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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.42 「変化」
新学年がスタートする。
新学年は4つのコースに別れてスタートした。
国立理系、私立理系、国立文系、私立文系の4つだ。
俺は松永と一緒の私立文系コースだ。
坂井は国立理系、ミキちゃんは国立文系コースでのスタートだ。
私立文系コースは、数学と理科系の教科はなく、授業数が一番少ないコースだ。女子率が高い。
俺は出来れば坂井と同じ県内の大学を受けたかった。坂井の目指す学校はT大学。だから、都内にいればそのまま付き合える、そう思って志望校を選択した。
俺の志望校は、KO大学だ。
塾もコース別になり、坂井とはクラスが別になった。ミユキちゃんとも別。
俺は『私』と呼ぶことにも慣れて、すっかり乙女ロードまっしぐらだ。
月に一回のあの日にも慣れた。慣れても痛いものは痛いし、苦しくて辛かったりもするけど、その度に女子であるということを再認識できた。
新学年始まって最初のホームルームは自己紹介で始まった。
「加藤ユウです。国語が得意です。よろしくお願いします」
簡単な挨拶を済ませ、席につく。ふと見ると、松永がグッジョブ! と合図してきた。そんな松永に俺もグッジョブ、と返した。
休み時間になり、ようやくミキちゃんと会えた。
今までどんなに恵まれた環境にいたのか、今さら思い知らされる。
坂井はクラスに遊びには来なかった。
俺はミキちゃんといることが多く、坂井を訪ねてクラスまで行くこともなくなりつつあった。
坂井とは学校の行きだけ一緒だった。相変わらず自転車で毎朝迎えに来てくれる。
唐突ながら、俺はバイトを始めた。
ショッピングモールの中の飲食店。丼ものやお好み焼きなどを扱う店舗だ。
なぜバイトを始めたかって?それは、塾も志望校別で授業数が減り、時間の空きを埋めたかったからだ。
時間に空きが出来ても、坂井と会える時間は少ない。空いた時間を何かで埋めておかないと、寂しくておかしくなりそうだったからだ。
学校の帰りは一人きり。そのあとの時間はバイトだ。
バイトを始めて初めて収入を得るための苦労を知った。今まで母や父に甘えてばかりいた自分を恥ずかしいと思った。
バイトは他の学校の子ばかりだった。俺の学校は一応進学校だったので、バイトなんかしてる奴はほとんどいなかった。と言うか、俺も俺以外にバイトをしている奴なんて知らなかった。
バイトを始めたことで、友達も急激に増えた。
バイト仲間でカラオケに行ったりもするようになった。
バイトは楽しかった。
ここにきて、改めて自分の今までを考えるようになった。
今までの自分は頼りなく、自己主張もせず、のらりくらりと過ごしてきた。
しかし、このままで本当にいいのか? と、もし尋ねられたら答えに困っただろう。
今までの自分って、コトナカレ主義で、誰かに頼ることで生きてきた。それってズルくない? と、今さら気づいたのだ。
確固たる自分が欲しいと思うようになった。
たかがバイト、されどバイト。
社会に出て初めて知った自分の不甲斐なさ。
誰かに頼ることでしか生きれない頼りなさ。
そういったものを全て目の当たりにした。
そんなとき、バイト先の先輩と知り合った。
先輩の名前は、宮崎さん。大学生の男性だ。
宮崎さんはしっかりした人で、大学へは奨学金とバイト代で通っているらしい。俺の周りにそういうしっかりした人がいなかったからか、俺は宮崎さんを尊敬するようになった。
それは至って自然なことだったように思う。
その気持ちが恋心に変わると思いもせず、ただただ、今は尊敬する毎日だった。
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