【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.31 「本音」
そのあとは順調にお寺を見て歩いた。
途中の土産屋さんで、父と母への土産も買う。
ユキノにはなんにしよう……
それから先の道では、俺は元気いっぱいだ。単純なものだ。自分でも分かりやすいと思う。ってことは、坂井もそう思ってるのかな?
坂井の表情を見ると、俺が元気になって安堵した表情をしている。
決して俺の機嫌がさっきの一件で直ったとは思っていなさそうだ。少しホッとする。
ミユキへのお土産はと聞くと、お揃いのストラップを買ってあるからいらないと言われる。
俺の、ミユキへの土産は絵はがきにした。ユキノとお揃いだ。
そのときだ。
ルンルンと歩く俺の手を、いきなり坂井が握ってきた。
「あんまり浮かれて歩いてると危ないから」
坂井はそう言った。
俺の心臓はバクバクで、それこそ坂井に聞こえちゃうんじゃないかというほど高まった。
そんな俺の顔を見ると、パッと坂井が手を離した。
「悪ぃ、つい、手がでちゃって」
坂井が言う。俺は、
「ううん。繋いでてほしいかも……」
なんて恥ずかしいセリフを言ってのけた。
坂井はちょっとびっくりしたようだったが、にっこり笑うと、
「じゃあ、繋いでいよう!」
と言った。
寺を巡りながら、俺は考えた。これは、絶対に俺のことが好きだ。こちらから告白しようか、それとも……
そんなことを考えていたので、後半半分はどこを巡ったのかすら曖昧だ。
告白しよう……と決めたのは夕飯のときだった。
俺の唯一の悩みは、俺の中身が俺だということ。つまり、男同士になってしまうということだ。
でも、そんなことは黙っていれば、俺は普通の女の子として過ごせる。
そうだ、この際全部夢だったんだと思おう……
いや、しかし、俺はやはり俺だ。黙って付き合うのはなんだか隠し事のようで嫌だ。って、隠し事なんだけど。
ミキちゃんにも、ミユキちゃんにも言ったことがない、けど、素直に話せばわかってくれるかもしれない……
俺はほんの少しのその確率に賭けてみることにした。
夕飯のあと、お風呂タイムを過ごして自由時間。
坂井は迷わず俺のところへやって来た。
ミキちゃんは松永としゃべっている。
俺は緊張しながらも、
「あっちで話さない?」
と、人のいないところを指差した。
「いいよ」
坂井は優しく微笑んだ。
「あのー、あのね、長くなる話かもしれないんだけど、いいかな?」
一応確認する。
「いいよ、大丈夫」
坂井のその一言に俺は話を始めた。
「私……というか、俺ね、前世は男だったんだ……」
今まで生きてきた世界について話す。
「それでね、ジャグラーっていう台があってね……」
ここまで話さなくてもよくね?と途中で思ったが、話を折るのもなんだったので、詳しく話した。
「――で、車に跳ねられたんだ。」
そこまで話すと、一旦ジュースを買いに自販機へ行く。
そしてまた戻ってから続きを話す。
その間、ずっとうんうん、と相づちを打ってくれる坂井。やっぱり優しい。
「――で、そんなことがあって俺が今いるわけなんだけど……」
「うん」
「俺、坂井のことが好きみたいなんだ」
「……ホントに?」
「うん、バリバリマジで」
「ただ、男なのに、こんな風に想われてたら気持ちが悪いかなぁって……」
「俺は今のユウが好きだ。中身が男だろうと関係ない。外見が男だったとしても、構わないかもしれない」
「ホントに……?」
「ホントだ。だから、付き合ってほしい」
「ああっ、セリフとられた!」
ふふっ、と顔を見合わせて笑う。
「返事は?」
「yesにきまってるじゃない!」
「ありがとう、話してくれて。俺の知らなかったユウを見つけられたよ」
「ミキちゃんたちにも話すべきかなぁ……」
「話さなくても大丈夫だよ、きっと」
そっか、そうだよね、と気持ちを入れ直して、坂井を正面から見た。
この人が、俺の初めての恋人……三十うん年生きてきて、初めての……
照れ臭いやら、坂井は顔を若干そらしながら言った。
「楽しいこと、たくさんしような!」
いいなと思ったら応援しよう!
