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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.28 「自由行動」
翌日もスキー。
昨日よりも心なしか上手になっている気がする。あくまで気がする、だが。
坂井のやつはコツを掴んだらしく、スイスイ横を滑っていく。
俺はというと、相変わらずズリズリ進むだけだった。ズリズリ、スルーっと少しは滑れるようにはなったが。
ズリズリ、スルーっを繰り返しているうちに、なんとなくコツが掴めてきた。スルー、スルー、と少しずつ滑れるようになってくる。
しかし、時間切れだった。
今日でスキーは終了。あとは明日から京都で仏像見学だ。
今日の夕飯は鴨鍋だ。さすが、冬。鍋は温まって気持ちいい。お酒は残念ながら出てこない。未成年だからねっ。
こんなとき前世の俺だったら、キンと冷えたビールを片手に鍋で温まれるのだが、未成年ときちゃあ仕方がない。
先生たちも飲みたいだろうに我慢している。生徒が寝静まったら宴会をしてるって、前世で聞いたことがあるが、本当だろうか?
食事の後、自由時間となった。
俺は広間の隅っこのほうでミキちゃんとおしゃべりをしていた。
そこへ松永がやって来た。
坂井を連れて。
松永はミキちゃんに話しかける。
「明日の自由行動は俺と回ろうな!」
「うん!」
ミキちゃんが超ご機嫌になる。
――っと、坂井が
「加藤さん、明日、よかったら俺と回らないか?」
と口を開いた。
「――あ、うん――」
思わず返事した俺。明日は百合子たちと回る予定だったのに……返事をしてしまったら仕方がない。百合子たちに謝らなきゃ……
それからしばらく、四人で話して過ごした。四人でといっても、俺と坂井は相づちだけで、ほとんど松永とミキちゃんがしゃべっていたのだが。
「明日は四人で回ろうか!」
松永が言い始めた。ミキちゃんがそれを、
「せっかくの二人の時間を邪魔したらいけないって」
と宥めた。俺としては坂井と二人きりより、四人で回るほうがよかったので、
「「一緒に回ろう」」
と言ったら、見事に坂井と被ってしまった。
「熱いね、お二人さん」
と松永にからかわれつつも、明日が楽しみで仕方がなかった。
翌日、バスの中でも爆睡。昨日の夜、恋愛談で盛り上がってほとんど寝ていなかったのだ。だから、俺以外の俺の班の女子は皆、爆睡。
そういや、バスガイドさんって、新米ドライバーもサポートするって、知ってた?新米ドライバーが迷子にならないように、タイミングを見て
「右手に見えますのが〜」
などと言って新米ドライバーさんに道を教えたりもするんだって。前世の社内旅行の時に聞いて初めて知った。
今日はベテランドライバーさんのようだから、心配はない。
待ちに待った自由行動時間。
俺らは、金閣寺から、清水寺を見て歩くことにした。
ミキちゃんはおおはしゃぎで、観光案内をしてくれる。
さすが、ミキちゃん。成績優秀なだけあって、歴史をちゃんと覚えているから、案内にも熱がこもった。
清水寺へ行く坂の途中にある、ガラス細工のお店を見て、ふと立ち止まる。すごく綺麗だ。
「中も見ていくか?」
後ろからふいにかけられた坂井の一言でドキドキする。
「う、うん」
どうも女の身体になってから、かわいいものとか、綺麗なものに目がなくなった。昔はこんなこたーなかったのに。これも女性の生理ってやつなのかな……
しばらくお店ていろいろ見ていると、綺麗なガラス細工の携帯ストラップを見つけた。
お揃いで欲しい……
と思っていると、後ろから坂井の手が伸びた。その、細身だけれど筋肉質な腕は、見るだけでドキッとする。今は冬服なので見えないが、夏にさんざん見てきたので、制服の上からでもはっきり腕の感触がわかる。
そんな腕にドキドキしていると、携帯ストラップを手にした坂井が、
「お揃いで買おうか?」
と真顔で聞いてきた。
俺は鼻血を出した。
「お、おそろ……いって?」
「京都記念に、四人でお揃い」
あは、四人で、ですか。
鼻血まで吹いた己を恥ずかしく思いながら、四人でお揃いのストラップを買ったのだった。
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