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行動変容とデジタルで認知症に立ち向かう未来を創る
Theoria technologies株式会社 プロダクトマネージャー
田沼 聡美(たぬま さとみ)
学生時代は航空機、サメの研究と分野横断的に学び、総合商社へ入社。その後、fintechスタートアップに参画し、同社を買収したLINE Pay株式会社では事業戦略・マーケティング施策実行の面から急進的なサービスグロースに貢献。ベースフード株式会社ではだれもが健康になれる社会インフラをつくるべく、食品プロダクトの研究開発を担いBASE BREAD®を発明。CPOとしてもR&Dの立ち上げなどを通じて同社の事業成長、IPOに貢献した。2024年7月よりTheoria technologiesに入社。行動変容によるリスク低減を実現するプロダクトディスカバリーに取り組んでいる。
好きなドーナツはミスドのココナツチョコレート。
ごあいさつ
こんにちは!2024年7月に入社しましたプロダクトマネージャー(PdM)の田沼です。認知症の有症率を1/2にすべく、行動変容によるリスク低減を目指す「そなえる」領域を担当しています。
休日は陶芸で様々な壺をつくっています。入社前に1か月ほど備前陶芸センターで研修をうけていたご縁で、先日は窯焚きワーケーションにいきました。
6月には徳島県海部町でサーフィンを習ってきたのでまた波乗りしに行きたいです。
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小さい頃から海や魚が好きで、大学・大学院ではサメとエイについて流体力学的な手法でその生態を考察する融合領域的な研究をしていました。サンプル採集で乗せて頂いた船で漁師さんとお話する中、漁業の課題についてリアルな声に触れる機会がありました。また、学生時代から周りにスタートアップで働いていたり、シリコンバレーを目指す人や、社会的インパクトを目指した起業をする人がいた環境だったこともあり、ぼんやりとですが社会課題の解決をビジネスで加速的に行うこと、新しい社会インフラや文化・価値観をつくる仕事をしたいと考えていました。
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最初のスタートアップ
商社で2年ほど働いた後、1年くらいニートをしていた時に、「暇なら手伝ってほしい」と友人から誘ってもらいWebPayという決済スタートアップに入りました。決済ビジネスのことはよくわからなかったけれども、いつか一緒に働きたいと思っていたメンバーが集まっていたのでジョインしました。初日に、三田の雑居ビルの一室でPCとTシャツを受け取ったときのワクワク感は、今でも覚えています。
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同世代の傑人たちから教わりました
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ボロボロになりすぎてロゴ部分だけ切り取ってあります
その後2015年にLINE Payに買収された後、WebPayを閉じることが決まり、closeの対応も最後までやらせていただきました。頼りにしてくださっていたお客さんの期待に応えられなかったこと、大切なサービスを守り切ることができなかった悔しい経験が「自分が関わるサービスは絶対に成功させる」という思いにつながっています。
その後、LINE PayではLINE全社を巻き込んだユーザー獲得施策や事業・サービス企画に携わり、怖気づくような高い数値目標&短納期(通常3ヶ月のところを4週間でやった記憶)の中でも、前向きな姿勢で取り組みつづけること(それしかできなかった)で徐々にチーム全体が魔法にかかったように加速し、プロダクトの急成長を実現し、モバイルペイメントという新たな社会インフラづくりの一端を担う経験ができました。
ベースフード
2018年、ベースフードに入りました。担当は食品開発。食品業界は未経験でしたが、自分自身がBASE PASTAのユーザーであったのと、「健康をあたりまえにする」というシンプルで本質的なvisionに強く共感し、企画だけでなく自分でもプロダクトをつくる仕事がしたいと思い決めました。
今度は池尻大橋のマンションの一室。入社してすぐに岐阜の製麺所に行ったり、オフィスで試作をしながら在庫発注(在庫管理全然うまくできなかった..)をかけたりと、広範囲にもがきながら委託先の工場や技術アドバイザー、原料メーカーのみなさんから食品科学や製造技術を教わりました。工場で商品の外箱のセットアップが出荷に間に合わないことがわかり(欠品の危機!)、当時のCFOと2人で自分たちでセットアップをしにいったこともありました。
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入った当初はパスタのみのラインナップでしたが、世界を狙っていくにあたりパンが必要だと感じていました。ただ、パンの作り方は全くわからなかったので、とりあえず渋谷のビックカメラでよさげなホームベーカリーを自腹で買い試作を始めました。
その後、予算をつけてもらい、社内外の多くの方が助けてくださりBASE BREADが誕生しました。実は、華やかな発売記者会見の裏側では、工場でうまくパンが作れないというトラブルが起き、食品開発メンバーと工場の社長さんと深夜まで解決に取り組むというできごともありました。
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たくさんのHard thingsを経て、IPOの日、多くの方の思いを込めて東証の鐘をこの手で鳴らすことができたのは一生に一度の経験でしたが、それよりも、工場の方々と目前のデッドラインに向けて熱く議論していたときや、開発中のサンプル試食で喜んでもらえたとき、ユニークなメンバーが個性と才能をフルに発揮しているのを目の当たりにしたときが自分にとって忘れられない大切な瞬間でした。未経験にもかかわらずたくさんチャレンジさせてくれた「ベースフード」には本当に感謝しています。
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Theoriaと出会ったきっかけ、入社を決めた理由
