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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.51 「水族館」
水族館は楽しかった。
まず、入り口のところで水族館のキャラクターとスリーショット。そのあと中へと進んでいく。最初に見たのは鰯の群れだとか、その他の小さめな魚たち。奥に進むにつれ、くらげ、かになどが観れた。
俺は、しばしくらげに目を奪われた。
くらげは七色に光りながら水槽の中で浮かんでは沈む。
「きれーい」
俺は握っていた手を離して見入った。
すかさず横から手を伸ばす坂井。
うふふ、焦っちゃって、子供みたい。
くらげは、たゆたう。ホントに綺麗だった。10分近くその場に立ち尽くしていた俺は、過去を思い出していた。
中学の頃の修学旅行。京都・大阪のコース。
大阪では水族館見学があった。
俺はたいして興味もなかったし、一緒に見る友達もいなかったので、水槽を華麗にスルーしていた。小さい頃に一度行ったことがあるらしいが、覚えていない。だから、まともに水族館で水槽を見るのは初めてだった。
「綺麗だなぁ……」
「そんなに綺麗?」
「うん、だってお姫様のスカートみたい……」
言っていてハッと気がつく。今のセリフ超はずかしくない?
坂井が握ってきた手を振り払ってしまう。
だが、今日の坂井は一味違った。
いつもなら振り払ってしまった手を再び繋ごうとはしないのだが、しっかとその手を坂井は握りしめると、
「次、行こうぜ」
と言った。
手を繋がれたままの俺は強い力で引っ張られる。
きゅん……
男の子って力強いよね。改めてそう思う。
すると坂井が
「ごめん、痛かった?」
と聞いてきたので、
「ううん、大丈夫」
と答えた。
俺は前世ではもやし男児であった。細マッチョに憧れて筋トレやシャドウボクシングを繰り返していた時期もあった。だけど俺にはいつまで経っても筋肉はつかず、結局草食系もやし男児であった。
そういえば去年の夏、プールで見た坂井の肢体は細マッチョそのものだったな、などと思い出して顔がゆでダコみたいに赤くなった。
すると、それを見た坂井は引っ張った手が痛かったのかと勘違いし、
「ホントにごめん、悪気はなかったんだ。痛かったよな」
と言ってきたので、自分の考えていることの恥ずかしさに余計に赤くなる俺だった。
去年も思ったけど、坂井は空気が、オーラがエロい。それはそのすらりとした肢体からくるものかもしれなかったし、仕草からくるものでもあっただろう。
俺の脳内はエロいことで充満した。
さっきから赤くなったまま戻らない顔。水槽の光が青いため、かろうじて坂井にはバレていない様子だったが、俺の挙動不審は坂井との距離をより密着させる結果となってしまった。
というのも、挙動不審になった俺を心配して、坂井が腕をしっかり絡ませてきたからであった。
赤い顔のまま俺は巨大水槽の前に立っていた。
目の前に広がる巨大な水槽に俺は息を飲んだ。
それは海の生態系をそのままに留めたオブジェのようでもあり、それ自体が一つの大きな魚のようでもあった。
ジンベエザメがゆうゆうと泳ぎ回る水槽は、ゆっくりと回遊していた。
「すごい……」
思わず口から漏れた。
「私、こんなの見るの初めて……」
俺は水槽の前で素直になる。
「初めてなんだ?」
坂井にそう聞かれて、口を開けたままコクンと頷いた。
巨大水槽でビックリしたあとは、深海魚コーナーだった。ネオンのように光る魚たち。漆黒の闇の中に灯る灯火のようだった。
それから水槽でできたゲートをくぐると、イルカショーの会場だった。
ちょうどあと10分後にショーが始まるところで、坂井はジュースを購入しに行った。
俺は二人ぶんの座席を確保しながら坂井の帰りを待った。
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