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社会インパクトと経済性の両立を目指して:Theoria technologies創業ストーリー
Theoria technologies株式会社 執行役員
城倉 亮(じょうくら りょう)
2004年に東京大学文学部卒業後、全日本空輸、NTTデータ経営研究所、リクルート、エムスリー、ラクスルにて一貫して人事領域のキャリアを歩む。2021年10月にエーザイに入社。2023年9月にTheoria technologiesを設立、代表取締役に就任。現在は執行役員として人事領域や経営/事業成長と組織創りに携わる。
週に一度は近所のゴールドジムに通い健康管理に気をつけている。
エーザイからTheoria technologiesへ
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――はじめに、城倉さんがエーザイに入社したきっかけを教えてください。
「日本企業が積み上げてきた資産を活かし、社会にイノベーションを生み出したい」
というのが、エーザイに入社した2021年10月から私の心に変わらずにある想いです。2021年当時、私はベンチャーのラクスルで人事担当役員をしていました。ベンチャー企業の活力ある雰囲気のなかで充実していたのですが、「自分の仕事が、どこまで社会へのインパクトを生み出せているのか?」という点では、正直に言って、悩んでいるところもありました。
そんな時、エーザイが中期経営計画に掲げたエコシステム構想にむけて、IT部門の体制強化に取り組んでいて「この領域の人事担当者を探している」という話に出会い、上記の志を持って、エーザイに入社することにしました。
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――Theoria設立前は、どのようなプロジェクトに携わっていたのでしょうか。
エーザイ入社直後は、IT部門の要員計画を提案したり、エンジニアの中途採用面接の運営など、人事の仕事が中心でした。しかししばらくして「地道に採用だけを続けても非連続なIT組織体制の強化はできない」という大きな課題にぶち当たり、組織強化をさらに加速させるためのシステム開発に強い会社のM&Aの検討が始まりました。
のちにエーザイのグループ会社となるArteryexのM&Aに関わらせてもらい、2022年4月からは、認知症エコシステム構想にむけた事業全体を統括する部門責任者のミッションを担うことになりました。
さらに2022年8月には、ライフネット生命への出資をリードするなど、入社してわずか1年の間でどんどん仕事内容が変わっていきましたが、常に社会インパクトを生み出すために「何を実現すべき」かを見定め、とにかく突き進んでいる感じでした。
そんな大きなうねりのなかで、2022年秋に新会社設立という新たな取り組みが動き始めたのです。
認知症エコシステムの構築を目指した新会社設立への道のり
――先ほど「非連続なIT組織体制の強化」が課題だったと話がありましたが、その課題感がTheoria設立へと繋がっていったのでしょうか。Theoria設立の構想が生まれた経緯を教えてください。
「IT事業部門を別会社化する」という構想は、「かなり前からアイデアとしては出ていた」と聞いていましたが、具体的には進んでいませんでした。
しかし、私がエーザイに入って約1年間、エコシステムに関わる事業を担当するなかで、エーザイにおける意思決定の仕組み・風土は、製薬ビジネスには最適化されていましたが、ITデジタルの事業のそれとは大きな違いがありました。
このエーザイという組織のなかから、デジタルプロダクトを世に出していく、エコシステムの土台になるようなプラットフォームをつくっていくのは、難しく、成果につながりにくいと日々感じていました。そんな閉塞感が高まっていた状態を打破するために「別会社化に向けた検討を本格化すべき」という提案に至ったのです。
具体的にこの構想を関係者にぶつけ始めたのは2022年の秋頃で、会社を設立する2023年9月までに、約1年の時間をかけました。最初はアイデアベースの構想からスタートし、少しずつ言語化し、何度も議論を重ねて具体的な構想を描きなおし、エーザイのCEOをはじめとした役員陣の力も借り、アイデアをブラッシュアップしていきました。そして、2023年夏にエーザイでの経営会議での決裁を経て、会社設立に至りました。
「会社設立までの道のりは苦難の連続であり、想いのある人物がリードしなければうまくいかない」と強く信じていたため、会社立ち上げの提案者であった私が会社の代表を担うことは了承を得ました。一方で、設立当初から、自分以外の経営の中核メンバーを早期にそろえたいということは主張し続けていました。自分のこれまでの経験から、複数の専門性のあるメンバーで経営チームを組み運営していくほうが、成功確率が上がると考えているからです。
現在、30名を超えるメンバーが集まっていますが、経営メンバーのみならず、一人ひとりが際立った個性、豊富な経験、そして専門性を有した人材が集まっている、サッカーのレアルマドリードのようなスター人材の揃った組織になっていて、これは設立当初からの構想がまさに結実していると思っています。
少数精鋭での船出と基盤づくり
――城倉さん含めエーザイの社員3名によってTheoriaがスタートしました。創業メンバーはどのように集めたのでしょうか?