ベースフード入社から7年ほど経って、ふりかえってみると当初やりたかったことは全部できたのと、会社が成長し、正直自分がいなくても良い方向にいけそうだ!と感じ、そうであれば自分は他の社会課題に取り組みたいと思いました。
Theoriaにお声がけいただいた当初は、確かに重要なテーマであるが世の中にいくつかある大きな課題の一つくらいに認識していました。
採用プロセスの過程で取り組んだワークサンプル(テーマに沿って事業提案をするもの)でリサーチを進める中で、認知症当事者やそのご家族の感情や負担の大きさを知りました。
社会的コストの大きさががんよりも認知症のほうが大きい(有症者数はがんのほうが断然大きいにもかかわらず介護ケアが比較的長期にわたって必要になるため)ことを知り、不安や悲しみの総和が大きな病であると感じました。また、様々な社会課題がある中で、認知症領域の事業は正直うまくいくか本当にわからない&かなり大変そうな(希望が見えない)印象でしたが、だからこそやりたいと思いました。
ワークの発表会で思いの丈を話したところ、Theoriaメンバーがそれに応えるようにさまざまなお話や議論をしてくださったのが印象的でした。
今思えば、医療や製薬の経験が全くないにもかかわらず、歓迎してくださったTheoriaのradicalさが改めてすごいです。
Theoriaではどんな仕事を担当しているか
今は、認知症と診断される前に予防で備える段階である「そなえる」領域を担当しています。
この領域では認知症有症率を1/2にすることを大目標に、多くの方の生活習慣にまつわる行動変容を起こすことを狙っています。具体的な仕事としては、領域のビジョンやOKR策定、ロードマップをつくることをしつつ、新規事業開発的な動きをしながら足元のデジタルプロダクト開発プロジェクトや新技術の検証プロジェクトに携わっています。
ひとつとして自分一人でできることはないので、Theoriaの多様なバックグランドを持つメンバーとの日々のコラボレーションを楽しんでおり、ソフト・ハードスキルの両面で教わることがとても多いです。(特にデジタルPdMのハードスキルは現場で絶賛勉強中)
プロダクト開発において重要なシニアの方々との接点づくりも進めており、最近は地域コミュニティなどで70代以上の方々ともたくさんお話しています。年齢が離れているからか、行くだけでめちゃくちゃ喜んでもらえるのでとても楽しい時間です。お姉様方に人生相談をすることもあります。
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これからTheoriaでどんなことをしていきたいか
①認知症に立ち向かう姿勢を社会全体で形成していくムーブメントを起こしたい
②徹底的にインサイトに迫り、行動変容を実現し、社会課題の解決と事業成長を実現するプロダクト/事業をつくりたい
③高齢化社会におけるデジタル技術のより良い使い方をみつけたい
認知症は様々な疾患の中でも、(良い悪いは別としてフラットに)より多くの人を巻き込む性質をもっていると感じます。逆にその性質を活かして、解決の過程で多くのステークホルダーの力をお借りしたいです。
また、これは若年性認知症の当事者の方から伺った話ですが、認知機能の低下は連続的に進行していくので、多くの疾患予防や医療体験(お腹が痛くなったから薬を飲む、身体をあたためる)のように、受け身的に症状が出るのを待つのではなく、症状が出る前から状態を客観的な指標で測りにいったり、今からでもリスク低減へ行動を起こしていく必要があるとおっしゃっていました。このあたりは社会全体でのマインド醸成が必要な面がありますが、まずは認知症へ共に向き合う道具やナビゲーションとなるものをつくりつつ、自分らしく生ききる(生きる&死ぬ)にはどうあるべきかを問いかけていきたいです。
②については、最近は様々な関係性の中で行動変容を実現していくことに着目しています。具体的には親子(孫)、コミュニティ(地域、働いている会社)などです。改めて世の中(自分の家族も含め)を観察していると、認知症リスク低減や健康行動の促進はこれらの関係性の中で起きているように感じています。
パーソナルジムや多くのヘルスケアアプリはユーザーとサービス提供者の一対一の関係で行われますが、認知症というアジェンダだからこそ、人と人との関係を前提に置くことでユニーク&有効な解決方法を見いだせるかもしれません。具体的には、利用の意思決定や習慣改善、その継続のためにはユーザーとTheoriaの一対一にとどまらない視野で体験や事業(収益性)をつくっていく必要があると考えています。
③は、スマホ上のUIを使いやすくするのはもちろんですが、スマホじゃない選択肢を生み出したい。
最近は、認知機能チェックや習慣情報の入力をタブレットベースでできるようになっていますが、正直、自分が80歳になったときに使える自信がありません!加齢のあたりまえの現象として、指先のコントロールは難しくなりますし、情報量が限られるフラットな画面の中でどこを押すべきかを見つけるのは結構難易度が高いです。
また、「テスト」と称して(結果的に)できないことを思い知らされる形での現状の認知機能チェックを喜んで定期的にやる人は限られるのではないでしょうか。AIやデジタル技術をアナログとデジタルをつなぐイメージで使い、例えば、お手玉やあやとりのような馴染みのある楽しい遊びをしているときの動きで認知機能を測れたり、なつかしの黒電話でお話することで習慣情報を得てリスクチェックができるといった様な世界観もあるかもです。
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最後に
想像以上に人、環境に恵まれました。
立ち上げ真っ最中にて、できるかどうかわからない不安感ややることたくさんではありますが、百戦錬磨の経験豊富なメンバーが困ったときにはさっと手を差し伸べて力になってくれるので、なんだかんだで実現できるかもしれないと思いはじめています。
また、世のため人のために働きたいという思いの純度がとても高く一緒に仕事ができることを光栄に思います。
前人未到の社会課題ですので、これまでにない発想と行動でたくさんの発見・発明をしていく必要があります。「われこそは!」というそこのあなた!一緒に大冒険しましょう。
Theoria technologiesでは、プロダクトマネージャーや、様々な経験を持った方を積極採用しています。日本に限らず、世界的に大きな社会課題である認知症、一緒に様々な解決策を創り、社会的インパクトを創出していきましょう。