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【コラム】出会いが視野と可能性を広げる

2020年の3月4日5日に2Daysで開催された「未来の住職塾サミット」に参加してきました。今日は、サミットに参加して感じたことを通して、「出会いが、視野と可能性を広げる」というテーマについてお話をさせていただきます。


▷過去、現在、未来のつながり

サミットの2日目に、未来の住職塾の塾長である松本紹圭さんの講演がありました。そこでおっしゃっていたのが、Connecting the dots、つまり点と点がつながるということでした。

スティーブ・ジョブスの話などを例に、今やっていることが、将来何かにつながってくること、また、人との出会いによって、私という点と他者の点とがつながり、視野も可能性も広がってくることをおっしゃっていました。

今やっていることが、将来何かにつながってくると思えることで、今やっていることの意義や勇気をもらえるようにも思います。

どういうことかというと、将来について考えれば考えるほど、想像ができない、難しいと感じるようなことが、皆さんにもないでしょうか。仕事やプライベートで意志決定をする際には、人によって程度の差はあれ、将来のことを考え、想像をするかと思います。そして、その意志決定が自分にとって大きなものであればあるほど、ある程度先を見通したいと思います。

例えば、大きな金額の投資が必要なこととか、人のいのちや将来が左右されるような場面、プライベートでは結婚や、自分の人生や子どもの将来を決めるような選択の場面などです。

そのような、自分にとって大きな案件や、大きな意味を持つような意志決定の場面では、未来を想像し、見通そうとしますが、そうすればするほど、それは簡単なことではないと実感されるのではないかと思います。

人は、先が見えないという難しさの中で、不安や恐れを抱くこともあります。だからこそ、今やっていることが、将来何かにつながってくると信じることで、勇気となり、意志決定や行動を後押しするものであると思いました。

たとえ、その意志決定によってとった行動が、一見失敗のように見えても、それをもとに、また改善すればいいし、やり直せば良いわけですよね。その行動や経験をしなければ、見えなかったことが、行動や経験をしたことで、見えるようになったり、そちら側にいったらだめだということも分かるようになりますね。

何でもすればいいということではありませんが、今やっていることが一見効果がないように思えることも、将来必ず重要になることなんだと実感しているならば、それが将来つながってくることを信じ、行動していくことが大切であることを思いました。


▷出会いによって、視野や可能性が広がる

また、出会いによって、点と点がつながり、視野や可能性が広がるということも、講演のテーマになっていました。一人との出会いや、一つの場に参加したことによって、有機的なつながりがうまれ、可能性が広がってくる。そして、全く自分も予想しなかったことに展開していくこともあります。

点と点がつながっていくということは、自分の過去、現在、未来とがつながっていくということもあるでしょうし、また、自分という点と、他者という点とがつながっていくということも言えるでしょう。

自分の現在にも複数の点と点のつながりがあり、他者にも複数のつながりがある。そこが、人や場を介してつながっていき、最初は全くつながっていなかったように感じられる点と点がつながり、共鳴することを感じるということを、松本さんがおっしゃっていましたが、それは私も最近実感としてあります。

いや、実は最初からつながっていて、自己と他者を分け隔てているような自分のあり方に問題があるのかもしれませんが、今回の内容とは少しずれてきそうなので、全てのものはつながっているという観点については、またの機会に取り上げたいと思います。

今回の住職塾サミットに参加して、多くのつながりと可能性の広がりを実感しました。

具体的には、今回、エシカル協会代表理事の末吉里花さんの講演もありましたが、そこで、地球環境の破壊や、人権侵害、貧困の問題、生物の多様性が失われていることなどを聞かせていただきました。

それらの問題が、自分とは関係のない、遠い問題ではなく、自分が着ている服や、食べているもの、使っているエネルギーなど、自分が日常の中で触れている非常に身近なものの背景にある問題であることを教えていただきました。

例えば、コーヒー豆やコットンなどが、小さな子どもたちが過酷な環境で働き作られている現状。チョコレートをつくっている子どもたちが、そのチョコレートを手に入れられないような貧しい状況にあること。甘いチョコレートの裏側の甘くない現実。

全てのものがそうではありませんが、そのような現実があることを知ることで、今私が口にしているもの、身に付けているものすらも、その生産者とつながっており、過酷な労働環境を自分が後押ししてしまっていることなどにも気付かされました。

遠い国の遠い問題ではなく、自分と身近につながっている。だからこそ、自分が接する商品やサービスの背景を知り、それによっておこる過去、現在、未来のことを想像しながら、人や社会、地域、地球環境などに思いやりのある考え方、行動をすることの重要性を学びました。

これは、全てがつながっているという縁の考え方にも通じることであり、点と点が良い意味でも悪い意味でもつながっていること、共鳴してしまうこと、そして背景を知って、思いやりの心をもって行動していくことの重要性を感じさせられました。

人や社会、地球環境、地域に思いやりのある考え方、行動を大切にするエシカルとは、そもそも、日本人が昔から大切にしてきたことであり、仏教が大切にしている、おたがいさま、おもいやり、もったいない、足るを知る(小欲知足)というような価値観とも、親和性が高いことも教えていただきました。


▷具体的な実行にまでつながる

さらには、末吉里花さんの講演の質疑応答の中で、参加者のお坊さんが取り組まれていることなども伺い、具体的な行動についても学ばせていただきました。

小池陽人さんというお坊さんは、エシカルな話をする場や、エシカルな素材を使った服を着たファッションショーなどをお寺でおこなう、テラシカルという企画を支援し、開催されているそうです。

同じ僧侶で、お寺の場でエシカルな活動を支援されている小池さんとの出会いや、事例を伺うことで、私の中では、お寺とエシカルとが実際につながっているということ、それをまた、どのようにおこなえばよいのかということまで学ぶことができました。

一人との出会い、一つの場への参加によって、点と点とがつながり、可能性が広がっていくこと、そして、一見、つながっていないように感じることでも、実際にはつながっており、共鳴していること、それが見えてくるようにもなることを、実感として学びました。

自分一人では考えもしなかったこと、できるなどと思えなかったことが、具体的にどうしたらよいかという行動レベルまで落とし込め、実際に行動につながる、そのことが凄いことだと思います。

エシカルな行動は、僧侶としてお寺で何かおこなうということだけでなく、一人の消費者、サービス利用者として、エシカルなものを選んで購買行動をするなどの身近な行動からも、勿論できること、そういうことを知って、行動にもつながること。色々なことを教えていただきました。

それも、一人との出会い、一つの場への参加ということから始まっています。今日は、「出会いが、視野と可能性を広げる」というテーマについて、住職塾サミット参加と、松本紹圭さんや、エシカル協会の末吉里花さん、僧侶の小池陽人さんとの出会いなどの具体的な事例をもとに、お話をさせていただきました。

最後まで、お読みいただき、ありがとうございます。

合掌


浄土真宗本願寺派 教證山信行寺

副住職 神崎修生

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