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不条理短篇小説

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現世に蔓延る号泣至上主義に対する耳毛レベルのささやかな反抗――。
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#本

短篇小説「夢のまた夢のまた夢」

短篇小説「夢のまた夢のまた夢」

 目が覚めると僕はプロ野球選手になっていた。これは僕が生まれてはじめて抱いた夢だ。寝て見る夢ではなく、起きて抱く夢だ。だからこれは夢の中の話ではなく、外の話ということになる。どちらが現実かなんて、取るに足らないことだろう。

 しかしプロ野球選手の僕は、引退後に生き甲斐を失い、酒びたりの毎日を送ることとなった。毎日が無力感に溢れていた。子供のころ、引退後のことまで夢に見ることを忘れたからだ。こんな

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短篇小説「過言禁止法」

短篇小説「過言禁止法」

 SNSの流行により日本語は乱れに乱れた。どう乱れたかといえば端的に言って万事表現がオーバーになった。

 短文の中で自己表現をするとなれば自然と過激な言葉に頼るようになる。さらには、ただ一方的に表現するだけでなく互いのリプライによる相乗効果も働くとなれば、言葉がなおさら過激化するのは必然であった。そこで日本語教育の行く末を憂う文科省が中心となり政府が打ち出した政策が、先に施行された「過言禁止法」

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短篇小説「紙とペンともの言わぬ死体」

短篇小説「紙とペンともの言わぬ死体」

 繁華街の路地裏で、紙とペンを持った男の死体が発見された。彼は死ぬ間際、いったい何をそこに書きつけようとしていたのか。

 そこで真っ先に「遺書」と考えるのは、いかにも浅はかな素人推理である。なぜならば死体が着用していた上着のポケットからは、別に遺書が発見されているからだ。

 だがもしかすると、彼は遺書の続編を執筆している最中に死んだのかもしれない。アメリカのドラマに「シーズン2」がよくあるよう

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短篇小説「ALWAYS 二番目の銀次」

短篇小説「ALWAYS 二番目の銀次」

 あまり知られていないが、あらゆるジャンルでコンスタントに二番手のポジションを獲得し続けてきた男がいる。男の名を銀次という。皮肉なことに、銀次はその出生からして二番目であった。だがそれは、いわゆる「次男」という意味ではなく。

 山に、老夫婦が住んでいた。ある日お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯にいった。すると川上から、どんぶらこ、どんぶらこと、大きな桃が流れて来たのだった。お婆さんは桃を

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短篇小説「フクロウこそすべて」

短篇小説「フクロウこそすべて」

この世のすべてフクロウになったのは、いつからだったろうか。

 ある日、意中の女性とデートしていた私は、一件目の盛りあがりを受けて、彼女を二件目に誘った。だがそこで彼女が発した言葉に、私は衝撃を隠せなかった。

「ごめんなさい、今日はウチにフクロウが来てるの」

 私はフクロウに負けた。

 翌朝、そんな哀しみを胸に出社すると、部下の新入社員が大遅刻してきたので、私はいつも以上に厳しく叱りつけてし

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