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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.58 「夕飯」
「マサユキ、どうしたの?」
と俺は声をかける。
「いや、携帯を忘れたみたいで」
としゃがみこむ。
「あ、あった、あった。ごめんね、何度も」
「いや、いえっ、大丈夫です」
「え?」
挙動不審な俺に坂井がいぶかしげな顔をしてみせる。
「な、な、な、なんでもないっ」
「あぁ、まだ頭痛がするのか……」
俺の方へやって来る。近づくと頭をコツンと当てて
「熱は……ないな」
と言う。
「熱なんかないよっ! 早く帰らないと電車に乗り遅れるよ!」
なんだか急かすように言ってしまう俺。
「そう急かさなくても……」
「ええっ、急かしてないけど……」
「とりあえず今日は塾もあるし、もう帰るから、安心しなね。」
坂井はそう言って部屋を出ていった。
「ぷはぁっ!」
クローゼットに押し込んだユウスケが顔を出した。
「なんで僕、隠れなきゃいけなかったの?」
「そ、それはそうだけど……」
「お友達ならいても別に構わないんじゃないの〜?」
「そ、それは……」
確かに言えている。なぜ俺は思わずかくまってしまったのだろう。
やましい気持ちがないならば堂々と会わせればよかったのではなかろうか。今更それを言われても……
「でもよかった! クローゼットの中はユウさんの香りでいっぱいだった!」
ちっ、この変態天使が……
「私の香りって、どんなんだよ!!」
「えーっ、クローゼット開けたらわかるんじゃない?」
思わずクローゼットを開ける。でも、特に匂いを感じない。
「そりゃそうだよね! 自分の香りって他人にしかわからないもんね」
あ、こいつ、今騙したな?
ユウスケは帰る素振りを全く見せない。
「ねぇ、いつまでいるの?」
若干イラつきながら俺は聞いた。
「うーん、いつにしよっかな?」
なんでそんなに楽しそうなんだ!!
そこへ母がやって来て言った。
「せっかくなら、猿渡くんもうちでお夕飯食べて帰る?」
「え"っ」
「ええっ、いいんですかぁ?」
「もちろんよ! 今日はカレーだから、たくさん作ってあるからね」
と母はウィンクして見せた。
いらないことばかりする……
「じゃあ、おばあちゃんに電話しなきゃ」
といそいそと携帯を取り出す。
「あ、おばあちゃん、僕、僕。今ね、お友達の家にいるんだけど、夕飯ごちそうになってから帰るから……うんうん……はーい」
と言って携帯を俺の方へ差し出す。
「おばあちゃんがお世話になるなら一言お礼が言いたいって」
えーっ、なんで俺が出るのさ!!
「もしもし、代わりました……いえ、こちらこそいつもお世話になっていますから……はい……はい……バイトには来週から行く予定ですから。……はい、ありがとうございました!!」
そう言うと携帯をユウスケに突っ返した。
「はい、僕。……わかってます。ちゃんとお礼言ってくるから、大丈夫。じゃあね」
「おばあちゃん、あれからも毎日来てくれてるんだね……」
ちょっとセンチメンタルな気持ちになる。
「僕も毎日行ったよ!!」
「あぁ、そうね、ありがとね」
「なんか今気持ちがこもってなかった!!」
「そんなことないわよ」
ユキノが帰ってきてからしばらくして夕飯の時間となった。
それまではユウスケの宿題の話をしていた。
さすが会心高校、教わっている内容は俺が二年生、つまり俺が俺になった頃の内容を勉強していた。
「三年生になったら、あんまり学校行かなくてもいいんだって」
「へーぇ」
「二年生までに三年生の分を習い終えるから、行かなくてもいいんだって」
そんな学校もあるんだなぁと感心した。
夕飯はにぎやかだった。
珍しくお客様がいるというだけでこうも違うのか、と言うほどだ。
我が家はみんな仲良しだけど、今日は円を描くようににぎやかだった。
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