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小さくて大きな幸せ、豆皿つまみ1週間|充実の余地を知る
料理は、日々の中に小さく多発の楽しみを与えてくれる。
「楽しみ」という言葉でまとめられないくらい。
鍋の中で美味しそうに出来上がっていくわくわく感とか、器に盛って、もう美味しそうという高揚感とか、口に運んだ時の満足感とか。
時には焦がしたりしてしまったときの悔しさも。
それが毎日毎日繰り返される。
多分私は料理にはまったと同時に、非日常的大きな楽しみを求めなくなっていった。
小さな楽しみで満たされているのだと思う。
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今回私にとって新たな挑戦をした。主婦と生活社さんの料理本モニター。
料理の、実験のような側面を楽しんでいた私にとって、誰かのレシピをなぞることはほぼなく、
レシピ本も1冊も所持していなかった。
この本が届くまでに、私は料理にまつわる新しい楽しみを知った。
書店に並ぶ本を物色し全てを見て選ぶのではなくて、タイトルとカバーから期待して、レシピ本を開く日を待つ楽しみ。
こういうのも、いいな。
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実践してみて良かった。知った幸せが幾つもある。未知の味、人生一の味、充実の余地、、
わが家の豆皿食卓の記録、はじまりはじまり。
一日目 金夜豆皿晩酌
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金曜日の酒が、いちばんおいしい。
思いっきり料理するぞ、労うぞ、のエナジーmaxの金夜。
小料理屋で呑むかわりに、お家でゆっくり晩酌。豆皿飲み。
思いっきりと言っても、
茹でる、和える、和える、巻いて揚げる、だけの手間なので
出かけるよりも長くゆったり。
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榎本美沙さんのレシピから4品
レシピをめくってどうしても目に留まるのは鮮やかなサーモンのひと皿。松の実を炒る時の香りから美味しい。
こう並ぶとやはり目を奪われてしまうのは半熟卵の黄色。うまく出来て嬉しい。黒酢なのが新しい。
春巻き。断面が綺麗だとテンションが上がる。ただ巻いただけなのに。充実感。
そして、お見それしました豆苗。正直これは色合わせで選んだひと皿だったけれど、一番好きだ! おかわり! おかわりできるおうち飲みの強み。
どれも別に味付けしてないのに、って印象。
組み合わせにより、最小限で最大限。やっぱり榎本美沙さんって凄いんだなと作って実感する。
はぁ、ふわっとなって最高、豆皿飲み。
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二日目 豆皿ランチ
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按田優子さんの乾物つまみから三品
・切干し大根と干し椎茸の水餃子
・のりディップとクレソンの細巻き
・かつお節ピーマン
乾物のおかげで買物にも行かずに完成。そして乾物のおかげで勝手に奥行きが出てくれて、使った品目はとてもシンプル。
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餃子は皮も手作り。でも買いに行くより早くて、レシピ通りに扱うと確かに柔らかくなっていく。すべすべな生地をうまく丸く伸ばせるかが手間ではなくて、遊びのような楽しみになっていた。新型のUFOになってしまった。
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かつお節ピーマン、侮ってはいけない。
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見た目は何よりも映えない海苔ディップがおいしくて、定番にしたい。ご飯以外にも色々合いそう。けれどこのクレソンとの取り合せが凄く良くて、おつまみに細巻きという新たなメンバーがわが家に加わりそう。
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三日目 豆皿アペロ
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出かけたい所が2つもあった休日
朝レシピを開くと作りたい物ができてしまった
これ、家で飲めて、子どもともゆったり過ごせるのなら
こっちのほうが最高じゃない?と
出かけるのをやめ昼からワイン
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
サルボ恭子さんのレシピより5品
・ししゃものイタリアーノ
・スモーキーキャロットラペ
・ミックスチーズのつぶつぶペースト
・鶏ひき肉のミニテリーヌ
・長ねぎのマリネ
料理家さんは、やはり天才だ、、と敬服するものばかり。レシピの写真を眺めてるだけじゃ分かり切れない、実践による実感。
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ししゃものイタリアーノ。使う素材が、私の好物ばかり! なのに出番の少ないもの達だった。
ここで仲間になるなんて。ししゃもの新しいごちそう!
