カンボジアで居酒屋を開店した1年の葛藤と学びと結果
カンボジアでRoBaTa LaBと言う居酒屋を開店して1年が経った。
当時は、日本でも飲食店を立ち上げたことのない僕にとって相当なチャレンジだったが、長年飲食の経験を持っている社長からたくさんサポートしてもらい、入社わずか3ヶ月足らずの僕に立ち上げを任せてもらった。
あれから一年が経ち、がむしゃらに前だけを向いて突き進んできた時期、スタッフの離職が続き頭を抱えた時期、コロナの影響で売り上げが低迷し方向性すら見失いかけていた時期、本当にいろんな時期があった。自分の立場も1店舗の店長からグループ4店舗のCOOへ。社員数も50名を超え、人の問題、事業の問題、いろんな問題を抱えながら毎日1%でも現状を良くするために奮闘してきた。
そんな中、思い立ったのでこの1年間での失敗と葛藤、学びを書いていこうと思う。
・海外のレストランでマネージャーをしている方
・飲食店でスタッフとの向き合い方を悩んでいる方
・これから海外で飲食店を立ち上げたいと考えている方
このような方々の参考になれば幸いです。
RoBaTa LaB紹介
まずはRoBaTa LaBの紹介
席数 : 約80席
客単価 : 15~18$(約1500~2000円)
スタッフ数 : キッチン9人,フロア9人
業態 : 焼き鳥居酒屋
2019年11月20日のプレオープンから2020年10月31日までの月別集客数グラフ
やはりカンボジアで、コロナの影響が一番合った4月は1ヶ月1000を下回る集客数でした。ですが、その後は調子よく上がってきていて、9月は少し下がったものの、10月は上がってきています。
学びと葛藤
100回の言葉より1つの仕組みと決まり
開店直後は少し店も忙しく賑わっていたが、1ヵ月後からは認知がうまく広がらず暇な日も多かった。新しい地域に出店したため、当時はまだその土地のニーズが手探り状態でメニュー数が多く、毎日のロスと仕込もが多かった。そうすると自然と社員のやる気も下がってくる。やる気が下がった従業員を鼓舞しようと毎日ミーティングで全員に自己啓発系のスピーチをしていた、それもやる気ぶりぶりに。その時はチームが団結して行っているように思っていた。
認知が広がり忙しくなり始めたころ、忙しいのが嫌になってやめていくスタッフ、少し忙しくなったとは言え、まだ目標売上には到底届いていないのに、「給料を上げてくれ」と言うスタッフ。頭を抱えていると結局10人から6人になってパツパツの毎日。
新しく採用するスタッフは同じようにしたくないと思い、職務記述書(未だアップデート中)と人事評価制度とそれによって階級分けされた給与を設定した。その後、徐々にスタッフたちの中で帰属意識が強くなってきて、給与や業務に対しての不安が減り、スピーチなど必要なかったことに気づかされた。目の前の仕事で手いっぱいの時は、その場しのぎの対策をして、根本的な改善をせずに一時的に状態が良くなったからと言って安心してしまっていた。新規出店準備や現地人主体の新体制など、成長過程にある今も、その人事評価制度と職務記述書をアップデートし続けている。
味をローカライズしない
現地の主流の焼き鳥は砂肝やハツを甘辛いタレでつけ焼きをしながらカッチカチに焼くスタイルが主流。私が美味しいと思う焼き鳥はジューシーで表面に焼き目がついている、高くなっても中心温度75~80°くらいが理想。だがスタッフにもその状態の美味しさがあまり理解されず、何度も私の好きな味とそれ以外の状態の物を試食させ説明を重ねた。初めはよく、提供した串が「焼けていない」と返されて、焼き直して提供して…。自分が美味しいと思う状態と市場のニーズとの違いに頭を抱えた。
正直自分も迷っていて社長とも何度も話し合ったが、「味はローカライズしない、自分たちが美味しいと思うものを出そう。」と決めて、それを元に全ての焼き鳥の焼き上がり状態を写真(焼き目)と中心温度で定めた。徐々に焼き手も慣れて、お客さんにも味が受け入れられて、Japanese YAKITORIと徐々に喜んでもらえるようになった。
海外に出店している外国籍料理の飲食店は味をローカライズしがち。「うちはカンボジア人ターゲットなんで、カンボジア人が好きな味にしているんです。」という日系調理長が居る飲食店がたまにあるが、私見で言うと、それをすると自分が正解を持っていないので頭を抱えてしまう。味の評価を自分自身でできるようになる為にも、"美味しい基準""その料理の正解"は自分が持っておくべき。
数字が1番の伝達方法
お互い第二言語でコミュニケーションを取る必要があるとすると、どうしても細かい仕上がりや質を言葉で共有することは難しい。言葉は、共通理解がないと所詮音でしかないので、伝わってると思っていることも、思った通りに伝わる方が珍しい。五感の中で一番記憶力が乏しいと言われる味覚を頼って、「このくらいの味で」とか「これくらいの質感で」などで仕上がりを共有しているうちはブレの幅が大きすぎるし、味だけで基準を作るのは難しい。日本の飲食店でよくある"見て覚えろ"はただ単に教える側の怠惰だし、相手に主体性を求めすぎている。
レシピは全て数字で管理、そしてできるだけ見てもらえるところに置く(うちはキッチンスタッフ全員の携帯のホーム画面)。作り方は動画や画像でわかりやすく。少なくとも重量や時間、温度は数値化してブレがないように管理するべき。
自分の影響が及ぶ範囲にだけ集中する
思いもよらないところで事件が起こり、予想外のところでつまずくことも多いカンボジアでの仕事。突然の停電で冷蔵庫の中の食材が使えなくなったり、翌日から即刻執行される政府からのお達しの影響で客足がストップしたり…。たくさんの事があったし、これからもいろいろなことが起こるだろう。そう言う事件が起こった時は目も耳も心も持っていかれがちだが、自分の影響の範囲外のところまで自分の思考や実行リソースが奪われていてはキリがないし、それほどカンボジアでの飲食店経営は時間に余裕がない。
何か問題が起こった時、”これは今、俺が考えてどうにかできる事か?”と自分に問い続け、自分の影響の及ぶ範囲のことだけに集中するべき。
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日本人主体でマネジメントを進めてきた弊社、これからはカンボジア人主体の新体制に変更して行きます。海外でマネジメントをしていてる方、シェアしてくださると嬉しいです!空き時間でどんどんnote更新していこうと思います!Twitterでもどんどん発信していきますので、これからもよろしくお願いします!
また、カンボジアにいるとどうしても井の中の蛙感がすごいので、事業責任者の方、飲食経営者の方、他の領域の方も、リアルにお伝えできればと思いますので、情報交換させてください!!日本で話題らしいMeetyも使って見たいので、ぜひ、お話ししましょう!