社会人ダイアログ No.2 塚越暁さん
今回は、HARAPPA株式会社の代表を務められている塚越暁さん!
塚越さんとは、リクルートで一緒に働かれていた星加さんのご紹介でお会いさせて頂いた。
以前にもお話を伺かったことがあり、その時は原っぱ大学のフィールドである逗子の山の中で焚火をしながらお話を伺った。自然の中で、火を囲みながら自然体に近い状態でお話させていただく時間は、とても気持ちが良かった。
今回は、自分が就活のタイミングという事もあり、改めて塚越さんの活動や働くことの意味について伺った。
プロフィール
塚越さんは原っぱ大学と言う、主に都心に住む親子を対象として山や海をフィールドにして 遊びの空間を作り出す活動をされている。塚越さんご自身が2児の父でもあり、山や海で遊ぶことが大好きだった経験から、都内の親子を中心に地元である逗子で大人も子どもも自分の本心に従って遊びを作り出す活動をされている。
今の時期はだいぶ気温も夏らしくなり、山の中での遊びから、海でsupやサーフィンをしたりする活動へ移行する時期なのだそう。最近「放課後サボール」というサービスを逗子の子どもたちに対して始められたのだとか。
塚さんの詳しい活動についてはこちら↓↓↓
塚越さんの就活~現在
そもそもなぜこの活動をしているのか。塚越さん自身の就活時代の話からこの活動にたどり着くまでのストーリーを伺った。
塚越さんは元々リクルートで働かれていて、震災をきっかけに地元である逗子に生活の拠点を移して現在の活動を行われている。
塚越さんは就活の時期に自分が働く意味を考えた際にただお金を稼ぐためではなく、この世界を次の世代に受け継いでいくためだと考えたそう。
ダムを作ったり、物資を海外に供給したり、デカい規模で仕事をしたいと考えた塚越さんは商社を志望。OB訪問で商社に勤める人に話を聞きに行ったのだが、そこで言われたのは、
「お前は何を言ってるんだ。商社は商(あきな)いの会社と書く。ビジネスに興味のないやつがなぜ商社で働けるんだ。」
現在でこそまっとうなことを言っていると思えるが、当時は衝撃的な言葉だったそう。
志望する会社がなくなってしまった塚さんの目に留まったのは、当時のリクルートがキャッチコピーにしていた ”follow your heart” と言う言葉。一人一人が「希望」を持ち、機会に満ちている社会を実現するという理念に一目ぼれして、リクルートを志望した。
リクルート時代
念願がかなって入社したリクルートだったが、配属されたのは事業をたたむかどうかの瀬戸際にあった事業の営業部。入社後のギャップに悩みながら、自分が価値を感じていないサービスを売ることはとても苦しくてつらかったそう。しかも、同期は優秀ですごくエネルギーのある人ばかりでそこにもギャップを感じていたのだとか。
そんな厳しい状況を半年耐え抜いた後、上司が塚越さんを雑誌の編集部に引っ張ったことが転機となる。そこでは雑誌の編集を担当し、自分が雑誌に載せた情報によって、それを読んだ人から感謝のコメントをもらったり、その雑誌がきっかけで読者の選択がより良いものに変わることに喜びを感じて、仕事にのめりこむようになった。雑誌の編集の仕事は、まさに自分がやりたかった仕事だと感じて、やりがいを持って働けるようになったのだとか。
震災をきっかけに起業
2011年の東日本大震災が起こった際、会社の看板がなくなった時自分自身に何が出来るのか答えが出なかったのだそう。そこから自分オリジナルの事業を立ち上げるために、グリーンズと言う団体に所属し、マイプロジェクトとして立ち上げたのが今の原っぱ大学。
自分の人生を振り返って、幼少期の海や山での遊んでいた経験が自分にとって非常に大きなものだと気づいた塚越さんは、地元逗子の海や山をフィールドにして、都市部の親子を対象に遊びの空間を提供すること事業に。それが現在の活動に繋がている。
