【連載小説】俺様人生 vol.25「楽しい仕事」
履歴書を書き終えると、スーツの確認をするアスカ。
「ちょっと太っちゃったみたいだけど、おかしくないよね?」
と俺に尋ねてくる。
俺が適当に
「うん、いーんじゃなーい?」
と返事をすると、適当に返事をした、と怒りだした。
最近のアスカは喜怒哀楽がはっきりしている。
これも元気になった証拠かな……
アスカの面接の日がやって来た。
スーツにバッチリ身を包み、気合いの入ったアスカ。
こんなアスカは久しぶりに見る。
俺はお店まで送っていくと、
「終わったら電話してね」
と言い、アスカを落として行く。
面接なんてそう時間はかからないだろう、と、俺は近所のコンビニで涼んでいる。
今頃カチンコチンになって面接してるだろうなぁと思うと、少し笑いが出てくる。
あ、悪い意味じゃないよ、可愛いなと思っただけ。
コンビニでしばらく待っていると、電話がなった。
アスカだ。
「レンくん、レンくん、私受かった!」
え?もう?と言う俺の言葉を遮ってなお続けるアスカ。
大興奮のようだ。
「今度の木曜日から来てくださいだって!」
よかったね、と言いながら俺は車をまわす。
アスカを拾うが、まだ興奮状態らしく、
「自転車、きちんと整備しなきゃ!」
と大きな声で言い続けている。
こんなアスカを見るのはかなり久しぶりだ。
よほど嬉しかったんだろう。
俺は
「よかったね」
と頭をぽふぽふした。
いつもなら子供扱いやめてよ、と言うアスカだが、今日は
「うん、やった!よかった!」
と返事する。
よほど嬉しかったんだな……と、俺はアスカを乗せて帰宅した。
木曜日。
二時ごろからごそごそ準備するアスカ。
どうやら靴下を探しているらしい。
「靴下はくるぶしまである黒の靴下だって」
「ふーん、細かいのな」
「下はジーンズでよくて、上着は今日までに店長が揃えとくって」
「上着はどんなの?」
「もう!こないだ行った時にみてなかったの?黒のポロシャツだよ!」
「あー、そうだったかな」
すると今度は、バッグがないと半泣きになる。
自転車通勤するのに、肩掛けのバッグが欲しいらしいのだが、今まではOLだったので、そんなバッグは持ち合わせていない。
仕方なく今まで使っていた革バッグに荷物を詰め込む。
出勤時間までもうしばらくあるのに、我慢できないのかアスカは出発してしまう。
「いってらっしゃい」
と見送る俺。
俺もそろそろ仕事しないと。と、DVDの編集作業に入った。
ふと気づくと、十時を回っている。
アスカが今日のシフトは十時までと言っていたので、そろそろ帰ってくるだろう。
俺は簡単に豚丼を作って帰りを待つ。
しかし、十一時を過ぎても帰ってこない。
おかしいなと思って電話をしてみる。
出ない代わりにメールがきた。
「締め作業教わり中。もう少しかかる」
簡素なメールだ。
作業中だからだろう。
結局この日は十二時に帰宅した。
「十時にシフトきれるけど、締め作業があるからだいたい十一時くらいみたい」
と、明るく言う。
アスカが問題ないなら、俺は全く問題がなかった。
アスカが楽しそうに仕事の話をする。
あぁ、やっぱり公務員はやめて正解だったんだなぁ、と実感する。
こんなに楽しそうに仕事の話をするアスカなんて、今まで一度も見たことがなかった。
すべては善き方向に向いている。
今はまだ、家賃を親に出してもらっているが、このまま続けばそれもいずれ自分で払っていけるかな、と、そう思った。
アスカは毎日楽しそうに仕事へ行く。
自転車では帰りにきつくなる坂があるのだが、帰ってきても楽しそうにしている。
夕飯は三時より前に、アスカが作ってくれて行くようになってきた。
いい流れだ。
俺の仕事も順調だ。
このままいけば、もしかしたら結婚……?と思った。
よろしければサポートをお願いします。 生きるための糧とします。 世帯年収が200万以下の生活をしています。 サポートしてもらったらコーラ買います!!コーラ好きなんです!! あと、お肉も買います。 生きていく・・・