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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.25 「いじめ」

 それからも坂井は俺を見かけると挨拶をしてきたりするようになった。

ミキちゃん曰く、

「いい感じじゃん!」

だと。俺には何がいい感じなのか全くわからなかったが。



 次は化学室で実習だ。長いトイレの列をくぐって、慌てて俺は走って化学室まで行こうとした。

 そのとき、誰かが足を出して俺は転倒した。

「――ってぇ……誰だよ?」

教室には数人女子が残っていたが、誰が足をだしていたかわからない。

そもそも本当に足だったかもわからない。足だと感じただけだ。

残っていた女子は俺のその姿を見てくすくすと笑っている。

「加藤さん、次は化学室ですって。早く行った方がいいんじゃない?」

そしてさらにくすくすと笑う。

悪意を感じた。

 だが、誰がしたことなのかもわからないのに、この場にいる人たちを責めることなんてできない。

 俺は擦り傷を擦りながら化学室へと向かった。


 悪意はこれだけに留まらなかった。

朝から履こうとした上履きに画ビョウが入っていたし、教室の机は油性ペンで殴り書きがしてあった。


 そう、俺はいじめの対象となってしまったのだ。


 体操着も落書きされてダメになったし、置いて帰った教科書にも落書きがされていた。


 ミキちゃんに相談しようとしたけれど、松永と幸せそうにしているミキちゃんを見ていると、相談なんかできっこなかった。


 体操着はぐちゃぐちゃになっていたので、体育は見学した。


 いじめはだんだん激化していき、とうとう教室の机に花が飾られた。


――そう、葬式ごっこだ。


 もともとチンカス程の勇気しか持ち合わせていなかった俺は、最初の頃にもうギブアップしていた。無視できない。でも、誰にも相談できなくて、息が詰まりそうだった。


 さすがに見かねて坂井が叫んだ。

「誰だよ、こんなことするやつぁ?!」

男子は黙ったまま、女子は固まってる子とくすくす笑いをしている子に二分された。


 くすくす笑いを続けていた女子に、坂井がつかみかかる。

さすがにそれはヤバいだろ、と俺が後ろから止める。

「止めんな、ボケ!」

と言われたが、無理矢理俺は止めた。

「坂井には関係ない!!」

「関係なくなんてない!クラスメイトだろっ?!」

「俺がやられて気がすむならそれで俺はいいっ!」

俺は叫んでいた。ちびりそうになりながら、そう叫んでいた。

「なんで……誰だよ……こんなっ……」

坂井はまだ呟いていた。


 女子のくすくす笑いはいつの間にか止んでいた。


「俺は、怖いんだ。誰が俺にこんなことをしてるのか知ることが、怖いんだ」

俺は呟いた。


 結局その場はそれで終了。

ホームルームをはさんで放課後を待つのみとなった。



 坂井が聞いてくる。

「ホントに突き止めなくてもいいのかよ?」

「誰かの悪意を受ける俺の立場を考えてくれよ。今凌いだって、次のやつはまたでてくる。いじめってそんなもんだろ?」

坂井はきょとんとした顔で聞いてくる。

「さっきもだけど、なんで『俺』っていうの?いつもそうなん?」

俺はしまった、と思いつつ、

「本音を話そうとするとなるんだ」

と誤魔化した。誤魔化したと言っても事実なんだが。


 そんな姿を見つめる人影がいたことには全く気がつかなかった。



 塾に行き、ミユキちゃんに会う。ホッとする瞬間だ。この瞬間がなければ、俺はとっくにどうかなってしまっていただろう。

 ミユキちゃんと話していると坂井がやって来た。

「俺、やっぱり黙っていられない。犯人探すわ」

そう言いきると坂井は自分の席に戻って行った。


 ミユキちゃんが、

「なんのこと?」

と聞いてくるので今までのいきさつを話した。

「私としては、第二波、第三波がくるのが怖いから黙っていたいのよ。もうすぐ冬休みだし」

と続けた。

ミユキちゃんは怒り出して、

「ユウ、それはきちんと調べて片付けないと、悪をのさばらすだけだよ!」

と言ってきた。

俺的には今日ので帳面消し、明日からは普通の学校に戻るだろうと思っていたので、その件にはもう触れないようにしよう、そう思っていた。

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ちびひめ
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