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【挑戦する先生インタビュー vol.1】ぐんま国際アカデミー中高等部 武田与恵先生
今回は、小中高一貫のIB認定校、ぐんま国際アカデミーの武田与恵先生にインタビュー!
マレーシアの日本人学校での勤務やザンビアでのJICA研修など、豊富なご経験をお持ちの武田先生。
8学年の数学の先生及び学年主任を務め、ATL(Approach To Learning)"学習のアプローチ"の授業の担当者として日々実践的な授業を展開しています。そんな武田先生に、これまでの経験や授業のつくり方、教師として大切にしていることを伺いました!
武田与恵先生プロフィール
埼玉県川口市出身。
大学時代に理学部数学科に所属しながらも、中国の東北師範大学へ1年間交換留学。大学卒業後は大学院に進学し、国際理解教育について研究。その後、マレーシアのクアラルンプール日本人学校で3年間勤務。
日本の公立中学校で4年間の勤務を経て、現在はぐんま国際アカデミー中高等部で8年生の学年主任を務める。教科は数学科。
ぐんま国際アカデミー
ぐんま国際アカデミーは群馬県にある小中高一貫校であり、「英語イマ―ジョン教育」を採用している。「英語を学ぶ」ではなく、「英語で学ぶ」を基本方針としており、国語以外のほとんどの授業を英語で行っている。
https://www.gka.ed.jp
ーーまず、武田先生のこれまでのご経験についてお話いただけますか?
武田先生:私が育った埼玉県川口市は多文化共生に積極的な町で、その関係で海外にバックグラウンドを持つ友達とよく遊んでいました。その背景から"多文化共生"、"異文化理解"に関心を持つようになり、大学生の時に中国に1年間留学し、それから大学院では国際理解教育を研究することにしたんです。
大学院卒業後はマレーシアの日本人学校に3年間勤め、日本に戻り公立学校で教えていました。それから知り合いを通じてJICAのザンビアでの教師海外研修を知り、参加を決めました。
今こうしてぐんま国際アカデミーに勤めているのも、JICAの研修で出会った先生にご紹介いただいたことがきっかけです。学校の先生方は、なかなか外部との交流が少ないので、学校外で行われている研修の場に積極的に参加をするように心がけています。
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ーー武田先生は8年生の学年主任としてATL(学びのアプローチ)を担当されておりますが、具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。
武田先生:ATLは"Approach To Learning"の略で、学習スキルを発達させるために、学びに向かう力を養うための授業です。実際に取り組んでいる内容は、公立学校で行われている"総合的な学習の時間"の内容に近いことをしていますが、ATLの5つのスキル(コミュニケーションスキル、社会性スキル、自己管理スキル、リサーチスキル、思考スキル)が身に付けられるように意識して授業に取り組んでいます。
例えば、私が担当している8年生では一年間の大きな行事として職業体験がありますが、そのような実践活動を通じて、学びに向かう姿勢や教科横断的な取り組みを実践しています。
現在の具体的な取り組みとしては、11月に職業体験があったので、受け入れ先の企業に手紙を書いています。今の時代、デジタルに頼ることが多くなっていますが、だからこそ自分の手で手紙を書くことの大切さも教えられたらと思っています。
ーーぐんま国際アカデミーは中等部からMYP(国際バカロレアの中等教育プログラム)を導入されていますよね。MYPの特徴の一つとして「概念の理解に重点を置く教育」がありますが、数学においてはどのように実践しているのでしょうか。
武田先生:今は「関係性」という概念を扱っています。
授業では、「水の温度と沸騰」や「図形の形や大きさの関係」など私たちの身の回りの関係性について触れ、それらは数学の知識を用いて表現することができることを教えます。その上で、より身近な生活の事物を取り上げて考えます。
先日はロードレース大会のコースの航空写真を配布して、数学の「相似な図形」の内容を扱い、自分たちが実際に走る距離を計算しました。
すると子供たちは興味を持って、カーブはどうやって計算するんだろうとか、道のどこを測れば正確なんだろうとか、より現実的に考えるようになりました。
こうして数学の内容と実生活のつながりを認識すると、学びに興味を持ち、主体的に取り組むことが分かりました。
ーー武田先生は大学時代から"国際理解教育"をテーマに研究・実践されましたが、数学の授業でそういった視点で授業を作ることもありますか?
