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梅林新市旧蔵の郷土玩具趣味誌『古茂里』

 少し前に拙noteでも紹介したことのある伊藤蝠堂(吉兵衛)が発行していた郷土玩具趣味誌『古茂里』の合本を購入した。川口栄三編『郷土玩具文献解題』(郷土玩具研究会、1966年)によれば、『古茂里』は以下の記事で紹介した『草紙』の前に発行されていた雑誌である。

今回の記事では、この雑誌の第1、2号の合本を紹介していきたい。

大きさ:約16.8cm×約12.1cm、和装、活版印刷
印刷:※記載なし
発行:昭和7年5月15日 ※謄写刷は昭和5年5月発行
発行者:伊藤吉兵衛 三重県富田町古川町
発行:於茂千也函蝠堂 三重県富田町古川町
印刷:清光舎印刷所 三重県富田町西町
項数:20項

表紙絵 浜島静波
口絵 板龍齋
思ひ出 有坂與太郎
まへがき 蝠堂函人

合本の表紙
表紙
奥付

 この本はもともと謄写印刷で発行されたものを後年合本として再出版したようである。「まへがき」には以下のように述べられている。

 永い間の計画でした、第一・第二の改刷が出来上がりました。謄写を活字に改めたのみです。/訂正すべき点、加筆したい箇所もございますが、筆を入れることを中止しました。唯刊行後に生まれたもの、知つたものを補足したのみです。/お詫びしなければならないのは、古茂里一・二の合本と名乗りながら、第二の記事の大半を捨去つてしまひましたことです。編輯の都合からですから、お許し願ひます。
 本号を出すに際しまして/富士乃屋草紙の板さんが得意の孔版の口絵に絶大なる努力を拂つて下さいました。又/静波・濱島先輩は合本用表紙の絵を寄せて下さいました。/有坂先生の「思ひ出」の一文は古茂里二へ贈稿頂いた一文です、/茲に厚く御禮を言上致します。

上記によれば、第二号にいくつかの文章が掲載されていたが、合本では削除されたようである。代わりに浜島静波、板龍齋が口絵を提供した。当時郷土玩具界で知られていた浜島、板が協力しているのが興味深いが、どのような記念で合本は発行されたのだろうか。削除された文章が載っている謄写印刷の雑誌を確認して合本と比較してみたいものである。

板龍齋の口絵の例

 ところで、私が入手した合本は以下の記事で紹介した福岡の郷土玩具蒐集家・梅林新市の旧蔵書である。以下に梅林の蔵書印の写真を掲載しておきたい。郷土玩具蒐集家のコレクションがまとまって所蔵されている事例はいくつかあるが、梅林の蔵書を含めたコレクションは散逸してしまったようである。

梅林新市の蔵書印

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