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【連載小説】平々凡々な会社員が女子高生に!? vol.22 「塾」

 俺は塾に通うことにした。

 だって、ミキちゃんがいなくなったらぽっかり時間に穴が空いてしまったから。その上、帰宅すると妹とその彼氏がいちゃつく様を見せられて苛々していたからだ。


 塾は家からさほど遠くない、自転車で行ける場所にした。


 塾は意外に楽しかった。まだ友達はできないけれど、何と言うか、目標に向かって一丸となれる感じがしてよかった。


 前世の俺も塾には通ったことはあったが、こんな雰囲気ではなかったと思う。

いや、俺が一人で突っ走っていたせいもあっただろう。

 当時の俺は周りなんか見えていなかった。がむしゃらになることもなく、なるようになれと、ただ適当にそう思っていた。塾に通うことも本心ではなく、一応大学を目指すという言い訳のもと、親に通わされていたのだ。


 それが今はどうだろう。塾のおかげで勉強ぼっちになる可能性は低くなり、あと一歩で友達もできそうだ。


 その日座った席の横には、新入りさんが座った。

新入りさんは県内で一番偏差値が高い学校の制服を着ている。

恐る恐る話しかける俺。

以前だったらこんな行動絶対にしないだろうけれど、今は不思議と勇気が湧いてきて、ごく普通に話しかけていた。

「その制服、緑ヶ丘高校だよね?」

「そうだけど、何か?」

おろっ、意外に冷たい反応。

「いや、すごいなと思って」

「そう。」

その日交わした言葉はそれだけだった。


 翌日も隣の席に座る。

「学校、どこ目指しているの?」

「あなたには関係ないでしょ」

その翌日も隣の席に座る。

「ねぇ、名前何て言うの?」

とうとう彼女は爆発した。

「いい加減にしてよ!私はあなたと話すためにここに来てるんじゃないのよ!!」

「わかってるよ。大学行くためでしょ?」

「わかっているならどうしてしつこくするの?!」

「私はあなたと友達になりたいから」

「ふざけないでよ!」

「ふざけてないよ」

その言葉に彼女は言葉を失った。

「ふざけてなんていないよ。私はあなたに興味があるんだよ。だから、友達になってほしい」

「そんな、無茶苦茶な理由……」

「友達になるのに理由なんて、そもそも必要じゃないでしょ?」

「それは、そうだけど……」

そこまで話すと一限目が始まった。

 ノートに書き写す俺。彼女はノートを開いたまま、固まっている。

ちょっと押しが強かったかな……と思いながら書き写す。


 一限目が終わって、また彼女に話しかける。すると彼女は

「の、ノートを見せてくれない?」

と聞いてきた。

さっきの授業、全くノートを写してなかったもんね。

 俺は

「友達になってくれるなら、ノートを貸してもいいよ」

と言った。彼女は下唇を噛みながら言う。

「わかったわよ……友達になればいいんでしょ?」

「交渉成立ー。」

俺はノートを貸した。



 俺がここまでしつこくしたのには、理由があった。

彼女は、ミキちゃんにそっくりだったのだ。

メガネをかけているところから、仕草まで、なにもかもが似ていた。


 こうして俺は塾で一番目の友達をゲットした。


 塾はほぼ毎日あった。

だから、俺と彼女が打ち解けるまで、そう時間はかからなかった。

彼女の名前はミユキ。坂井ミユキだ。


 俺はこのとき、坂井という苗字にピンときていなかった。


 坂井。そう、あの坂井だ。



 それから程なくして、坂井が塾に入ってきた。

相変わらず人を睨んでいる。超感じ悪い。


 ミユキが坂井のところまで歩いていく。なんだ?知り合いなのか?

特に気に富めないように努力した。


 ミユキとは、ビックリするほどに仲がよくなった。パズルのピースがちょうどはまったように、だ。

 ミユキとミキちゃんの差は、胸の大きさだけ、という程二人は似ていた。

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ちびひめ
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