実践・おとなの探求 Vol.0 〜環境づくり、時間の記録、つながり〜
こちらの記事は、マガジン「The Paths」の検討をするにあたって試験的に作成した、パイロット版記事です。わたし自身や今後やってみたいことについて、インタビュー記事風にまとめたものです。
インタビュイーのプロフィール
今回は、コンサルティング会社にお勤めの30代男性にお話をうかがいました。
人のポテンシャルを引き出すサービスやプロダクトをいくつも作れる組織を作りたい
ーーはじめに、簡単に現在のお仕事の内容やこれまでの経歴について、簡単にご説明をお願いいたします。
わたしは、コンサルティングの会社で新規事業の企画をサポートする仕事をしています。会社の主な事業はクライアントさんの会社にコンサルティングサービスを提供することですが、わたしがいる部門は自社のための仕事をします。自社の中で、デジタル技術を使った新しいサービスを開発するプロジェクトをする時に、その支援をするのが役割です。わたしはその中でも企画を考えてコンセプトを作る部分を担当しています。
経歴ですが、大学卒業後は精密機器メーカーに入社し、海外営業部門に配属されてアメリカのお客さんを担当しました。まる5年在籍したうちの後半はアメリカに駐在していました。やがて、大学時代から関心があったことに近い仕事をしたいと思うようになり、まずはもっと自分の知見を深める必要があると思ったので、会社をやめて日本に帰り、大学院に入りました。
大学院を終えたあとは、日本のスタートアップを2社経験しました。1社目では海外で事業立ち上げをする責任者などを務め、2社目ではサービスの企画設計をする担当でした。そういった経験をしてきたことが、今の仕事につながっています。
ーー大学の時に関心があったことを深めるために大学院に行ったということですが、そこで勉強したことはその後の経歴にどのように関連しているのでしょうか?
大学の時から関心があったのは、新しい製品を開発するような創造力を必要とする組織はどのようにしたら作れるのか、ということでした。なので、大学院では、人の創造性を刺激する環境づくりに関する勉強をしたり、コミュニティが活性化したかどうかを簡単に測定することができるような手法を研究したりしました。
また、大学院の必須科目として、デザイン思考などを使って課題解決の方法を提案するようなプロジェクトがあり、そこでアイディアを出したりそれを形にするための手法などについても学びました。
大学院を修了してからの仕事は、新しい事業やプロダクトを企画・設計して立ち上げる仕事です。大学院で勉強したり研究したりしたことは、そのプロセスを考えたり、そういった取り組みを組織に根付かせる方法を考えたりすることにつながっています。
ーー中長期的なキャリアの目標として、どんなことを考えていらっしゃいますか。
あまり具体的ではないし時期も設定していないのですが、自分が考えていることを実現するために、自分で事業やサービスを立ち上げて、それをすることで生活に必要なお金も稼げるようになるといいなと思っています。
今勤めている会社は大学院を終えてから3社目になるのですが、自分がやってみたいと思うことに十分には取り組めていない感覚があります。おそらく、会社に雇われて上司がいる状態ではなく、自分で責任を持つ代わりに思いきり色々なことを試せる環境に身を置く必要があるのだろうなと思っています。組織のリーダーになるのは自分には向いていないと思うので、本当はそういうことはしたくないのですが、自分で納得できるまでやり切るにはそれしかないとも思います。半分仕方がないかなと思いながらそちらへ向かおうとしています。
ーー新しいサービスやプロダクトの企画・設計をするような会社を作りたいということでしょうか?
そうですね。必ずしも会社でなくてもいいのですが、会社という形が一番なのかなと思います。人が創造性やポテンシャルを発揮し切れるような社会に近づくといいなと思っていて、それに役立つようなサービスやプロダクトをいくつも作れるような組織が理想です。海外にもたくさん行きたいので、色々な国で使ってもらえるようなものにしたいです。
時間の使い方を可視化して、自分の想定からの逸脱が発生した時に行動を修正しやすくする
ーーなるほど。その目標を実現するために、普段ご自分で意識したり実践したりされていることは、どんなことでしょうか。
一つは、自分の時間の使い方や考えていることの記録をつけるということです。毎日一定の時間をとって、何にどれだけの時間を使ったのかを記録して可視化できるようにしたり、仕事や趣味、勉強などについて考えたことや学んだことをメモしたりしています。
自分のやりたいことを一つのアプリで完結させられるものはないので、いくつかのアプリと、自分で作ったスプレッドシートを使って記録をしています。これをすることで、自分にとってより重要なものに時間を使うように意識したり、そもそも自分にとって大事なものが何なのかを確認したりすることができます。
また、人の学習を促すような環境づくりに関心があるので、それに関連する書籍を読んだり、色々な人にお話を聞いたりしています。広く共通するような課題を探したり、その解決策につながるようなヒントを探したりするのが目的です。この情報収集が、自分で作る事業の内容を考えることにつながります。
あとは新聞を読んだり、ポッドキャストを聞いたりといったことも習慣になっています。今の仕事ではほとんど英語は使わないのですが、今後絶対に仕事で使えるようにしておきたいので、好きな海外メディアのポッドキャストを1.5倍速で聞いたりして、感覚を忘れないように心がけています。
ーーひとつ目に挙げられた、時間の使い方や、考えたり学んだりしたことの記録をとるということについて、具体的にどのようなことをしているのかもう少しご説明いただけますか。
言葉だけで説明するのが結構難しいのですが。。。笑
