#36 残り、669日の命
「私にはあと669日しかない。今それをやらなければ、一生後悔する」
6月1日は、我が子3人の運動会だった。午前中で終わるという例年通りのスケジュールなので、とくに大変だと思うことはない。
しかしその朝、スマートフォンの日付を見てハッとした。
今年の4月1日からもうすでに61日間も経っているではないか。
私は以前、自分があと730日で死ぬと思って生きている、という趣旨のエッセイを書いた。
730日とは、佐藤友美さんことさとゆみさんのエッセイを読んで自分に課した余命である。
さとゆみさんのこのエッセイは「24時間で消える」しくみなので、今年の4月1日にだけアップされ、24時間後に消えた。
でも私の心にはおそらく半永久的にこの一節は残っている。
2年前は、ライターとしてスタートを切ったくらいの時期だった。
当時夫は無職歴3年目を更新していたので副収入が必要だと焦り、初期投資が少ないWEBライターの道を選んだ。
仕事が休みの日だけでなく、仕事が終わった夜も、そして朝まで、がむしゃらに、ひたすら書き続けた。
じゃあ今の私は「2年前の私から見て理想の人間になれているか」と問う。
答えは「全くダメ」。 むしろ2年前に明確な目標すら立てていなかったのだ。
2年間を無駄にしたとは思わない。
書くことを通じて、お金をもらえる以上の嬉しいこともたくさんあった。
他人に私の文章を読んでもらえることは、文字通り、本当に「有り難い」ことなんだと知った。
でも今の私にはその感謝だけでは足りない。
もっと上手になりたい、もっと人の心を動かせる文章を編める人になりたい。
その気持ちが強く育って、夫や子供のことを後回しにして、とある決断をした。はたから見れば大したことじゃないかもしれない。
でも「大胆かつ慎重に」という意識で生きてきた私にとっては、慎重さに欠ける点もある決断だ。
約5年勤めた会社に「8月に辞めます」と伝えた。
さらに8、9、10月に大阪で開催されるさとゆみさんのエッセイ講座にも申し込みをした。
良い給料をいただける会社をやめる。福岡から大阪へ講座を受けに行く。
お金が絡むと極端に慎重さがでる「今までの私」だったら、やらないことだと思う。
でも、あと669日後の理想の自分を描いてみたら、もっと書くことを中心に生きよう、と思った。だから副業ではなく、本業に。
フリーランスでも会社員でも良い。書かせてもらえる場所を、自分で探しに行く。
焦ってももがいても間に合うかはわからない。どのみち私にはあと669日しか残っていない。
今できることを一歩一歩、一生懸命やる、ただそれだけ。