しかし、最初のイベントを広報する時には自分が大好きで価値があると思っている事業を周りから否定されるかもしれないという恐怖心もあったそう。自分が一番大好きなものが周りから否定されたらどうなるのだろうと。しかし、思い切って広報したイベントは同僚や知り合いからたくさん応援してもらえ、イベントは初回から大成功。それが塚越さんにとっての成功体験に。
原っぱ大学の意味
話が進んでいく中で塚越さんに「塚越さんにとっての働く意味」を聞いてみた。
塚越さんは、「ちょうどいま原っぱ大学のビジョンを見直している途中なんだけど、、。」と前置きをした上で、こんな話をしてくれた。
そもそも、”原っぱ” とは遊ぶための ”余白” のこと。何をしても良い場所で、”遊び” を表現するためのフィールド。
”遊び” とは、自分がその瞬間感じた ”こうしたい” という衝動や欲求、自然や人と触れ合う中で感じた感情を自分の心に従って素直に表現すること。
穴を掘ってもいいし、焚火をしてもいい、鬼ごっこをしてもいいし、ただただ寝るだけでもいい。そうやって自分の心に素直になることは、自分をリスペクトすること、自分を大切にすることにつながる。
自分をリスペクトできるようになると、一緒にいる周りの人や、その辺にいる生き物、自分を取り囲んでいる自然や環境をリスペクトしたり、思いやりを持てるようになる。
周りへのリスペクトが生まれて、極論それを全人類が自分と周りに対してリスペクトを持てるようになれば、戦争もなくなるし、地球温暖化もなくなる。だから、自分と他者をリスペクト出来る人を増やす。そういう世界を実現するために、この活動をしているのだと。
自分をリスペクトする。
言葉は違うけど、最近自分がテーマにしていた「自分を大切にする」ことと繋がった。
普段生活していると、自分の本音が分からなくなることがある。それは仕事や大学、私生活の中で良くも悪くも、周りを優先してしまって、自分を後回しにしてしまう。そういう瞬間が積み重なると自分が何をしたいのか、どういう方向に進んでいきたいのかが曖昧になってきてしまう。自分のことがよく分からないから、他人の評価が気になったり、余計に周りに合わせてしまう。そういう人は結構多いのではないかと思う。自分ももちろんその一人だし、そういう状態では、自分が楽しいと感じれないと思うようになって、自分を大切にすることを意識するようになった。
自分のことを大切に出来ていれば、他人にも親切になれるし、他人をリスペクトできる。親子関係であっても、世間体や周りのいろんな環境のことを気にして、親子間でうまくコミュニケーションを取れていないことがあるのではないかと思う。「こうであらなければならない」「こうしたほうが子どものためになるはずだ」そんなべき論が頭に浮かんでしまって、自分がどうしたらいいのか分からない。それは、社会のべき論を優先してしまって、自分たちのこうありたい、こうしたいという気持ちへのリスペクトが薄くなってしまっているという事。
塚越さんの活動は、こうした親子の関係性を解きほぐすことに繋がっているのかなと思う。原っぱ大学では、成功も失敗も、「こうしなければならない」と言うべき論も存在しない。大人も子供も関係なく、原っぱ大学に来た人全員がその瞬間の自分の心に素直になれる。社会のものさしから解放されて、自分のものさし(これをやってみたい、嬉しい、楽しい)だけで自由に自分を表現することが出来る。そんな瞬間を作り出すことで、自分と他人をリスペクトして、日常の中でも世間体を気にせず、親子やその人自身にとってのベストな選択が出来るようになる。そんな活動を塚越さんはされているのかなと感じる。
以前に会った時もそうだったが、塚越さんはよく「いま考えていることだけどね」と前置きをしてくれる。それは人間は決して一貫性のある生き物ではなく、考えや感じていることが常に変化していくから。だから、自分に一貫性がないことを前提とした上で、その瞬間に自分の中に存在している言葉や想いを丁寧に、そして誠実に言葉にしてくれる。塚越さんは事業を提供する側ではあるが、そういった自分の発する言葉に対する姿勢は、塚越さん個人としても、自分をリスペクトすること、自分に素直になることを大切にされているのかなと感じた。