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キャロットラペ研究にはまったことがあったけれど、こんなにシンプルな材料は初めて。それがスモーキーのおかげで一気に満足感。
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ミックスチーズのつぶつぶペースト。先日お隣さんが山程くれてどうしようかなと思っていた柿にもぴったり。このペーストに合わせたいものが山程になった。
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パテなんて手の込んだもの..と思ったら一番手がかからなかった! そしてこのまさかの組み合わせ..良すぎる! またワインのお供にしよう。
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長ねぎのマリネも作ったことがあるけれど、最後にあれを入れるのは思いつかなかった。そこにレモン。目も鼻も舌も満足。
驚きいっぱいの料理たち。
遊ぼうよーと待ちわびる子どもに、待って、美味しい〜! と花が咲いてる私。楽しい休日だ🥂
四日目 豆皿モーニング
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豆皿つまみ の翌朝の姿
余ったミックスチーズペーストをパンに塗って
サラダグレックと一緒に。
サルボ恭子さんの料理から2品
ごつごつしたこんがりチーズの香り
おつまみ仕様に薄切りの食パンと合わせて
さくっとひと口 あぁ最高
ワインが飲みたくなっちゃう、朝から
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
1種類だけだって成り立つ"チーズパン"
わざわざ3つを合わせる意味は食べて分かる
次も必ずわざわざ3つ買う!
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朝でもさっと作れるサラダグレッグ
ピーマンは生なの?
食べて分かる、生ピーマンの意味。
ピーマンの好きな味わい方リストに食い込む!
その味わいを作るこの具材。3つ共が必要不可欠。
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たった2皿でこんなに満足。
作って食べてみての感激が大きすぎて
写真では伝えられない
やってみる、の先のご褒美
休日の軽やかで華やかな朝食
すてきな1日のはじまり!
五日目 夕食後の豆皿つまみ
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晩ごはんの後
これならささっと作れそうだと
思い立って豆皿晩酌
まさに"スピードつまみ"
豆皿レシピって、難易度も豆皿サイズにしてくれているのだろうか
ちょっと作ろうか、と思わせてくれるものばかり。
ちょこっとつまんでちょこっと飲み
平日夜でもいい晩酌サイズ。
余りは明日の朝食に。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ツレヅレハナコさんのスピードつまみから4品
・セロリと桜えびのナムル
・ちくわといんげんのナンプラーバター炒め
・ツナのハーブリエット
・スパイシーコーンバター
さすがだ、豆皿 "つまみ" なのだ。
おかずとは違う。どれも主役を張れる。
見た目はシンプルで簡単そうな料理なのに、皆はっきりと個性的!
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セロリと桜えびのナムル。あっさりなんて勘違い。ごま油も桜えびも香ってる。これだけでまだ飲める。
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ちくわといんげんのナンプラーバター。ちくわに土下座。今までおでん以外に買おうとしなかった。人生で一番美味しいちくわの食べ方かもしれない。いんげんとの食感が計算され尽くしてる。
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ツナのハーブリエット。ぱくっといきたいから小さなバゲットで。ツナはオイリーだけどあれと合わさるのでくどくない。さらにディルで軽やか。
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スパイシーコーンバター。これも主役級。いい香りがしたと思ったらまた別のいい香りに変身。
器の話┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
こんな小さいの、漬物以外に何乗せるかなと思いながら買っていた豆皿。
夕飯後の晩酌にこのサイズ、シンデレラフィットと呼びたい。4枚買っていて良かった!
