麻倉玲一は信頼できない語り手|感想・レビュー ★4.5|変化球だがエンタメ性が高いミステリ
読了したので感想です。
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短くまとめると
エンタメ性がとても高いミステリ。
人によっては続きがどんどん気になって一気読みしてしまうはず。『硝子の塔の殺人』や『悪の教典』などが気にいる人は合うと思う。
帯に書かれた紀伊国屋書店員さんの一言が良い。
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”信頼できない語り手”
私は太田忠司氏の作品を読むのは初めてでした。
Web上のミステリまとめ記事か何かで本作を知り、タイトルに含まれる”信頼できない語り手”という文言に非常に惹かれて気になっていました。
ミステリが好きな人間で”信頼できない語り手”というワードに惹かれない方は少ないのではないでしょうか。それを小説のタイトルに含められてしまうと、どんな物語が展開されるのだと気になってしまいます。
Web上の評価も高そうな印象でしたので、読んでみることにしました。
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ミステリ好きをくすぐる要素達
本書のあらすじを一部引用します。
離島、最後の死刑囚、彼が語る(真偽のわからない)話、関係者……ミステリ好きをワクワクさせる要素がしっかり入っています。
私はミステリのお約束的な展開がかなり好きです。
怪しい館
クローズドサークル
次々と増える死体
裏がありそうな登場人物
”殺人犯と一緒に居られるか!俺は部屋に戻るぞ!”と露骨な死亡フラグを建てて部屋に戻る人物
etc…
毎回、同じような展開なのにワクワクしてしまうのはなぜでしょうね。水戸黄門とかと同じなんでしょうか。あるいは同じ音楽を何度も聴きたくなるのと似てるのでしょうか。
本作はミステリ的には”変化球”にあたる作品になりますが、読書感としては王道ミステリのそれと非常に似ていると感じます。先述した書店員さんの言葉がやはり分かりやすいです。
読めそうで読めない展開
ミステリーの面白さは分かりそうで分からない謎と、先が読めそうで読めない展開にあると思います。
この”期待と不安のコントロール”という『エンタメの王道進行』とも言うべき展開が上手な作品は、先が気になってどんどん読み進めてしまい、最悪(あるいは最高)の場合は徹夜してしまう、いわゆる徹夜本になると思います。
本作はそういった意味で、エンタメ性が非常に高い作品だと思いました。私はとにかく先が気になってどんどん読み進めてしまい、2章あたりからは最後まで一気に読み進めてしまいました。
タイトルの”信頼できない語り手”というのも非常に効果的だと感じます。このタイトルを信用するなら、この死刑囚が語ることは信用できないことになりますが、一体どこからが嘘なのか読者に理解するすべはありません。
この”どうやってタイトルを回収するのだろう?”というのも本作における強力なミステリ要素になっているかと思います。
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変化球が楽しめる人は読むといいよ!
先述したとおり、本作はいわゆる”本格ミステリー”とは異なります。
しかし、『硝子の塔の殺人』や『悪の教典』など(*1)の変化球的なミステリーも楽しめるタイプという方には非常におすすめしたいです。
一方で、テンポがよくエンタメ性が高いので、読書初心者やミステリー初心者も楽しみる作品に仕上がっていると思います。
最後に書店員さんの言葉を再度引用します。
そういうことです!
*1 本作と重なる部分はほとんど無いのですが、なんとなく読書感が似ている部分があると感じて、この2作を挙げてみました(が、他にもっと適切な例があるようにも感じます)。
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余談
最近、『硝子の塔の殺人』や『medium 霊媒探偵城塚翡翠』などの売れ筋の書籍における帯の誇大な宣伝文句に私は心底ウンザリしています。
残念ながら、本書の帯にもそのような傾向は見受けられます……書店員さんの推薦文は非常に的を射ていてすばらしいと思ったのですが(そのため、わざわざ帯を外した状態で写真を撮影しています)。
なので、個人的には帯はすぐに外して目を通さずに本作を読まれることをおすすめします。
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蛇足
ところでさらに蛇足になりますが、本作はもともと講談社文庫として出版される予定だったにも関わらず、講談社側が最終的に反故にしたようです。
まぁ出版社も営利企業ですから、色々事情はあったのだろうと察しますが、本作を講談社文庫で出さなかったのは営利企業としてはもったいなかったと個人的には思ってしまいます。
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あとがき
私は信頼できる語り手なので、気になったら読んでみてね!
―了―
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