武田先生:以前、埼玉県川口市に多く在住しているクルド人や中国人との多文化共生を題材にして数学の授業をしたことがありました。
彼らの伝統工芸品の模様に着目し、「図形の移動」という単元で、どういう仕組みでその模様が作られているのかを分析しました。こうして数学の知識が自分の生活や地域につながると生徒が数学に興味を持つきっかけになると思っています。
授業では、習ったことがどのように日常生活で応用できるのか、ということを知るきっかけづくりを大切にしています。
ーーしかし、中には数学が苦手で、興味持てない子もいると思うのですが、その子にはどのように対応していますか?
武田先生:私はグループワークをするようにしており、その時にグループの構成を特に意識しています。
事前に生徒たちにアンケートを取って、「数学が好き」、「人に伝えるのが好き」、「じっくり考えるのが好き」など、生徒の特徴を踏まえて、グループを編成しています。
やはり私一人の力だけで教えるのは難しいので、生徒同士で教え合う環境を作るようにしていますね。生徒同士の教え方も様々で上手く質問しながら教える子もいれば、ダイレクトに答えを教える子もいるんですけど、大事なのは楽しく学ぶことだと思っています。
なので、授業では一斉に解いて、一斉に答え合わせをするのではなく、生徒同士が数学を使って楽しく話し合いながら答えを導くプロセスを大切にしています。
ーーMYPの学校の先生の立場として、クリエイティブに授業をする楽しさはある一方で、それゆえの難しさもあると思うのですが、その点はどうですか?
武田先生:数学に限らない話ですが、中学生になると数学の理解力や技能にだんだんと差が生まれてきて、苦手意識も芽生えてきます。
そうすると、苦手な子は発言しなくなりますし、分からなくても、分かるフリをするようになるんですよね。
そういう難しさはあります。したがって、私は結果だけではなくて、そのプロセスに目を向けるようにしていて、なぜそう考えたのかを問うようにしています。
ーー結果よりもプロセスに目を向けるということですが、生徒の成績評価はどのようにされていますか?例えばテストはどのようにされているのでしょうか?
武田先生:数学では、知識や技能を測るテストもありますし、レポートの課題もあります。それぞれ年に2回ずつ出しています。
8学年の定期テストでは、知識や技能を測るために、図形の証明に関する問題を出しており、レポート課題では、しきつめ模様の分析や、相似な図形を使って身近な問題を解決する内容を記述してもらって、成績をつけています。
ーー生徒の「できた・できなかった」という結果ではなく、授業に興味を持って一緒に考えるプロセスを常に大切にされている武田先生。生徒を思い浮かべながらお話している時の先生の表情がとても朗らかで、その表情からも日々楽しく授業をされていることが目に浮かびました。
ーー最後に武田先生が今後挑戦しようと考えていることはありますか?
最近、公立学校をやめる先生がすごく増えている一方で、学びの場を学校以外に作っている人も増えています。いつかは私も自分の地元に帰って、そういう場所を作っていきたいなと思っています。
今、私たちは何か欲しいと思ったら買えばすぐ手に入るので、それがどこから来たのかわからないまま生活している人が多いと思います。
私は、自分たちが今食べているものや使っているものがどのように作られて、どのような流れで自分たちのもとに届いているのかを知ることで、自分も自然界の一部という感覚を思い出すことができるのではないかと考えています。そのために地域の子どもたちや親向けに、自然とともに学べる、寺子屋のような場所をつくることは一つの夢です。
今の教育のシステムは効率性ばかりが追及されていて、画一的な学び方で一斉に学ぶことが多いようにみえますが、それで目的を見失って、学ぶ意欲が落ちたら元も子もないと思っています。
そのため、自分たちがなんのために学んでいるのかということを大切にしながら、身体を動かしながら、五感で感じながら、「自然」を先生として学ぶ環境を作っていきたいと思います。
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武田先生ありがとうございました!
効率性や成果に目を向けられがちな教育の世界で、「何のために学ぶのか」という目的をブラさずに、生徒とともに考え、ともに授業を作っていくという姿勢が印象的でした。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました!