唇の魔法
右耳を引っ張ると雨が降って
左耳を引っ張ると雨が止むの
鼻を押すと雷が鳴って
ウィンクすると星が流れるんだ
「どう?すごいでしょ?」
目の前にいる片想いの相手は
いまいち反応も感動も少なくて
でももっと私の魅力を伝えたくて
興味を持って欲しくて
でも今日は調子が悪くてどれも機能しないから
どの話も信じてくれない彼と
嘘つきのレッテルが貼られた私
そりゃそんな事、私に出来る訳が無いけど
急に二人きりになって空回りしてるのは自覚してる
気を惹くための方便だってわかっているけど
もうちょっとノッてくれてもいいんじゃない?
「他にも何かあるの?」
その言葉に何かないかと捻り出す
ひとつだけ奇跡を起こせるとしたら
これしかないだろう事が頭に浮かんだ
「キスをすると私の事が好きになるよ」
そう言ってしまった手前
実際にやらなきゃいけない流れになって
でもそんな事、私には出来ないだろうと
たかをくくる彼に一矢をむくいたくて
勇気を出すなら今しかないんだと
今が人生の転機のひとつだと奮い立たせた
「試してみる?」
柔らかい自慢の唇は
きっと彼をとりこにする
一瞬で私しか見えなるはず
自身はある、漫画で沢山見たから
それを実践すればいいだけの事
それにこれが私の初めてのキスだと知れば
なおさら意識せずにはいられなくなるだろう
照れを振り払い、真っ直ぐに目を合わせたら
時が停止して音が消えて呼吸も忘れるくらいで
顔を近づけると同時にゆっくりと
二人の周りだけ空気が揺らいだ
雨は降らなかった
でも、どこかで雷が鳴って
どこかで星が流れた
カフェで書いたりもするのでコーヒー代とかネタ探しのお散歩費用にさせていただきますね。