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澤田四郎作が発行していた『Phallus-Kultus』創刊号について

 かなり前に拙noteで澤田四郎作が発行していた雑誌『Phallus-Kultus』のことを紹介したが、当時私が入手できたのは第4輯から第15輯までで第1輯から第3輯は未見であった。その後、この雑誌を揃いで入手できたが、長い間紹介できていなかった。(ちなみに入手したのは昨年の初夏である。)今回の記事では、創刊号を紹介していきたい。なお、私が入手したのは合本であり、第1輯の奥付はなかった。

大きさ:約22.5cm×約14.9cm、謄写版印刷、和装本
印刷:不明 ※奥付なし
発行:大正13年(1924年)4月 ※奥付なしのため、編集後記の日付から推測。
発行兼著者:澤田四郎作 ※奥付なし
印刷人:不明
ページ数:79頁

私の言葉
出口米吉氏よりの書翰 出口米吉
附会的信仰
特殊道祖神の一考察
瓜哇(ジャワ)の性的神 豊嶋貞雄
日本の割禮説に就て
雑録
 リンガの塔
 妹夫形(道鏡塚) むしの夢巻より
 昔飛騨国高山乳独楽と云ふものあり
 会津の姫形おきやがり
 庚申様の迷信
魔羅神
大和の男根女陰祭
へんてこ祭
ダイカグラ石とハチマキ石 田村吉永
桃股の陰石
齊木の神
結婚に男根
ちんぽ石
五色温泉の男根
ふけふけどんどん
山口神社の祭禮
笹森の稲荷
スリコギの効験
金精とコンセイ神
油をそそぐ行事
朝鮮の性的神地下大将軍
フード造化機論抄
がまの家(編集後記)

合本
第一輯の最初のページ

 「私の言葉」が『Phallus-Kultus』の「創刊のことば」に相当するので、少し長くなってしまうが、以下に引用してみたい。

 大正十一年の夏、「陰陽石」という雑誌を創刊しようとしていたが、腸チフスをやって、とうとう十月頃まで入院し、とうとうこの計算も破れてしまった。その折、後藤捷一氏にいろいろ御教示を仰いだりいろいろお世話を蒙って、殊に出口米吉氏の書翰までもらったが、自分の病気と、それから、或る人のために返るべきところの金が返らなかったために遂に流産、その后、淋しく庚申塚の畔橋亭に閉じこもってしまった。こんな次第で後藤氏や出口氏に申訳がなく今日まで御手紙を差るさえも臆病になってしまった。其他の人々にも、この言葉を申し上げておきます。
 こんど、こんな小冊子を作って己知諸兄に頒ることにした。出来ることなら二月目毎に出して行きたいと思っている。読み易い様に活字で印刷したいとは思ったが、そんな大きな金も遊んでいないし、それに前の私の小著を印刷した活版屋がお金ばかり取って約束通りのものを作ってくらなかったのが癪にさわって、とうとう謄写版刷りにした。これも金のない一つの悲哀かも知れぬ。
 外国の性崇拝の翻譯をも載せるつもりでいたが思い付が急で間に合わず、大抵十一年頃の書いた原稿でうづめた。(中略)
 それから自分の仕事として、性方面の研究者に便利な索引書を作ろうと手をつけかけている。これさえあれば、どの本の何頁にどんな性に関する記事があるかということがすぐ分る様にするので、自今完成しているのは、甲子夜話百巻、続百巻、耳嚢、東西遊記であるが、順次各種の尽物に及ぼしてゆくつもりである。(後略)(筆者により現代仮名遣いにあらためた。)

 元々雑誌を発行しようとしていたが、体調や資金面で問題があり断念して、約2年後に『Phallus-Kultus』の発行に至ったという。上記の「前の小著」は『日本生殖器崇拜概論』(大正11年)であると思われる。この本の印刷で苦い経験があったので、謄写印刷を選択したようだ。

 上記で引用した拙noteの記事でも触れているが、記事のほどんどが澤田の文章である。内容は、性に関する民俗、遺物の報告で澤田の出身である奈良県の事例も多い。上記に引用した「私の言葉」では、「性方面の研究者に便利な索引書を作ろうと手をつけかけている」と述べられているが、その通り性に関する民俗の事例集になっている。合本には、以下の写真のように各号の総目次が付いているが、上記で紹介した目次よりも細かくなっている。これは索引として活用できることを意図しているのだろう。

合本に付いている総目次

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