自分の経験や考えを自分の言葉で語れる人は魅力的だなと感じる。そういう人から発せられる言葉は、他の誰でもない自分の経験を元にして、その時々で感じたことや考えたことを大切にしているから語ることのできる言葉で、その言葉にはしっかりとした重みがある。想いの乗った言葉は納得感があるし、自分の中にしっかりと入ってくる。自分もそんな風に自分の言葉を紡ぐことのできる人間になりたいと思う。
塚越さんはこんな話もしてくれた。
人の中に苦しみが生まれるのは、自分を受け入れられていないから。デコボコで、矛盾していて、弱くて汚くて、ダメな自分がいてもいいよね、それも自分の一部だよね。そう思うことが出来るようになれば、極論全ての悩みはなくなる。
自分の持っている弱や強さも、今までの経験や環境も、自分のいいところも悪いところも全部ひっくるめて受け入れて、認めれるようになった先に幸せがある。
自分だけの悩みや苦しみ、自分オリジナルのストーリーだと思っていることでも、自分と同じような悩みを抱えている人は必ずいる。同年代を生きている人には特に。超個人的なストーリーであればあるほど、その中に真実であったり、不変の価値がある。だから、自分の感じた苦しみや経験を言葉にしたり、文字に起こして人に伝えることには価値がある。
自分のストーリーと社会の中に接点を見つけること。
これまで就活をしていて、自分のストーリーと志望している企業の仕事内容を無理やりこじつけて話しているようだったけど、そうではなく、就活に関係なく、自分はこれまでどんな人生を歩んできて、どんなことを感じてきたのか。そのうえで、自分の価値観からどのように世界を捉えて、どんな世界を実現していきたいのか、どんな価値を社会に提供していきたいのか、そこから考えて、自分と社会との接点を探っていく。
塚越さんのとっての採用
塚さんはリクルート時代に子会社の採用にも携わったことがあるそうで、塚さんにとっての採用についても話して下さった。
極論は、この人と一緒に働きたいかどうか。本心から言っている言葉なのか、取り繕っている言葉なのか、練習を重ねたからすらすら話せているのか、ある程度質問を予測した上で準備した答えをしゃべっているのか、採用側は大体分かるのだとか。
だからこそ、自分の本心やストーリーとしっかりと向き合うことが大切。面接、就活に関係なく、自分の過去・現在・未来について、自分の感じたことや想いを棚卸して、自分の言葉でストーリーを語れるようになれば、どんな質問に対しても答えることが出来る。そして、自分の言葉を語った上でそれをどう受け取るのかは、その企業次第。自分を表現した上で、内定を取れなかったのであれば、その企業とは縁がなかった。それ位の気持ちで考えればいいと。
確かに、学生は企業から選ばれる側だという意識が生まれて、自分を取り繕って企業に無理に寄せようとしてしまいがちだけど、自分の中で何を大切にしたいのか、どういう価値を世の中に提供したいのか、それを頑張って言語化することが出来れば、あとはその考えを良いと思ってくれた企業に入ることが一番良い内定につながる。
そうやって納得しては入れた会社ならば、苦しくなったときでも踏ん張りが効く。
もっと自分のストーリーを振り返った上で、どんな価値観を持っていて、どんな世界を実現したいのか考えてみようと思った。
対話を終えて
うまく言葉がまとまっていないかもしれないが、塚越さんとの話は毎回本当に自分の深いところまで掘り起こされる感じがする。
それは塚越さんが自分自身に対しても素直に言葉を紡いでいて、人に対してもそういった態度で関わっているからなのだと思う。就活で自分の軸の部分をどう表現するのか迷っていたが、改めて、就活とは関係なく自分のストーリーを振り返った上で、自分と社会との接点について考えてみたいと思った。
毎回感じることだが、こうして自分の経験を交えて本音でお話してくださる方とお話をさせていただける機会を持てることがほんとうにありがたい。これからもこうした時間を大切にしていきたいと思う。