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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.43 「宮崎さん」
「ユウちゃん、そこはこうしたほうがやり易いよ」
宮崎さんが言う。
確かにそうしたほうが早く出来た。宮崎さんはなんでも知っている。頼りになる。
自分もそうなりたい。
「ユウちゃん、先にあがっていいよ」
いつも先にあがらせてくれる。もちろん、高校生だからということもあるが、仕事がわんさか残っていても、あがらせてくれる。
「宮崎さん一人に任せるなんてできません」
と言って強引に残ろうともしたが、
「はいはい、子供は帰った帰った」
と言ってとりつくしまがない。
宮崎さんは後片付けもだが、レジしめも担当しているから忙しいはずなのに、必ず先にあがらせてくれる。
そんな宮崎さんに、あがる前に缶コーヒーを差し入れする。すごく喜んでくれた。
毎日毎日、飽きることもなく缶コーヒーを差し入れする。
そんなある日、宮崎さんと休憩が一緒になった。
ジュースを奢ってもらってしまった。
その時、オレンジジュースを飲んでいたので、缶コーヒーは飲まないのかと言う質問をしてみた。俺の中で休憩=缶コーヒーだったので、ちらっと思ったことだった。
すると、
「コーヒーは苦手でね、あまり飲まないんだ」
と言った。
俺は慌てた。今まで毎日、知らずにコーヒーを差し入れしていた!
その事に気づいた瞬間、宮崎さんもその事を思い出したらしく、
「ユウちゃんにもらった差し入れはちゃんと飲んでるよ!!」
と言ってきた。
「ごごご、ごめんなさい!!」
謝ると、
「いやいや、気にしないで! ちゃんと美味しくいただいてるから!」
と焦る宮崎さん。
「今度からはオレンジジュースにします……」
「いや、ホントに気を使わなくていいんだって!」
気を使わなくていいと言われても使います……
前世でも俺は休憩時間=コーヒーだった。
缶コーヒー片手にタバコを二本。これが俺の基本的な休憩スタイルだ。
今は女子高生だから、タバコはなしだが、休憩=コーヒーというのはやはり変わりなかった。
タバコ……吸いたい気もする……
でも、去年吸おうとしたときは激マズだったので、何となく疎遠だった。
しかし、仕事をすると癒しが欲しくなる。
宮崎さんはタバコも吸わなかった。
俺からすると、大人男子=タバコだったので、宮崎さんは真面目に見えた。
そんなところも素敵だ。
え? 今、素敵って言った? 気のせいでしょう。
坂井は相変わらず毎朝迎えに来てくれた。でも、だんだん会話が噛み合わなくなっていて、最近は話をすることも少なくなっていた。
坂井も何となく気まずい感じを感じ取っているらしく、黙ったまま登校した。
休み時間も坂井とは接することもなく、休み時間はミキちゃんか、佐藤と一緒にいた。
佐藤はやっと前の手術のことを乗り越えたみたいで、
「あのとき、ユウが辛かったね、って声をかけてくれてよかった」
と言ってくれた。それがきっかけで仲良くなれたのだ。
俺は次第に坂井よりも他の人間に惹かれていくようになっていた。
宮崎さんは今日も一人で居残りだ。
俺は勇気を出して、宮崎さんの帰りを待ってみた。
11時。
この時間に外にいると補導の対象になるのだが、バイトの制服をそのまま着ていたので、バレないかな、と思う。
宮崎さんが休憩室から出てきた。
俺は後ろから声をかける。
「宮崎さん!」
「あれ? ユウちゃん、まだ帰ってないの? 大丈夫?」
「宮崎さんが何時に終わるのか待ってみたんです」
「そんな、遅くなるから待ってなくていいのに!」
と驚いた顔をした。
「宮崎さんのおうちって、こっちの方なんですよね? 私も一緒の方向だから……よかったら一緒に帰りませんか?」
「いいよ。ユウちゃんちまで送るよ」
俺は自転車を、宮崎さんは原付を押しながら一緒に帰り始めた。
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