これは元々皿ではなく、ぼたといって、備前焼を作るときに丸い模様を付ける為に置くもの。用途は考えず、ただ1枚1枚の偶発的模様が格好いいな〜と選びきれず買った4枚だった。
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お盆。祖母の家に行ったとき、もういつまで生きてるか、持ち腐れだからあげるよと貰っていたお盆。上質な物でラッキーな気分ではあったが、お茶を運ぶこともないし、使う日は来るだろうかと箱にしまっていたもの。豆皿飲みにちょうど良い!
この二つとこの本との出逢いが運命だったのではないかと感じてしまう、嬉しい一致。
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この本にはそれぞれの料理家さんの豆皿も載っている。飲みながら見てまた豆皿が欲しくなる。
六日目 豆皿中華つまみ
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五十嵐可菜さんの"あっさり中華つまみ"から3品
・じゃがいもとパクチーの和えもの
・かぶと柿のコチュジャン和え
・かつおのたたきと焼きなすの黒酢ソース
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鰹のたたきは切身を買おうかとしたけれど、
塊のまま表面を焼いたのを想像したら、時短なんかに勝てない。
鰹にはポン酢、焼き茄子には醤油、が王道だったのに. . 黒酢ソース、参りました!
茗荷も紫蘇も、全てが、豆皿の中で一体となってこの美味しさを完成させている。
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ぺらぺらなじゃがいもにパクチー、癖になるやつ。
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貰い物の柿にも飽きてきたころ、新ジャンル柿がやってきた! おつまみの柿! 辛い柿!
隣の蕪に勝ったかも。いや、蕪があるから柿が良い。
今日の三品は全て、わが家の食卓に旋風を巻き起こしてくれたなあ。
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七日目 旬を一品足し
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豆皿つまみを始めてから、冷蔵庫の作り置きが潤っている。ちょこちょこ余っているから、仕事から夜帰ってきても、食卓は勝手に賑わってくれる。
手間のかからない一品が日々加わってく。
手の込んだ料理が二日続くよりも良い気分かも。
今日は牡蠣を一品足す。
今季初の牡蠣! わーい!
前の晩の、ツナのハーブリエットと、桜えびとセロリのナムルがちょっとずつ余ったのを和えて。
ツレヅレハナコさんの"スピードつまみ"から
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器の話┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
このお盆も祖母からの貰い物。長くしまわれていてかびてしまっていた。豆皿のおかげでこれからは食卓の仲間入りだね。
この本が届くわくわくが止まらなかったとき、豆皿見たい欲も止まらなかった。小さな丸いのをお目当てに行ったのに、惹かれてしまったのはこれ。豆皿サイズのオーバル!
多分豆皿レシピに出会わなかったら見向きもしなかった。沢山乗らないオーバルなんて。
無駄を省いてったら見つからない小さな楽しみの余白を、この1冊がもたらしてくれた。
豆皿食卓、いいな。
楽しみの余地
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1週間後の金夜、帰宅して、
はぁ〜!とりあえず一杯!が叶った。
抱えていた子どもを下ろし、おちょこと豆皿を手に取り、冷蔵庫から余り物の豆皿料理をひとつ取り出す。これまでならそのままの容器でつまんでいただろう、(そもそも余り物など無くてお菓子をつまんでいたかな)でも今日は
わざわざ豆皿に盛って、お盆に乗せた。
これだけで充実感が違うことを知ったから。
使う必要がないと思っていた豆皿や盆が、急に輝きだした。楽しみの余地はこんなところにあった。眼福は心の栄養。
ちなみに今日はかつお節ピーマンの余りに、「にんにく畑」辛いオイルをかけて味変。"余り物"に憑く仕方無し感が全くなく新鮮。一品でもちゃんとしつらえる自分にも満足するのだろうか?とにかくなぜか、無駄に思えていたことが、とても心地良いことに気付く。
ここにも生み出せたんだ、充実感。
小さくて大きな幸せ、豆皿つまみ。
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