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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.20 「カラオケデビュー」
結論からいくと、妹はチクらなかった。
その代わり、明日の放課後瞬くんと会うのにうちで会いたいから、放課後二時間ほどあけていてくれと言われた。
俺より先をいく妹よ、お前はどこまでとんでゆく……
翌日、ミキちゃんに事情を話すと、それならカラオケに行こうという話になった。
ところが、どこをどう転んでか、クラスメイトの松永という男子と、あの坂井まで一緒についてくることになる。
坂井かぁー……いつもいつも睨み付けてくるあの坂井か……
俺は複雑な心境になる。
決していい感情ではない。それこそ、ミキちゃんのことをもし、奴が想っているなら余計に嫌だ。
俺はミキちゃんに、二人きりのほうがいいと言ったが、ミキちゃんはせっかくだからみんなで行こうと言ってとりあってくれなかった。
松永はいつも男子の輪の中心近くにいた。女子からの人気もそこそこある。
俺とは正反対の人間だ。
高校生当時、俺はカラオケになんぞ行かないぞと思っていたし、誘ってくれるやつもいなかった。俺はいつも同じ古本屋で漫画を一通り読み、コンビニに寄ってお菓子を買って家に帰るのが常だった。
家に帰ると制服のままお菓子を片手にゲームをする。そんな毎日を過ごしていたから、女子と一緒にカラオケにいくなんて真似は絶対にできなかった。
いわゆる草食系男子だった。いや、ぼっちだっただけだから、それは違うかも?
とにかく女子と一緒にカラオケに行くという松永は尊敬するに価した。
俺は放課後に向けて一人そわそわしていた。だって、またアニソン大会とかにしたら、松永と坂井がどん引くだろうと思ったのだ。まだ覚えていないNKB48のあの曲に手を出すべきか、いや、まだ完成していない曲を聴かせるのはよろしくないだろう。
俺の心は迷うばかりだった。
放課後になり、ミキちゃんが席にやって来る。
どこのカラオケに行くー?なんて話をしながら松永と坂井に合流する。
松永は普通に接してきたけど、坂井は無表情。しかもミキちゃんと松永から話しかけられたことにしか返事しない。あー、もう、俺嫌われてますよ!もう!
松永とミキちゃんが先に行き、俺たちは後を追うようについていく。ミキちゃんは意外と松永と仲がいいみたいだ。しらなかった。
カラオケについて、ワンドリンク頼む。俺がアイスカフェオレを頼むと、坂井が横から同じものを頼んできた。しかもシロップ二つというところまでかぶっている。先生、ここに真似しぃがいまーす!とでも言いたい気分になった。
部屋に入り、デンモクをいじる松永とミキちゃん。
俺は前もって
「流行らないアニソンしか歌えません」
と宣言しておいた。
曲が始まり、松永がマイクをとった。
上手い!すげー上手いよ、この人!!感動しちまうほどうまかった。ミキちゃんの番がきて、ミキちゃんがマイクをとる。
さすがだね、ミキちゃん!上手いしかわいいよ!
俺は電波系な曲をチョイスした。
上手くなくても上手く聴かせる名曲だ。マイクをとると歌い始める。最初は緊張してでなかった声も、サビに入る頃にはリラックスして出るようになった。
わけわかんない曲だろうに、乗ってくれる松永とミキちゃん。坂井はこれといって興味がある風でもなく、聴いてるの?!と聞きたくなる雰囲気だった。
そして、坂井の番がきた。
なにを歌うんだろう?とドキドキしていたら、ラブひめというゲームの歌を歌い始めた。この曲、俺には馴染む曲だけど、あとの二人は……と思ったら意外にノリノリ。しかも、坂井、お前、歌上手すぎ。鳥肌がたったもん。
こうして、俺の本当の意味のカラオケデビューが終了した。
帰り道、電車の中でミキちゃんがしきりに坂井の話題を出してきたのはきにいらなかったけど、それでも楽しい時間が過ごせたから、ま、いいや。と思った。
家に帰ると妹のユキノが慌てて部屋から出てきた。
「瞬くんは?」
と聞くと、後ろから制服のボタンをはめながら出てきた。
妹よ……どこまで先にすすんだの?
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