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物語

38
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#私の作品紹介

《ピリカ文庫》桜知るウソ、僕の自転車

《ピリカ文庫》桜知るウソ、僕の自転車

「ばあちゃん、僕、自転車乗れるようになったよ!」
「そうかい、あんたぁ頑張り屋やもんねぇ」

ばあちゃんは嬉しそうに微笑むと、うんうんと頷いた。
それが、ばあちゃんの笑顔を見た最後。

はっきり言って、僕には運動神経がない。
ボールを投げれば足元にバウンドして顔に激突するし、バッドを振れば、バットの方が空高く飛んでいく。

「運動の神様にまだ気づいてもらってないね」
母さんは、僕が学校で失敗してき

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世界の終わりにあるものは

世界の終わりにあるものは

『あなたは明日世界が終わるとしても、それでも種を育てますか?』

「うん!だって、本当に世界が終わるかどうかは、明日にならないと分からないでしょう?」

ある国で、命を奪いあう戦いが始まりました。
誰も理由は分からない。
なぜ奪わなければいけないのか。
奪わなければ、自分が奪われてしまう。
明日が見えない。明日が来るのか分からない。
昨日まで穏やかな気持ちで見上げていた空が、絶望の色に染まる。

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ふたりはともだち

ふたりはともだち

朝起きた時、ゾウは、自分の目が腫れぼったいことに憂鬱になった。
長い鼻で目覚まし時計を止めると「ハァ…」とため息ひとつ。
「あんなこと絶対思っていないのに…」
そう呟くと、またじわり涙が出た。

とにかくご飯を食べて、温かい飲み物を飲まなくちゃ。昨日は晩ごはんもろくに食べられなかったもの。
そうよ、体の中が空っぽだからこんなに悲しいんだわ。

ゾウは、冷蔵庫からモリモリの野菜を取り出して、ボウルに

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