いよいよ会社設立のGOが出た段階で、まず着手したのが創業メンバーの検討でした。Theoriaがスタートを切るにあたり、重要な課題が2つありました。
まず、会社を立ち上げることは決定したものの、事業開始時に取り扱うプロダクトは確定しておらず、多くのことが決まっていない状態で、全体像が十分に見えていませんでした。そのなかで、いきなり大勢のメンバーをそろえるというよりも、幅広く対応ができる少人数のメンバーでやるべきだと考えました。
また一方で、半年後の2024年4月からは事業を開始することが決まっており、急ピッチで規程やルールなど会社の土台を整えなければなりません。
この2つの観点から、まず新会社の専任となるメンバーの人数は絞ってスタートし、一方で兼務という形でエーザイの様々な分野のエキスパートの方々に関わっていただき、効率的かつ効果的な土台づくり、ルールづくりを進めようとしました。
その考えのもと、エーザイの人事とも議論したなかで、代表である私に加え、エーザイで事業部門で活躍していながらもITに関する知識・経験もあった三宅さん。
そして、会社の土台づくりという観点で、センシティブな個人情報を含めたリーガル面が重要になると考え、エーザイのエコシステム構築を法務部でサポートしてくれていた大上さん。
この2人にエーザイから専任メンバーとして出向してもらい、その他、薬機法関連、ファイナンスなど、それぞれの専門領域のメンバーに兼務という形で力を出してもらうといった体制を構築しました。
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――立ち上げ期で、印象に残っていることはありますか?
正直、最初の半年間は一つひとつの出来事があまり記憶に残っていません(笑)。
ゼロから会社を立ち上げたので、やらなければいけないことは大きなことから、会社の印鑑づくりのような小さなことまで本当に数多くありましたし、その中で様々な事を意思決定しました。
そういった立ち上げも、エーザイの各部門のサポートならびに社内メンバーのサポートがある中で、なんとか乗り越え、この一年よくやってこれたと思っています。
大変なことはたくさんありましたが、設立当初に一番悩み、大きな判断だったのは「社名」決定でしょうか。外部のコピーライターの力も借りながら、「社名から想起するイメージで何を重視するか?」ということや「エーザイの冠を使用するか?」など、複数の検討にあたっての論点を挙げ、創業メンバーでアイデアを出しあい、結果として70以上の社名候補を出しあいました。そこからさらに1か月近く時間をかけて、何十時間も悩み、議論をして「Theoria technologies(テオリア テクノロジーズ)」に決定しました。この社名は我々が大切にしたい想いである「サイエンス」「テクノロジー」「本質」「人のつながり」といった要素を凝縮させていて、この社名は「我々の思いの結晶」です。
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まだスタート地点に立ったばかり
――創立から約1年が経ちました。Theoriaへの思い、そして今後の展開について一言お願いします。
2024年12月末に、Year End Partyがあったのですが、30名を超える体制となり、本当に素晴らしいメンバーに集まってきてもらえたと目頭が熱くなりました。これまで様々な企業を経験してきましたが、一緒にいる仲間の魅力はピカイチだと思っています。
このチームで解決できない課題であれば、まあそれは仕方ないかなと思えるくらい、素晴らしい仲間が集まってきてくれたことをとても嬉しく思っていますし、このチームならばきっと難しい社会課題に対しても解決していけるのではないかと思ってます。
まだまだ仲間を募集していますので、ぜひこれを読んでいる皆さんも我々のチームにジョインして、大きな社会課題解決に力を貸していただければと強く思っています。
設立までの1年、設立後の1年、いろいろなことを乗り越えてきましたが、まだスタート地点に立ったばかり。Theoria technologiesの歴史の1ページ目が始まったところです。
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Theoria technologiesでは、エンジニア含め、様々な経験を持った方を積極採用しています。日本に限らず、世界的に大きな社会課題である認知症、一緒に様々な解決策を創り、社会的インパクトを創出していきましょう。