パソコンやスマートフォンには、スクリーンタイムという機能がついているものがあり、どのアプリをどれぐらいの時間使用したか、日毎に確認することができます。自分が使用しているスマートフォンやノートパソコンのデータを確認して、日々スプレッドシートに記録しています。
アプリを使用したりサイトを閲覧したりしているときには、例えば仕事上のプロジェクトの調べ物をするとか、自分の趣味に関連する動画を観るなどの目的があるはずなので、その目的についてはスプレッドシート上で手動で記録します。この記録をとることで、どのような目的の作業にどれだけの時間を使っていたかのデータを蓄積することができるので、そのデータをグラフ化すれば、自分の時間の使い方の変化を直感的に把握することができるようになっています。
考えたことや学んだことについては、TrelloというアプリとEvernoteというアプリを使用して記録しています。
Trelloは、元々は「カンバン」という形でタスクのステータス管理をしたり、チーム内で情報共有を行うためのツールです。わたしはこれを、タスク管理と、それぞれのタスクに関して自分が行ったことや考えたことを記録して後々検索するためのツールとして使用しています。
ただ、Trelloではトピックごとに記録が蓄積されていくので、記録を1日ごとにまとめることはできません。したがって、Trelloで各トピックについてメモしたものを、Evernoteというメモツールで1日ごとのメモを作成して、Trelloから転記することで、日ごとの記録として蓄積していっています。この二つを併用することで、日ごとの記録とタスクごとの記録を整理して蓄積していき、いつどんなことを考えたのかといったことが振り返りやすくなっています。
他にも、Google Mapの位置データの記録もスプレッドシートに転記して、どこにどれだけの時間いたか、その時の自分の生産性はどうだったかといったことも記録していたりします。
ーーすごく手間がかかりそうですね。
そうですね。毎日1時間ぐらいは使っているかなと思います。
でも自分にとっては可視化するからこそわかることがあって、それが面白いし、ちゃんと振り返りをすることが自分のために必要なことだと思っているのでやっています。もちろん全部自動でやってくれて、自分がするのは考えたりメモしたりすることだけ、ということになればそれに越したことはありませんが。
ーー記録を可視化したり、振り返ったりすることでどんなことがわかるのでしょうか?
可視化する時には、活動カテゴリーを会社の仕事、自分のプロジェクト、趣味、家のことなどに分けて、日ごとにどれぐらいの時間を費やしたかがわかるようにグラフにしています。今年の2月に会社の仕事が少し忙しくなった時期があったのですが、その時に自分のプロジェクトや学習に費やす時間が減った一方で、趣味に使う時間があまり変わりませんでした。その状態は自分にとっては良くないと思ったので、趣味の目的で利用時間の多いアプリの利用を減らすことにしました。この結果、アプリレベルではAmazon Prime VideoとYoutubeが減り、代わりにKindleやGoogle Docsの利用時間が増え、活動カテゴリーでは自分のプロジェクトや学習に使う時間が増えました。
趣味に使う時間や、特に決まった目的のないことに使う時間も大事だとは思うのですが、自分の将来のためにやる必要があることがある以上、毎日の生活の中で、そのために使う時間はしっかり取りたいです。時間の使い方を可視化できると、逸脱が発生した時にそれに気づいて行動を修正しやすくなると感じます。
自分で何か発信することが、関心分野について響き合う人と出会うために必要なことなのかもしれない
ーーなるほど。具体的に自分の時間の使い方を見直したりするきっかけになるんですね。ご自分の目標を実現するために行なっていることをいくつか挙げていただきましたが、それらを行う上で、一番面倒だったり困難だったりすることは何でしょうか。
先ほどの、記録の蓄積や可視化の手間以外でいえば、人との繋がりについてです。自分が考えていることや関心のあることについて、議論したり情報交換したりする人や、こういうことをやったら良いのではないかというビジョンやアイディアを共有し、実現のために協力して動ける人がなかなか見つからないです。
自分一人でできることや考えられることは限られているし、わたしはひとりでやっていると色々なことを考えすぎて、行動に移すのが遅くなる傾向があります。関心やビジョンを共有しつつ、得意分野を補完し合えるような人とか、関心分野に関して情報が集まったり議論ができたりするようなコミュニティを見つけたいのですが、今のところうまく行っていません。
ーーその悩みを解決するために、これまでに試したことや、検討したこと、工夫したことはありますか?
Facebookなどのオンラインコミュニティの中に、関心分野に合致するものがあるかを探したりしたことはありますが、良いものが見つかりませんでした。また、自分でコワーキングスペースの会員になって会員イベントに参加するとか、ビジネス上の人脈づくりのためのマッチングアプリを使うなどして、新しく人に会う機会を作ったりしていますが、ここでも今のところ自分のイメージする人に出会うことはできていません。関心がある分野についてもう一度大学院で研究することは選択肢の一つではありますが、経済的なことを考えると少なくとも今は現実的ではありません。
結局は、自分で何か発信することが、関心分野について響き合う人と出会うために必要なことなのかなと考えています。これまでブログを何度か試したのですが、継続して発信できるようなものがなくて何度か挫折してきました。ただ、最近自分の関心分野の調査で、キャリア開発を自分で試行錯誤している人たちのお話を聞くようにしています。その内容が面白くて、誰かの役に立つことがあるのではないかと思うので、そういった記事が集まるメディアを作れないかなと考えています。
ーー難しい部分を解決するために、新しい取り組みを始めようとされているんですね。目標実現に近づくようなものになると良いですね。ありがとうございました。