【連載小説】俺様人生 vol.13「話」
「どうしてそんなに怒ってるの……?」
アスカが恐る恐る聞いてくる。
「自分の行動を考えてみろッ」
「私は、ただ、レンくんとハニタンが仲良くなったらいいな、と思って……」
「それであのバカ男もへらへらついてきたってわけ?常識で考えろよ!」
俺の言葉に、アスカは沈んでいく。
更に攻め続ける。
すると、アスカの呼吸がおかしいことに気づく。
過呼吸だ。
前にもパチンコのことで喧嘩になったときにもなった。
急いで紙袋を探す。
こんなときに限って捨てちまったよ、マックの紙袋!
仕方ないのでビニール袋で代用する。
ビニール袋でも功をそうしたのか、アスカの息が落ち着いてくる。
落ち着いてくると今度は吐きだした。
俺はアスカの背中をさする。
ティッシュもたくさん持ってきた。
「全部吐いちゃえよ、楽になるから、もう大丈夫だから」
アスカは胃液がからっぽになるくらいまで吐いて、疲れて眠ってしまう。
アスカは多分純真で、それが故に今回のことを起こしたんだろう。
純真なところはアスカの長所でもあるが、同時に人を傷つける短所でもある。
俺は今回のことは、もう許そう、そんな気分になった。
俺はいろいろ考えて、朝方まで眠れずにいた。
ふいにアスカが起き、それから話をする。
アスカが離婚したのは、ネットで知り合った人に一目惚れしたからだと言う。
それからその人物としょっちゅう会うことになり、それまで借金からなにから面倒を見てくれていた旦那さんに嘘がつけなくて、離婚に至ったらしい。
借金があったので手元で子供を育てるのは無理と判断、旦那さんに託したらしい。
この頃にはもう、病院のギャンブル外来には通っていたそうだ。
それからその惚れた男と幸せになろうとしたが、
「浮気する女は嫌い」
と言って、二股をかけていた彼女のほうと結婚してしまったらしい。
元々実家とは折り合いが悪く、給料も親が管理していたために、借金地獄へと身を投じることになったこと、離婚して帰ってからも似たような状況で、元旦那さんと、一度まとめた借金を越えて借金をし始めたこと……
いろいろな話をした。
俺の中で、アスカに対する気持ちが強くなっていた。
3月になり、大学は休みに入った。
ハニタンもこっちへ戻ってくるらしい。
俺はアスカがいるから、一泊二日だけ帰ることにした。
くれぐれもギャンブルにだけはいかないように、と一応釘はさしておいた。
まあ、無駄だろうけど。
自己破産の話も順調に進んでいて、毎日家計簿をつけていた。
ただ、あとはギャンブルがやまない限り、破産は難しかった。
司法書士事務所にお願いしていた。
俺も何度も送迎した。
司法書士さんから言われたとおり、一月五千円を積み立てること、これが意外に難しかった。
五千円を入れておくと、アスカが勝手におろしてギャンブルにつかってしまう。
だから、なかなか貯まらなかった。
俺が一泊二日の帰省から戻ると、アスカがニコニコしながら出迎える。
なにか良いことあったのかな?と思いながら部屋へ入ると、部屋がかなり片付いていた。
積まれていた本はカラーボックスにおさまり、こたつ周りもきれいになっていた。
「二日かかったんだよ!」
アスカが自慢気に言う。
……ということは、二日間ギャンブルに行かずに過ごせたということだ!
俺は両手をあげてアスカとハイタッチをした。
「やればできるじゃん!」
「まあね。正直まじでしんどかったけどね」
その夜は久しぶりに回転寿司に行った。
旨いもの食べて、よかった、よかったじゃん、と繰り返しアスカを褒めた。
だが、現実はやはり厳しかった。
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