜ぶ。
素直にありがとう!と伝えなければいけないところだが、私の第一声は「つるちゃん!平日は私が料理してるから!」と、まず自分アピール。器が小さい。
ところで、さすが春夏秋冬ビールを飲むと豪語しているだけのことはある。
つるさん、結構飲んでいるけど、酔っていることを感じさせない。
夫がずんどこ酒を勧めると、「ありがとうございます!」とスルスル飲んでいく。
客が好きな夫は「つるちゃん最高!」絶賛、すでに虜になっている。
そのまま私たちは午前3時まで、あれやこれやと話しに花を咲かせた。
推しのnoterさんや、気になる文章、ついでに恋バナまで話しを広げ「私たち、初対面だよね!?」と笑い合う。
やだ、めちゃくちゃ楽しい…どうしよう、眠りたくない、このまま時が止まればいいのに!という乙女チックモード発動しそう。
しかし、午前を回る生活なんぞ、もう何年もしていないものだから、翌日の私はボーッとしていた。
広島焼きを食べに行った後、「どこか素敵なカフェでお茶でも」と言っていたのに、素敵なカフェがどこにあるのか全然頭が回らない。
よく考えたら時間的にも微妙。
しかしだ、今私はカフェインを求めてる。
「つるちゃんごめん、セブン行ってコーヒー買ってもいい?つるちゃんも飲む?」
そういってセブンイレブンに入店してからアプリをみたら、コーヒーが30円引きだった。
「ちょっとつるちゃん!コーヒー70円で飲めるよ!つるちゃんも飲もうよ!」
ついつい、はしゃぎながらつるさんに詰め寄った。
「めちゃめちゃ喜んでるじゃないですかとき子さん!!」
や、やばい、みみっちぃのがバレてる…!
そういえば、昨日の夜中も、つるさんに散々白湯を飲ませた。
白湯。私にとって白湯は、キングオブドリンク、宮島をウロウロしている時も「あー白湯飲みたい…」と呟いて「今、白湯?」とつるさんにツッコまれ、いかに白湯が美味しいかを熱弁した。意識高い系の人が飲みたがるやつじゃない、年取ると純粋に白湯が美味い。
なので、夜、ある程度酒を飲み終わった頃、私は満面の笑顔で、さもスペシャルなティーを注ぐがごとく、マリメッコのお気に入りマグに透明な湯を注いでつるさんに何杯も飲ませていた。
……おもてなしが……
みみっちい……!!!
気がついた時はすでに2日目、今更取り繕っても仕方あるまい。
いや、それよりなにより、私はつるさんのnoteを読み込んでいるから知っている。
彼女はみみっちいことにケチなんぞつける女ではない。
いや、みみっちいことにこそ、面白みを感じてくれるはずなのだ、なんならそこに、同じ匂いを感じたからこそ、私はこんなにつるさんを好きなのだと声を大にして言いたい。
お買い得に努力を惜しまぬ姿。
そんな彼女が「とき子白湯かよ!セブンカフェかよ!70円っておいww」なんて言うはずが無いのだ。
私は開き直った。
そしてその日の夜、夜行バスに乗る予定の彼女に「風呂に入ってからおかえり」と提案した。
「ありがとうございます!」意気揚々と風呂に入るつるさんを見守りながら、家族で「いやぁなんて素直で明るいいい子だ」と絶賛しながら給湯器をふとみると、温度設定が32℃のままだった(湯船はちゃんと42℃)
「うおーー!つるちゃん!シャワー熱くしてー!!ごめんぬるいままやったー!!」
すると彼女は、もう頭洗っちゃったんでーと、ニコニコと風呂から出てきて「うちいつも35℃設定なんで気づきませんでしたー」
いや35℃も相当ぬるくねーか?風邪ひくからガス代ケチんなよ!?
我が家のおもてなしは、最後までちょっとアレだったし、つるさんは最後まで面白かった。
というか、なんだろう…この子、血縁者かもしれない。
私は、「多分またすぐ会うね?」とこれまた距離感を間違う発言をしたが、つるさんも「そう思います!」と言ってくれた。
娘は「私も埼玉に行くからね!」といい、なぜか夫も「埼玉ね!」着いてきそうな勢いだった。
つるさんを駅まで送って家に戻ると、夫が言った。
「なんて気持ちのいい、心の美しいしっかりした子なんだつるちゃん」
夫は、完全に昔話における爺様になっていた。
そういや、ぬか床が酸っぱいと相談した時「塩足したらいいと思います!」とすかさず答えてくれたつるさんに、私も婆様よろしく目を細めて頷いていた。
だってたくさんあった手土産の中の一つが、自作の干し大根。
ねぇ、こんな素敵な娘さんいる?
好みすぎて、夫と「うちの息子の嫁に…」って言いそうだった、息子おらんけど。
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さすが鶴。昔話体質は伊達じゃない。
彼女は、私たちを完全なる爺様婆様にして「ケーン」とひと声鳴くと(鳴いてない)埼玉に帰って行ったのだった。
距離感。
ある人にとっては恐怖。ある人にとっては違和感。それは相手にもよるし、状況にもよる。
私は、比較的距離感を間違うのだけれど、恐れなければ、こんなに楽しい出会いがある。
つるさん、ありがとう、距離を縮めてくれて!めちゃくちゃに楽しかったです。
彼女は、思った通りの、いやそれ以上に、明るくて可愛らしくて、聡明で、倹約家で、面白みに溢れる女性でした。
そして、つるさんの書籍『春夏秋冬ビール日和』増版決定🍻✨
今後、ますます彼女のnote読むのが楽しみで仕方ない。彼女から目が離せない、いや離さない。
そして、必ずやまた一緒に遊び語り合いましょう!
今回は、ただただ、その時の自慢の話の長文でございます。
あなたも我が家に遊びに来たい?
距離はだいぶ詰めるし白湯ばっかり出るけどね?